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2024.5.6
ローマで古代芸術を感じるならココ!アート好き必見スポット8選
永遠の都、ローマ。いわずとしれた古代ローマ帝国の首都ローマには、古代から受け継がれてきた遺跡や芸術が今でも数多く残っています。
そんなローマに来たからには、特別な芸術体験がしたい!と考えている方も多いはず。この記事ではローマで美術史を専攻する筆者が、古代芸術を鑑賞できるスポット8選を紹介します!
目次
ローマの古代芸術おすすめスポット①:フォロ・ロマーノ
Foro Romano Musei Capitolini Roma, Public domain, via Wikimedia Commons
ローマでもっとも有名な遺跡といえば、フォロ・ロマーノでしょう。遺跡群のなかの多くの建造物は現在ほとんど残っていない状態ですが、遺跡内部に残る2つの凱旋門は保存状態がよく必見です。
1つ目の凱旋門はコロッセオ側の入り口すぐ近くにある「ティトゥスの凱旋門」です。ティトゥスの凱旋門はエルサレムにおけるユダヤ戦争の功績を称えるために建てられました。
中世には修道院の一部に取り込まれていたため、破壊を免れて現在の状態を維持しています。19世紀には大規模な修復の対象になり、西洋美術史上はじめて文献学史料をを参考にした修復が実施された例でもあります。
2つ目の凱旋門は「セプティミウス・セベルスの凱旋門」です。フォロ・ロマーノのコロッセオから一番遠いエリアに位置します。3世紀初頭に異民族への勝利を記念して建設されました。
皇帝がおこなった軍事行動が正面と鳥俯瞰で描かれている点が特徴で、独特の遠近感が面白い作品です。鳥俯瞰とは、鳥が空から地上を眺めているかのような情報からの視点を指します。
ローマの古代芸術おすすめスポット②:フォーリ・インペリアーリ(トラヤヌス帝の記念柱)
Rome, Chiesa del Santissimo Nome di Maria al Foro Traiano 001, Public domain, via Wikimedia Commons
フォロ・ロマーノほどの知名度はないものの、同じくらい重要な遺跡が残っているのがフォーリ・インペリアーリ(Fori Imperiali)です。フォロ・ロマーノのすぐ隣に位置し、入場料を払わずに公道からじっくり見られるうれしい遺跡です。
フォロ・ロマーノと同様、大半は長い歴史のなかで大きく破壊されてしまい、現在は断片的にしか建造物が確認できません。そんなフォーリ・インペリアーリで注目したいのが、トラヤヌス帝の記念柱です。
Rome, Close-Up at Night, Public domain, via Wikimedia Commons
トラヤヌス帝の記念柱はトラヤヌス帝のダキア(現在のルーマニア)征服を称えて建設されました。戦地での出来事を巻物のように物語式に描き、連続したストーリーを読むことができます。夜にはライトアップされて厳かな雰囲気を楽しめるので、ぜひ昼夜両方楽しみたい芸術作品です。
ローマの古代芸術おすすめスポット③:ローマ国立博物館・マッシモ宮
Wall painting - garden (viridarium) - Rome (villa of Livia at Via Flaminia) - Roma MNR PMaT, Public domain, via Wikimedia Commons
年中観光客でごった返すローマですが、落ち着いて芸術鑑賞したい方に全力でおすすめしたいのがローマ国立博物館・マッシモ宮です。古代ローマ時代の重要な彫刻、フレスコ画、モザイク画など、ほかでは見られない充実したコレクションがあります。
ローマ最大の鉄道駅であるテルミニ駅から徒歩1分の好立地にありながら、なぜかいつもガラガラな美術館です。しかし、所蔵作品は超一級。3階建ての建物のなかには、ぎっしりを古代ローマを感じるための作品が肩を並べています。古代芸術に関心があるアート好きの方には確実に訪れてほしい、隠れた名美術館です!
ローマの古代芸術おすすめスポット④:ディオクレティアヌス浴場
Terme di Diocleziano - panoramio, Public domain, via Wikimedia Commons
テルミニ駅の正面、マッシモ宮からさらに徒歩1分のところには、ディオクレティアヌス浴場があります。こちらも好立地にありながら、ただの茶色い建物?と思われて素通りされることが多い場所です。
古代ローマの浴場と言えばカラカラ浴場(こちらもローマにあります)が有名ですが、ディオクレティアヌス浴場も劣らぬ規模を誇った人気の浴場でした。浴場建築は古代ローマ時代の圧倒的なインフラを実感できる建造物の1つであり、高い天井に薄い壁、ぜひ一度は体験してほしい不思議な解放感があります。
ディオクレティアヌス浴場は美術館を兼ねており、古代ローマから初期キリスト教にまつわる石棺やレリーフなどのさまざまなコレクションを見ることができます。さらに、ミケランジェロが設計した回廊が併設されており、浴場建築以外にも芸術的な見どころの多いスポットです!
