STUDY
2022.6.28
バロック建築は何を見ればいい?教会巡りをより楽しむためのポイント3つ
バロック様式は、16世紀後半から18世紀初頭にかけてヨーロッパで広まった芸術の様式です。
Nicholas Gemini, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
『バロック』という言葉の語源はポルトガル語の「いびつな真珠」で、バランスのとれていないものを指します。
一般的に「豪華絢爛」「荘厳」「華麗」などの形容詞で表現されることが多く、見た人がハッと息をのむような迫力が特徴です。
この記事では、ローマの大学院で美術史を専攻している筆者が、「バロック様式の教会」を楽しむためのポイントを3つ紹介します。
ルネッサンスからの発展:バロック様式
※ルネッサンス様式代表例:サンタクローチェ聖堂(フィレンツェ)(撮影:Grueslayer), CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
バロック様式を正しく理解するためには、その前の時代に広まったルネッサンス様式を知る必要があります。
一般的に、ルネッサンス様式は縦横の比率やデザインにおいて均整がとれていることが重要とされており、穏やかで端整な構造となっています。
Jensens, Public domain, via Wikimedia Commons
一方バロック時代には、「均整」よりも感情を揺さぶるようなドラマチックさが重視されるようになります。
楕円形や曲線などを建築の中に含み、見る人の感情に直接訴えかけるような構造がバロック様式の最大の特徴です。
バロック様式を表す3つのキーワード
Zenit News Agency, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
バロック様式を知るための3つのキーワードは「立体性」「錯覚」「光」です。
バランスの良さを追求したルネッサンス様式に比べるとバロック様式では、アンバランスさによって動きのある構造が多用されています。
そのため、壁や天井の装飾は平面を飛び出し、物体として3Dの実体を持つことがあります。
これがバロック様式の「立体性」であり、建物全体の迫力の源でもあります。
「立体性」はファサード(正面入り口の壁)にも表れており、柱1つ1つが独立して壁の外に出ている構図が多いのが特徴です。
実際には平面から飛び出していない場合でも、あたかも壁の向こうに空間が広がっている(もしくは絵が手前に飛び出しているように見える)バロックの技法は「錯覚」いう言葉で表現されます。
キリスト教会の場合、天井世界を感じることができるように天井部分に青空と天使が描かれていることがよくあります。
この「錯覚」に重要な要素でもあるのが「光」です。
「光」は窓から差し込む自然光だけでなく、物体によって人工的に表現された光も指します。
バロック装飾では、金色の素材を用いて物体的に光を表現することがあり、聖霊や聖人など重要な存在を一層際立たせる役割を果たしています。
バロック様式教会の代表例:ジェズ教会
Miguel Hermoso Cuesta, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
バロック様式の代表的な建築の例としては、ローマのジェズ教会(イタリア語: Chiesa del Gesù )が挙げられます。
もともとは日本と馴染みの深いイエズス会の本拠地で、『ジェズ』はイタリア語で「イエス」という意味です。
縦と横両方にダイナミックに伸びるファザードのデザインは、世界初のバロック様式とも言われています。
両サイドに翼廊のある伝統的な教会建築とは異なり、単廊に直接複数の礼拝堂が付属する構造になっています。
このおかげで構造が中央化され、教会のどこの部分からも全体が見渡せるようになっています。
天井の装飾は、絵画になっている部分と枠からはみ出して立体的に表現されている部分が混ざっており、見る人の錯覚を誘います。
余談ですが、このジェズ教会の「聖イグナチウス礼拝堂」には、世界最大級のラピスラズリの塊が使用されています。
豪華絢爛なバロック建築は感覚で楽しむ
バロック建築は、流動的でドラマチックな構造が特徴です。
豪華絢爛な色遣いと構成により、入った瞬間から見る人の心を揺さぶり魅了する力がある建築だと思います。
バロック建築を訪れる際は「立体性」「錯覚」「光」の3つのポイントに注目してみてくださいね。
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イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
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