STUDY
2024.4.5
パンテオン完全ガイド:ローマ最古の神殿の歴史・建築・見どころを徹底解説
永遠の都ローマには、古代に建設された遺跡が多く残っています。なかでもパンテオンは、ローマの街のシンボルとしてよく知られる例の1つです。
目次
パンテオン, ローマPublic domain, via Wikimedia Commons
パンテオンはもともと紀元前1世紀に建設された神殿で、現在みられる姿は2世紀に再建された状態です。この記事では、1900年のときを超えたパンテオンの歴史と建築様式について現地の大学院生が解説します!
紀元前1世紀に最初に建てられた神殿パンテオン
パンテオン, ローマPublic domain, via Wikimedia Commons
パンテオンの起源と歴史
パンテオンはローマのすべての神に捧げられた神殿であり、名前の「パンテオン」は古代ギリシャ語で「すべての神にまつわる」の意味があります。ギリシャ・アテネのパルテノン神殿と混同されることがありますが、全く異なる建造物です。
パンテオンは紀元前25年に建設された神殿が起源です。古代ローマ初代皇帝のアウグストゥスの側近により建設されましたが、のちに火事で焼失してしまいました。紀元後2世紀(120年頃)にローマ五賢帝の1人ハドリアヌス帝によりパンテオンが再建され、現在残っている建築はこの時代のものです。
1900年以上もこの地に残り続けていると考えると、古代ローマの建築技術がどれほど偉大だったか想像できますね。パンテオンは現在でも内部に入ることができるほど良い保存状態で残っており、いつも観光客でにぎわう人気のスポットです。
パンテオンの建築構造
パンテオンの建築は大きく分けて2つのパートがあります。1つ目は入り口付近の三角屋根の部分でおおわれたポルティコ(柱列で支えられた玄関までの空間)と呼ばれるスペースです。パンテオンのポルティコは壁で覆われていないため、開放的な空間となっています。
2つ目はドームに覆われた部分で、建物の壁は全体的に円形で構成されています。ドームは現在でも世界最大級のものの1つであり、ローマ中心地では高い場所にのぼるとパンテオンの平らなドームを見ることができます。
一般的に入り口のポルティコ部分は「ギリシャ的」そしてドームのある建築部分は「ローマ的」と言われています。古代の2つの重要な文化が混ざりあい 、圧倒的な存在感がある独特な建築が生まれたのです。
なおドームの頂点には穴が開いており空を見ることができます。しばしば「雨をよける仕組みがある」と説明されることがありますが、これは誤りで雨が降ると雨粒が内部にぽつぽつ落ちてきます。
7世紀からパンテオンはキリスト教の教会に
パンテオン, ローマPublic domain, via Wikimedia Commons
古代ローマのすべての神をまつるために建設されたパンテオンですが、実は現在はキリスト教の教会としての役割があります。紀元後608-609年に聖母マリア・殉教者聖堂(Basilica Santa Maria ad Martyres)に転用されたためです。
実はローマにおいては、古代の神殿をキリスト教の教会のために再利用するのは珍しいことはありません。むしろ、教会への転用は古代神殿が現代まで生き残るためのほとんど唯一の方法でした。
古代ローマで信仰されていた神々は、一神教であるキリスト教にとっては異教であり、保持すべきではない存在でした。そのため多くの古代ローマ時代の神殿は破壊され、現在では残っていません。いくつかの神殿のみが教会として使われていたおかげで破壊を免れ、現在もローマの街の一部となっています。
パンテオンは外観からはそこまで教会らしさを感じませんが、内部に入ると十字架や聖母子像が設置されており、キリスト教の要素を感じられます。外観に比べると大理石の華やかな色使いで装飾されており、異なる雰囲気が楽しめます。
教会になってから長い歴史のなかで2つの鐘楼が追加されるなどの変更はあったものの(「ロバの耳」と呼ばれ非常に評判がわるかった)、原則的には古代の建築が大きく変更されることなく現在まで残りました。
パンテオンの内部にはたくさんの著名人の墓が
ラファエロの墓, パンテオン, ローマPublic domain, via Wikimedia Commons
パンテオンのなかには、イタリアの歴史を飾った偉人の墓があります。もっとも有名なのは、ルネッサンスの画家ラファエロの墓です。ラファエロは古代の美術から得たインスピレーションを自分の絵画作品や建築作品に反映させたことでよく知られています。
とくにパンテオンはラファエロにとって古代の偉大な建築の1つだったようで、彼が設計を担当した礼拝堂の一部にはパンテオンとほとんど同じ構造が採用されたほどです。ラファエロの墓は入り口から向かって左奥に位置し、ニッチ(壁にあるくぼみ)に設置された聖母子像が目印になっています。
ラファエロのパンテオンの研究Public domain, via Wikimedia Commons
ラファエロのほかにも、19世紀のイタリア統一で活躍したヴィットリオ・エマヌエーレ2世の墓があります。内部を見学する際は、圧巻の建築だけでなくそれぞれのニッチに注目すると面白い発見があるかもしれません。
パンテオンのアクセス・基本情報
住所 | Piazza della Rotonda, 00186 Roma RM, イタリア GoogleMapで見る |
開館時間 | 9:00~19:00 (最終入場 18:45) |
閉館日 | 1月1日、8月15日、12月25日 |
入場料 | 大人:5ユーロ (2023年7月より有料化) |
※情報は変更となる場合がございます。最新の情報は公式サイトでご確認ください。
ローマ市内の中心地で高い建物に囲われているため、パンテオンはすぐ近くに来るまで姿を見ることができず、突然街中に古代遺跡が現れる感覚はローマ散策の醍醐味と言えるでしょう。以上、ローマのパンテオンの解説でした!
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イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
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