ローマの古代芸術おすすめスポット⑤:アラ・パキス
Roma, Ara Pacis - panoramio, Public domain, via Wikimedia Commons
アラ・パキスはあまり知られていないローマの重要な古代モニュメントの1つで、名前は歴史の授業で聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
アラ・パキスとは、紀元前1世紀に帝政ローマを始めた初代皇帝アウグストゥス時代の芸術です。アウグストゥス時代のもっともすぐれた芸術作品として知られ、現在ではテヴェレ川沿いの室内美術館で一般公開されています。
アラ・パキスはもともと現在の保存場所から数キロ離れた地中に埋まっていましたが、イタリア・ファシズム時代の都市開発の際に偶然発見され、慎重に現在の場所に移動されました。
元老院がスペイン遠征から戻った皇帝アウグストゥスを称えて贈ったもので、「アウグストゥスの遠征のおかげで平和がもたらされた」というメッセージが強調されています。
保存されている美術館は全体がガラス張りであるため、外からでも十分全体像をつかむことができます。しかし、古代芸術に関心があるならばぜひ中に入ってじっくり観察するのがおすすめです!
ローマの古代芸術おすすめスポット⑥:パンテオン
Pantheon Rome, Public domain, via Wikimedia Commons
パンテオンはローマのシンボルの1つとして毎日多くの観光客を集めている人気スポットです。2世紀に建設されたパンテオンは元来、「すべての神のための」神殿という意味があります。
一神教であるキリスト教の受容により、全知全能の唯一神以外は認めないという考えのもと、古代ローマ時代の多く神殿は中世以降に破壊されてしまいました。そんななかパンテオンが運良く生き延びることができたのは、キリスト教の教会として「再利用」されたためです。現在ではパンテオンは教会(Basilica collegiata di Santa Maria ad Martyres)として利用されています。
入り口部分は古代ギリシャの建築要素(ポルティコや破風)、後方の建物部分は古代ローマの建築要素(ドーム屋根の円形構造)で構成された興味深い構造が特徴です。想像よりもかなり大きいので、あまりの堂々とした姿に近くを通るたびいつも立ち止まってしまいます。
ローマの古代芸術おすすめスポット⑦:コロッセオ
Rom Colosseum, Public domain, via Wikimedia Commons
コロッセオもローマを代表するシンボルの1つでしょう。円形闘技場として建てられた建造物で、古代ローマから継承された最も偉大な建築遺産といっても過言ではありません。
コロッセオは長径187.5m、短径156.5mの楕円形をしているため、立ち位置によって大きさが違って見えます。内部に動物や剣闘士を昇降するためのエレベーターや、最上部分に観客を守るための日よけが設置されていました(現在はありません)。古代芸術や歴史に関心がある人なら、必ず訪れたい場所です。
ローマの古代美術おすすめスポット⑧:コンスタンティヌス帝の凱旋門
Rome - Arch of Constantine (Rome), Public domain, via Wikimedia Commons
コンスタンティヌス帝の凱旋門は、コロッセオをフォロ・ロマーノの間に位置するモニュメントです。315年にコンスタンティヌス帝の単独統治を称えて建設されました。
コンスタンティヌス帝の凱旋門の最大の特徴は、先代の偉大な皇帝が残した芸術を「再利用」している点です。実際、装飾部分の半分ほどはマルクス・アウレリウス・アントニヌス帝やトラヤヌス帝、ハドリアヌス帝のモニュメントから持ち去ったものを張り付けて作られています。
Constantine arch datation , Public domain, via Wikimedia Commons
そのおかげで(?)コンスタンティヌス帝の凱旋門は、2世紀の芸術スタイルと4世紀の芸術スタイルが混在する興味深い唯一無二のモニュメントになりました。たとえば、マルクス帝時代の縦長長方形のレリーフは写実主義的な奥行きがあるのに対し、コンスタンティヌス帝時代の装飾は平面的で象徴的な特徴があります。
ローマは噛めば噛むほど味がする魅力の尽きない場所です。アート好きの方はぜひこの記事で紹介した古代芸術のおすすめスポットを訪れてみてくださいね!
▼コロッセオについて詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
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▼パンテオンについて詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
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イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
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