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2025.2.17
日本画をもっと楽しく!日本美術の絵画の種類を一挙解説。
日本美術の中でも多くの割合を占める、絵画。日本画をはじめ、多種多様なジャンルと技法、そして表現が存在します。それぞれの時代背景や文化、そして画家たちの想いが織りなす絵画は変化に富み、私たちを魅了してやみません。
本記事では、伝統的な日本画を中心に、日本美術の絵画の種類をわかりやすく解説します。各ジャンルの特徴や代表的な作品、そして注目すべきポイントを知れば、鑑賞がもっと楽しくなるはずです。
目次
仙台城本丸大広間障壁画扇面図, Public domain, via Wikimedia Commons.
日本美術の絵画の主な分類
まずは、大きな括りとして日本美術における絵画の分類をご紹介します。
日本美術の絵画、というと伝統的な日本画を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、近現代には西洋絵画の手法を取り入れた新しい表現が次々と生まれ、日本絵画をさらに発展させたのです。
日本美術の分類①:日本画
Shoen Uemura's "Composition of a Poem" (1942) Yamanate Museum of Art, Public domain, via Wikimedia Commons.
日本画とは、伝統的な日本の絵画技法や材料を用いて描かれた絵画の総称です。岩絵具や胡粉といった天然の鉱物性顔料を用い、膠(にかわ)を接着剤として和紙や絹などの素材に描かれます。豊かな色彩や繊細な筆致が特徴で、多様な題材が描かれてきました。
日本美術の分類②:近代日本画
横山大観『夜桜(花)』, Public domain, via Wikimedia Commons.
明治時代以降、西洋画の技法が流入する中で、日本画も大きな変革期を迎えます。伝統的な技法を継承しつつも、西洋画の写実性や空間表現を取り入れた新しい日本画が誕生しました。
近代日本画は、伝統と革新が融合した独自の美意識を追求し、現代の日本画へとつながる礎を築いたのです。
日本美術の分類③:近代絵画
童女図/麗子立像, Public domain, via Wikimedia Commons.
油彩画の技法を用いた近代絵画も、日本が誇る絵画ジャンルの一つです。印象派やロマン主義など西洋の美術運動の影響を受けながら、日本の風土や文化を反映した独自の油彩画が描かれるようになりました。肖像画や風景画など多様なジャンルの作品が生まれ、日本の近代美術を彩っています。
日本美術の絵画の種類
日本の絵画は、さまざまなものを媒体として描かれました。寺院の壁画や掛け軸、城郭などの日本建築の襖や屏風、絵巻と、その種類は多岐にわたります。
日本美術絵画の種類①:仏教絵画・仏画
Gathering of four Buddhas, Public domain, via Wikimedia Commons.
仏教絵画(仏画)は、仏教の教えや世界観を描いた絵画です。如来や菩薩、明王といった尊像や、仏教説話を描いたものが多く、寺院の壁画や掛け軸として描かれてきました。飛鳥時代に仏教とともに日本に伝来し、各時代の仏教の流行とともに多様な表現を生み出してきました。
日本美術絵画の種類②:襖絵・屏風絵(障壁画)
『近江名所図』右隻、狩野派、室町時代(16世紀後半)。滋賀県立近代美術館所蔵。, Public domain, via Wikimedia Commons.
襖絵や屏風絵は、主に室町時代から安土桃山時代、江戸時代にかけて発展した、襖や屏風といった建具に描かれた絵画です。障壁画とも呼ばれ、部屋の仕切りや装飾として用いられました。狩野派や長谷川派など各時代の流派が競って制作し、後には琳派と呼ばれる芸術流派が始まり、それぞれの様式美を確立しました。
日本美術絵画の種類③:絵巻物
五島美術館蔵。『源氏物語』第40帖「御法」。紙本著色/一面 平安時代後期・12世紀, Public domain, via Wikimedia Commons.
