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2023.6.23
本業は外交官?多才な画家ルーベンスの人生と作品の見どころ紹介!
ピーテル・パウル・ルーベンス(1577-1640年)はバロック期のフランドル画家です。アントワープにおける宗教画に代表されるように芸術家としても成功を収めたルーベンスですが、実は画家以外にも外交官や公証人の顔を持っていました。
『The Raising of the Cross』, Public domain, via Wikimedia Commons
欧州を股にかけて活躍したルーベンスの人生は、ほかの芸術家には類をみない特異さがあります。この記事では、ルーベンスの人生や作品、見どころについて詳しく解説します。
本業は外交官?ルーベンスの特異な人生とは
ルーベンスの自画像, Public domain, via Wikimedia Commons
ルーベンスは画家として広く知られていますが、本業は実業家や外交官でした。アントワープには大規模な工房を経営しており、アート収集家としても活用しています。外交官として欧州内を飛び回っており、7カ国語を流暢に話したと言われます。
ルーベンスといえばベルギー国内だけでなく、スペインやイタリアでも活躍したことで知られています。外交官の仕事から外国に行く機会が多く、実業家や公証人の肩書を駆使して、あらゆる土地でコネクションを作ることに長けていました。
実際ルーベンスは7年に及ぶイタリア滞在の間、さまざまな街の有力貴族とのコネクションの構築に成功しています。イタリアではカラヴァッジョの作品に大きく影響を受け、複製画を制作したこともありました。
ルーベンスは公証人としてのキャリアを活かし、芸術の依頼を受ける契約書にもこだわっていました。完成した作品を受け取らない場合の対処 、どの段階で受け取ったと認めるか、作り直しの場合の元の作品の処遇など、あらゆるケースで自分が不利にならない契約書が記録に残っています。
バロックの巨匠ルーベンスの作品の特徴
『花輪の中の聖母マリア(Madonna in Floral Wreath)』,Public domain, via Wikimedia Commons
ルーベンスの作品は、伝統的に繊細で精密な筆致が好まれた北方のなかでは、力強くはっきりとした筆致が特徴です。ルーベンスは外交官や実業家の仕事を抱えていたにもかかわらず、かなり多くの作品を残しています。
ルーベンスが活躍した16世紀には、すでにカンバス画が一般的になっていたものの、ルーベンスはパネルに絵を描き続けました。祭壇画のように長期的な使用が見込まれる作品の場合、石に描くこともありました。カンバスやパネスは経年により支持体が崩れてしまい、絵がダメージを負うリスクがあるためです。
作品は宗教や神話にまつわるものが多いですが、肖像画も多く残しています。貴族とのコネクションを持っていたルーベンスの作品は、現在でもベルギー、イタリア、スペインなど広くヨーロッパに存在しています。
ルーベンス作品の見どころ
『レウキッポスの娘たちの略奪』, Public domain, via Wikimedia Commons
ルーベンス作品の見どころは、体温が感じられるほどリアルな女性像です。ルーベンスの描く女性はふくよかであたたかみがあります。
神話をテーマとした作品の多くには優美な女性が描かれ、ルーベンスの作風を特徴づける要素の1つとなっています。ダイナミックな身体の動きは、古代の彫刻作品を彷彿とさせるような物量感があります。
神話テーマの作品では女性の身体全体を大胆に描いており、輝く肌となめらかな髪がルーベンス作品の見どころとなっています。ルーベンスは優れた肖像画家としても知られ、自然な表情とリアルなドレスの質感などが特徴です。
ルーベンスには芸術家以外にも多くの顔があり、多忙な中でもたくさんの作品を残してきました。作品鑑賞の際は、ぜひ彼の多才なバックグラウンドについても考えてみてくださいね。以上、ルーベンスの人生、作品、見どころについてでした!

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イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
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