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2024.6.3
【ローマ】サンタンジェロ城の建築を歴史・アート好きに向けて解説
サンタンジェロ城は、ローマのシンボルの1つともいえる有名な建築です。ヴァチカン市国のサン・ピエトロ大聖堂の近くにあり、遠くからでもすぐに見つけられる大きさです。
実はサンタンジェロ城のなかに入って内部を見学できることは、ご存じでしたか?この記事では、ローマで美術史の修士を取得した筆者がサンタンジェロ城の歴史、アート、内部の見どころを解説します!
サンタンジェロ城の歴史
Castel Sant'Angelo and Ponte Sant'Angelo in Rome, ItalyPublic domain, via Wikimedia Commons.
サンタンジェロ城は現在「お城」ですが、もともとはハドリアヌス帝の霊廟(死者を祀る建造物)で、139年に完成しました。霊廟としては非常に大きく、ハドリアヌス帝の権力がいかに絶大だったかがよくわかりますね。少なくとも217年のカラカラ帝までの歴代皇帝の遺灰もこの場所に納められていたため、実質「皇帝たちのお墓」とも言えます。
ローマ帝国末期には徐々に軍事施設として活用されるようになり、403年にはローマ市内を守るためアウレリアヌス城壁の一部に組み込まれました。城壁に既存の巨大建造物を組み込む手法はローマでは一般的で、アウレリアヌス帝が270年からの異民族の侵入に対抗するために城壁を建築した際にも、同様の手法が多く用いられました。
「サンタンジェロ(聖天使)」の名がついたのは、6世紀末からです。伝説によると、ローマでペストが流行した際に、教皇がサンタンジェロ城の上で剣を鞘に納める大天使ミカエルを目撃したと言われます。教皇はミカエルの姿はペストの終焉を告げたと考え、「サンタンジェロ」の名前をつけました。
その後、教皇のための要塞として発展し、有事の際には教皇が身を守ることができる施設として増改築が繰り返されます。サンタンジェロ城からヴァチカン市国に向かって伸びている城壁は通路の役割も果たし、教皇が地上ではなく安全な道で逃げられるように準備されていました。
博物館として開放されているサンタンジェロ城
Castel Sant'Angelo - Roma Public domain, via Wikimedia Commons.
サンタンジェロ城はあまり知られていませんが、中に入って見学することができます。見どころの多いローマでは素通りされることが多い場所ですが、実は歴史好き・アート好きにとって見ごたえ抜群!
現在は大天使ミカエルに捧げられた“キリスト教建築”になっていますが、もとは非キリスト教徒(=皇帝)の霊廟です。古代建築(=異教徒)のキリスト教建築への応用という観点からも、興味深い存在です。
サンタンジェロ城はかつて牢獄としても利用されていたため、下層階や地下は薄暗く、少し不気味な雰囲気がただよう一方、一歩内部に足を踏み入れると豪華絢爛な装飾が施されている空間もあります。
皇帝たちの墓として、牢獄として、教皇の避難場所として…さまざまな用途で利用されてきたからこそ、サンタンジェロ城には多くの顔があるのです。ちょうどローマの街自体がそうであるように、このお城もまた、長い歴史のなかで変化を受容し、発展を続けてきた存在でした。
時期によっては内部で特設展を開催していることもあります。基本的にはサンタンジェロ城やローマの歴史に関連したテーマを軸にしていることが多く、アートを通じて歴史が学べる仕組みです。
見逃せないサンタンジェロ城のカフェテリアと屋上からの眺め!
筆者撮影:サンタンジェロ城カフェテリアにて(2023年7月)
サンタンジェロ城が博物館として開放しているのは、建造物のなかだけではありません。周囲を囲うようにつながっているテラス式の廊下にも、博物館のチケットで入ることができます。
要塞としての役割を果たすため、サンタンジェロ城のテラス部分はいくつかの窓がある壁に覆われています。窓は小さいものから比較的大きいものまでさまざまで、ぐるっと周囲を歩いて観覧可能です。
テラス部分にはカフェテリアがあり、絶景!を見ながらおいしいコーヒーを飲むことができます。席によって見える景色がかなり違うので、お気に入りの席が空いていなければ待つのもおすすめです。(基本的に利用者は観光客なので、コーヒーを飲んで一休みするだけですぐ席を立ちます。)
さらに、サンタンジェロ城は屋上にも上がることができます!ちょうど屋根の上に立つ大天使ミカエルの、すぐ足元まで博物館チケットで行けるのです。壁に覆われたカフェテリアからの眺めとはまた異なる開放的な見晴らしは、圧巻!
サンタンジェロ城のアクセス・基本情報
| 住所 | Lungotevere Castello, 50, 00193 Roma RM, イタリア GoogleMapで見る |
| 開館時間 | 火曜日から日曜日まで、9:00~19:30 (最終入場は 18:30) |
| 定休日 | 月曜日 |
| 入場料 | 美術館全体 + 展示「時間の不思議。サンタンジェロ城のジランドラと花火芸術」 €16.00 (+ 予約料として €1.00) 毎月第 1 日曜日は入場無料 |
※情報は変更となる場合がございます。最新の情報は公式サイトでご確認ください。
サン・ピエトロ大聖堂を含むヴァチカン市国はもちろん、目下に望むテヴェレ川、そしてベルニーニをはじめとしたバロックの巨匠が手掛けたサンタンジェロ橋も、全体を存分に眺めることができます。(筆者はひそかに、サンタンジェロ城はヴァチカンエリアで最高のビューポイントだと思っています。)
歴史、アート、そして絶景!定番観光スポットだけではなく、ユニークな体験をしたい方はぜひサンタンジェロ城を訪れてみてください。以上、歴史好き、アート好きに向けたサンタンジェロ城解説でした!
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イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
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