絵巻物は、物語や歴史、説話などを絵と文章を交互に配して、巻物状に仕立てたものです。平安時代に「源氏物語絵巻」や「信貴山縁起絵巻」といった名作が生まれ、鎌倉時代には「平治物語絵巻」などの合戦絵巻が描かれました。
日本美術の絵画のジャンル
日本美術の絵画は、技法をもとにジャンル分けができます。どのような画材を使って、どのような方法で描いたかを見てみましょう。
日本美術の絵画ジャンル①:やまと絵
Kasuga Gongen Genki E, Public domain, via Wikimedia Commons.
やまと絵は、平安時代に唐絵と呼ばれる中国風の絵画から発展した、日本独自の絵画様式です。日本の風景や風俗、物語などを題材とし、大和絵巻や屏風絵として描かれました。色彩豊かで繊細な表現が特徴です。
日本美術の絵画ジャンル②:水墨画
松林図・右隻, Public domain, via Wikimedia Commons.
水墨画は、墨の濃淡だけで描く絵画です。中国から伝来し、禅宗の影響を受けて発展しました。自然や風景を題材としたものが多く、墨の濃淡や筆致によって、奥行きや立体感を表現します。
日本美術の絵画ジャンル③:浮世絵(錦絵)
「河崎靏見川蒸氣車之図」(川崎宿鶴見川蒸気車之図)。著者は廣重(三世 歌川広重), Public domain, via Wikimedia Commons.
浮世絵は江戸時代に庶民の間で流行した絵画で、錦絵とも呼ばれるものです。木版で摺った版画と直筆で描いた肉筆画があり、風景画・役者絵・美人画・風俗画など、当時の世相や文化を描きました。また、葛飾北斎の「北斎漫画」のようなユーモアのある作品も見られます。
日本美術の絵画の主な題材
最後に、日本美術の絵画の主な題材についてご紹介します。近現代には伝統的な画題にとらわれない自由な表現が生まれますが、ここでは中国に起源をもつ、東洋絵画の三大ジャンルを取り上げます。
日本美術の題材①:人物画
「権十郎」(初代河原崎権十郎), Public domain, via Wikimedia Commons.
人物画は、人物の姿を描いた絵画です。歴史上の人物や貴族・武士・庶民など、さまざまな身分の人々が描かれてきました。肖像画のように特定の人物を忠実に描くものから、物語や伝説に登場する人物を描いたものまで、題材は多岐にわたります。
日本美術の題材②:山水画
雪舟等楊 - Landscape , Public domain, via Wikimedia Commons.
山水画は、山や川などの自然風景を描いた絵画です。
ルーツは中国にあり、やがて日本の風土や美意識を反映した独自の山水画が発展しました。墨の濃淡や筆致によって、雄大な自然や深遠な空間を表現します。
文人画や南画といった様式も生まれ、文人たちの思想や感情が込められた作品も多く描かれました。
日本美術の題材③:花鳥画
Benkei crab and plum blossom, Public domain, via Wikimedia Commons.
花鳥画は、花や鳥を題材とした絵画です。四季折々の花や鳥の姿を美しく描き出し、自然の生命力や美しさを表現します。
季節の移ろいや花鳥風月を表現した作品には、日本人の美意識が感じられます。
日本美術の絵画の種類はこんなに多い!
日本の絵画は、長く続く日本美術史の流れの中で、さまざまな方面へ発展していきました。全体を捉えてみると、種類ごとの面白さや魅力がさらに増して見えるかもしれません。
絵画の多彩な世界を知り、日本美術の奥深さに触れてみましょう。
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文筆家・アートライター。1994年神奈川生まれ。会社員を経て、2021年よりフリーライターとして独立。アートと日本伝統文化を専門としつつ、現代美術やカルチャーなど幅広いジャンルで執筆している。日本伝統文化検定2級。SNSでも情報を発信する他、Podcastでは伝統芸能にまつわるトークを配信中。
文筆家・アートライター。1994年神奈川生まれ。会社員を経て、2021年よりフリーライターとして独立。アートと日本伝統文化を専門としつつ、現代美術やカルチャーなど幅広いジャンルで執筆している。日本伝統文化検定2級。SNSでも情報を発信する他、Podcastでは伝統芸能にまつわるトークを配信中。
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