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2025.3.19
国宝と重要文化財の違いとは?意外と知らない豆知識
目次
日本の国宝, National Treasures of Japan (examples) 2, Public domain, via Wikimedia Commons.
美術館や博物館で、素晴らしい絵画や工芸品などに見とれた経験はありませんか? それらの作品の中には、キャプションに「国宝」や「重要文化財」と書かれているものもあります。その違いが気になったことはないでしょうか。
この記事では、国宝と重要文化財の違いや、さらには重要美術品などの指定についてわかりやすく解説します。目の前にある作品がどのような文化財なのかを知ると、ミュージアム巡りがもっと面白くなるはずです!
重要文化財?国宝?ミュージアムでよく見る有形文化財の種類
舟橋蒔絵硯箱, Writing Box with Pontoon Bridge 2007-06-11, Public domain, via Wikimedia Commons.
そもそも、文化財にはさまざまな種類があります。美術館や博物館で主に見る美術工芸品の多くは有形文化財といわれるもので、その中から特に重要なものが重要文化財に、さらには国宝に指定されているのです。
なお、そのどちらに当てはまらなくても、特に保存と活用が必要なものは登録有形文化財と登録されています。
■文化庁
引用元:文化財の種類,指定・選定・登録
重要文化財
有形文化財のうち特に重要なものとして、文化財保護法に基づいて文部科学大臣が指定した、国宝に準ずる価値を持つ有形文化財です。
そのジャンルは多岐にわたり、建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書、考古資料、歴史資料などが対象となります。
国宝
国宝は、重要文化財の中からさらに厳選されます。つまり国宝は、文化財保護法に基づいて、類まれな「国民の宝」であると文部科学大臣が指定したもの。
日本の有形文化財の中で最も高い価値を持つとされ、歴史的・芸術的に特に優れたものが選ばれます。
重要美術品
文化財保護法の制定以前の「重要美術品等ノ保存ニ関スル法律」に基づき認定された美術品です。現在では、文化財保護法によって重要美術品の指定は行われていません。
もともとは海外への流出を防ぐ目的で認定された重要な美術品を指し、重要文化財に準ずる価値を持つものとして扱われます。また、主に「指定」と表現する重要文化財とは異なり「認定」という言葉が使われることが特徴です。
国が定めたその他の文化財
香川県丸亀市にある丸亀城。大手二の門付近より望む天守(北面)。 , Marugame Castle, Tenshu 002, Public domain, via Wikimedia Commons.
ミュージアムで作品や資料でよく見る有形文化財の他にも、国内にはさまざまな文化財があります。文化庁の資料を参考に、その一部を抜粋して簡単にまとめました。
無形文化財 | 演劇、音楽、工芸技術など形のないもの 重要無形文化財の保持者は人間国宝と呼ばれる |
民俗文化財 | 衣服、器具、家屋など暮らしに関わる有形のもの 生業や信仰、風俗慣習や芸能など暮らしに関わる無形のもの |
記念物 | 貝塚や古墳などの遺跡 庭園や山岳などの景勝地 動物や植物などの自然物 |
文化的景観 | 里山や用水路などの景色 |
伝統的建造物群 | 宿場町、城下町、農漁村など |
■文化庁
引用元:文化財の体系図
重要文化財はかつて国宝だった?「旧国宝」とは
実は、重要文化財の中には旧国宝として指定された経歴のあるものがあります。
重要文化財が旧国宝から重要文化財になったのは、1950年(昭和25年)に現在の文化財保護法が制定されてからです。文化財保護法制定以前の「国宝」は、現在の制度では「重要文化財」に相当するものも含まれていました。
この法律の制定以前は「国宝保存法」(1929年(昭和4年)制定)が存在し、国宝保存法では、国宝と重要文化財の区別はありませんでした。しかし、文化財保護法の制定により、従来の国宝は、重要なものは「重要文化財」として指定されることになったのです。
さらに、重要文化財の中でも特に価値の高いものが「国宝」として指定されることになりました。つまり、文化財保護法の制定によって、旧国宝は重要文化財もしくは新しく国宝に指定されたものに分かれたといえます。
まだまだある!日本の文化財
法隆寺南大門は国宝。法隆寺は、奈良県斑鳩町にある聖徳宗の寺院。ユネスコ世界文化遺産『法隆寺地域の仏教建造物』の一部, Horyu-ji02s3200, Public domain, via Wikimedia Commons.
日本には他にも数々の文化財があり、その中でも代表的なものは次の通りです。
都道府県・市町村指定等文化財
国が定めた文化財だけではなく、各都道府県や市町村が、それぞれの条例などに基づいて指定した文化財があります。地域において歴史的、芸術的、学術的に価値のあるものを保護するために設けられたものです。
身近な地域の歴史や文化を伝える貴重な存在であり、地域住民のアイデンティティの形成にも貢献しています。
■文化庁
世界遺産
世界遺産は、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が認定する、人類にとって普遍的な価値を持つ文化遺産や自然遺産です。文化遺産、自然遺産、複合遺産の3種類があります。
世界遺産に登録されることは、その価値が国際的に認められたことを意味し、保護と継承のための国際的な協力体制が構築されます。日本の世界遺産としては、法隆寺地域の仏教建造物群や、白川郷・五箇山の合掌造り集落などがあります。
■文化遺産オンライン
引用元:世界遺産と無形文化遺産
日本遺産
日本遺産は、地域の歴史的魅力や特色を通じて、日本の文化・伝統を語るストーリーを文化庁が認定するものです。地域の文化財や伝統文化をストーリーという形でまとめ、その魅力を発信することで、地域の活性化を目指しています。
世界遺産とは異なり、文化財そのものの価値よりも、それらを結びつけるストーリーに重点が置かれています。日本遺産に認定されることで、地域の文化財の保護や活用、観光振興などに繋がることが期待されていることが特徴です。
■日本遺産ポータルサイト
引用元:日本遺産とは
国宝や重要文化財を調べられるWebサービス
俵屋宗達 風神雷神図屏風, Wind God and Thunder God Screens by Tawaraya Sotatsu low-res, Public domain, via Wikimedia Commons.
国宝や重要文化財などの貴重な文化財は、いつでもどこでも見られるとは限りません。しかし、そのデジタルデータや情報にはすぐにアクセスできる場合もあります。以下の公的なWebサービスを参考にしてみましょう。
■文化庁
引用元:国指定文化財等データベース
引用元:文化遺産オンライン
■国立文化財機構
引用元:e国宝
また、国立国会図書館では文化財の画像やデータなどを調べることができます。興味のあるジャンルや文化財についてもっと知りたいときは、このようなサービスも便利です。
■国立国会図書館サーチ
引用元:文化財を調べる
国宝も重要文化財もどちらもすごい!
国宝と重要文化財は、どちらも保護する価値が高いとされる、日本の歴史や文化を伝える貴重な文化財です。また、文化財保護法制定以前の重要美術品や、美術工芸品に限らない無形文化財、国ではなく都道府県や市町村が指定したものなど、私たちの周りには実は多くの文化財があります。
これらの違いを知ることで、美術館や博物館での鑑賞がより一層深まるでしょう。そして、長い時間をかけて大切にされてきた文化財を守り伝えていくことに、ぜひ心を寄り添わせてみてください。

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文筆家(ライター)。芸術文化を専門に取材執筆を行い、アートと社会について探究する書き手。SNSでも情報を発信する他、さつまがゆく Official Podcastでは取材執筆にまつわるトークを配信中。
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