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2023.7.24
オランダのポスト印象派画家ゴッホの人生とは?特徴と見どころ解説
オランダが誇るポスト印象派の巨匠ゴッホは、大胆な色遣いと独特な筆致で知られる画家です。日本の美術に親しんだことでも知られ、ゴッホの作品には多くの日本からの影響が見られます。
ゴッホ『星月夜』, Public domain, via Wikimedia Commons
ゴッホは自分の耳を切りおとした逸話が有名ですが、自由で激しい性格から激動の人生を送った人物でした。この記事では、ゴッホの人生、作品の特徴や見どころについてわかりやすく解説します。
オランダの巨匠ゴッホの激動の人生とは?
ゴッホ自画像, Public domain, via Wikimedia Commons
フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890年)は、オランダ南部の牧師の家庭に生まれました。ゴッホは幼い頃から自由な性格で、勝手に遠出したり学校をすぐに辞めたりして両親の手を焼かせたと言われます。
ゴッホは1869年から1876年までの間、オランダ・ハーグの画商グーピル商会の店員として働きます。のちにロンドン支店、パリ本店に転勤しますが、商売のやり方に疑問を抱いていたゴッホは1876年に解雇されてしまいました。
グーピル商会で働く間ゴッホは、牧師であった父の影響もあり、キリスト教への関心を深めます。グーピル商会を解雇されてイギリスに再度渡航した際には、教師としての仕事を辞めて貧しい人を助ける宗教活動に従事しました。その後オランダやベルギーの都市でさまざまな活動をしましたが、結果的に1880年からブリュッセルで本格的に美術の勉強を始めました。
1886年からはパリにうつり、ゴッホはスーラやシニャックなどの新印象派の絵画を目にしました。パリにいた頃ゴッホは、冬以外は屋外の畑や公園の絵を描き、寒くなると人物画を多く残しました。パリ滞在を通して印象派や新印象派の画風に影響を受けたゴッホは、明るい色彩の絵を多く残すようになります。
日本画の影響が作品に強く出始めたのもこの頃で、渓斎英泉の『雲龍打掛の花魁』、歌川広重の『名所江戸百景』「亀戸梅屋舗」と「大はし あたけの夕立」を模写しています。
ゴッホ『ジャポネズリー:おいらん』, Public domain, via Wikimedia Commons
1888年からはゴーギャンとの共同生活の準備を進め、彼の到着までに多くの作品を残そうと精力的に制作活動にあたりました。この時期には、『ひまわり』4作、『夜のカフェ』、『黄色い家』、『夜のカフェテラス』、『アルルの寝室』などの作品を立てつづけに残しました。
しかし数ヶ月のうちにゴッホとの共同生活に疲れたゴーギャンが家を去ろうとすると、ゴッホは自身の耳を剃刀で切り落とす事件が起こります。ゴッホは切り落とした耳を持って娼館に向かい、女性に手渡して「僕を忘れないでいてくれるね」と言ったと言ったそうです。
ゴッホ作品の特徴は「色彩と筆致」
ゴッホ『カラスのいる麦畑』, Public domain, via Wikimedia Commons
ゴッホの作品の特徴は、大胆な色彩と細かい筆致です。ゴッホ作品の色彩は、思いがけない色が使われていることが多く、作品の自由で生き生きした印象を作っています。
たとえば、いくつかの自画像の中には顔の一部に緑や赤など原色的な色を用いており、観る人に大きなインパクトを与えます。平凡で落ち着いた色遣いはゴッホの作品にはなく、常に観る人を驚かせる色の組み合わせが特徴です。
筆致は細かいストロークの繰り返しになっており、近づきすぎると何が描かれているかわからないほど大胆です。ゴッホの世界観を構築している筆致は自由でありながらよく計算されており、作品を観た人が情景の空気を感じられる作りになっています。
ゴッホ作品の見どころは「絵具の凹凸」
ゴッホ『アイリス』, Public domain, via Wikimedia Commons
ゴッホの筆致は、つややかな伝統的絵画からは遠く、絵具の質感をそのままカンヴァスに残す特徴があります。そのため間近で見ると絵具の質感をそのまま感じることができます。力強い作品の色彩は、色の選択だけでなく厚く塗られた絵具の質感によって作られているのです。
海辺の情景を描いた作品では、絵具の中に浜辺の砂が混入しており、このことからゴッホが実際に浜辺で制作を行っていたことがわかります。伝統的な絵画では薄く絵具を重ねてツヤを出していたのに対し、ゴッホはべったりと絵具を載せ、立体的とさえ思えるほどの凹凸感を出しています。
ゴッホ『星月夜』の拡大, Public domain, via Wikimedia Commons
ゴッホの作品は、離れた地点から見るのと近くから見るのとでは全く印象が異なります。作品の魅力を存分に味わうためにも、まずは遠くから全体を、続いて近づいて絵具の質感を観察してみてくださいね。
以上、ゴッホの人生、作品の特徴、見どころについてでした。
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イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
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