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2025.9.2
京都・福田美術館を満喫|日本美術とカフェ、ミュージアムショップが魅力の嵐山アートスポット
京都の景勝地として人気の観光地、嵐山。この地に建つ福田美術館は、「誰もが感動する」をコンセプトに、江戸から近代の日本絵画を親しみやすい切り口で紹介しています。
葛飾北斎や伊藤若冲をはじめとする巨匠の作品をじっくり鑑賞できるうえ、渡月橋を一望できるおしゃれなカフェや、ユニークなグッズが揃うミュージアムショップも併設。日本美術と京都の魅力に触れる贅沢なひとときを、福田美術館で過ごしてみてはいかがでしょうか。
「誰もが感動する」日本美術を楽しむ美術館
京都駅からJR山陰本線(嵯峨野線)に乗り、約20分で嵯峨嵐山駅に到着。12分ほど歩くと、大堰川(おおいがわ)のほとりに建つ福田美術館が見えてきます。
ほどよく現代的で和モダンな建築には、伝統的な京町家のエッセンスが取り入れられているそう。嵐山の風景に馴染みつつ、洗練されたおしゃれな雰囲気もたっぷりで、美術館に入る前から気分が高まります。
福田美術館は「誰もが感動する」をコンセプトに、江戸から近代の日本絵画を収集。可愛らしい動物画や麗しい花鳥画をはじめ、子どもから大人まであらゆる人の心に届く作品が充実しているのが特徴です。
しかも、円山応挙や伊藤若冲など江戸を代表する画家、竹内栖鳳や上村松園をはじめとする明治の画家など、名だたる巨匠の優品を網羅。「日本美術に興味があるなら、とりあえず福田美術館に行ってみて!」と美術初心者さんにおすすめできる、質と量と「親しみやすさ」を備えた美術館です。
取材時は大阪万博イヤーということで、展覧会『万博・日本画繚乱 ー北斎、大観、そして翠石ー』が開催中でした。現代の万博では自然科学やテクノロジーがフィーチャーされやすいですが、美術も国を代表する先進的な技術と考えられていた近代、万博は各国の美術作品が集まる場でもありました。
日本からも、葛飾北斎や現役の画家たちの作品が数多く出品。多くは外貨獲得のため現地で販売され、現存しているものはほとんどないとのことですが、本展では万博出品作に注がれた熱意をしのぶべく、彼らの作品の数々が展示されています。
展覧会は、ヨーロッパで流行したジャポニスム(日本趣味)を代表する葛飾北斎からスタート。1867年パリ万博に出品されたのは『北斎漫画』などですが、本展では北斎の肉筆画が紹介されます。
大量のコピーを製造できた浮世絵版画と異なり、画家が自ら筆を取って描く肉筆画は1点もの。現存する点数は限られますし、どこでも見られるものではありません。そんな北斎の肉筆画が、本展では4点も展示。のっけから福田美術館のコレクションの質と量に圧倒される構成でした。
明治以降の美術界を牽引した、橋本雅邦や竹内栖鳳、上村松園、横山大観などの作品も充実。京都画壇の作品を中心に、屏風や掛け軸といったさまざまな形式の絵画をじっくり鑑賞しました。
なかでも必見なのが、1900年パリ万博に虎の絵を出品し、日本人画家として唯一の金メダル(金牌)を獲得した、大橋翠石(おおはし すいせき、1865~1945)です。 4年後のセントルイス万博でも連続して金メダルを受賞した実力派で、その腕前は作品を一見すれば納得のとおり。
しかし現在、翠石の名はあまり知られておらず、鑑賞できる機会も多くはありません。そんななか、福田美術館は翠石の芸術にも注目しており、全国で最多の21点を所蔵。今回の展覧会に限らず翠石の作品を見られる機会に恵まれています。
今にも動き出しそうな動物を描いた翠石の作品は、1本ずつ丁寧に描写された「毛描き」がポイント。信じられない細かさと密度で毛が描き込まれ、虎や猫など動物のもふもふした質感を表しています。
私が「幻の巨匠」と呼ばれる翠石を知ったのも、同館の展覧会がきっかけでした。福田美術館ならではの画家なので、訪れた際にはぜひ翠石の作品を探してみてください…!
翠石のライバル(?)といえば、竹内栖鳳です。栖鳳も1900年パリ万博に出品しましたが、自身は銅牌。日本人で金牌を受賞したのは翠石のみで、銀牌に輝いた画家もちらほらいるなか、当時の京都画壇を牽引するカリスマとして脚光を浴びていた栖鳳は何を感じたのか……想像せずにはいられない、ストーリー性の豊かな展示構成も見事でした。
渡月橋を望むカフェ「パンとエスプレッソと福田美術館」
さて、美術館めぐりの大きな楽しみといえば、展覧会を振り返りながらの休憩タイム。福田美術館を訪れたら、来館者のみが利用できる併設カフェ「パンとエスプレッソと福田美術館」でひと息ついてはいかがでしょうか?
落ち着きとあたたかみのある店内は、床とオリジナルデザインの家具に無垢材を使用。そして何より、嵐山のシンボル「渡月橋」を一望できる絶好のロケーション! 窓から京都らしい景色を眺めながら、ドリンクや軽食、スイーツを味わえます。
コーヒーゼリーサンデーとカフェラテのセット 1,600円(税込)
今回は、コーヒーゼリーサンデーとカフェラテをセットで注文しました。ひんやり冷たい抹茶とバニラのアイス、ザクザク食感のクランチ、ほろ苦いコーヒーゼリーが混ざり合い、一口ごとにサンデーは美味しさを更新。ニッキが甘く香る福田美術館オリジナル八ッ橋は、ミュージアムショップでも購入できます。
福田美術館オリジナルの若冲八ツ橋(ミュージアムショップにて撮影)12枚入 702円(税込)/36枚入 1,782円(税込)
カフェラテにはラテアートのサービスも。鳳凰でしょうか、翼を左右に広げた姿が描かれていました。ほか、「季節の福パフェ」やパニーニも美味しそうで、また訪れたくなります。
それにしても、美術鑑賞のあとのスイーツって、どうしてこんなに美味しいのでしょうね…!? 渡月橋をぼんやり眺めながら展覧会の余韻に浸り、甘味を頬張る贅沢なひとときでした。
日本美術がもっと身近になるミュージアムショップ
カフェで美味しいものを充電したら、ミュージアムショップへ。こちらでは、展覧会の図録やオリジナルグッズを販売しています。所蔵品のモチーフをあしらったグッズは普段使いもしやすそうで、おみやげ探しも捗ります。
定番のポストカードはもちろん、円山応挙の子犬をモチーフにしたクッションキーホルダーや、新たに発見された伊藤若冲《果蔬図巻》をデザインした「果蔬図巻柄京扇子」など、ここでしか手に入らないグッズが盛りだくさん。
展示室での鑑賞を思い出しながら、お気に入りのグッズを探してみてはいかがでしょうか。
また、イラストレーター・てらおかなつみさんのコラボグッズも。福田美術館のコレクションをてらおかさんらしく解釈したポストカードや付箋、メモ帳は、見ているだけで癒される可愛いデザインです。
続きは嵯峨嵐山文華館で
福田美術館を満喫したら、3分ほど歩いて嵯峨嵐山文華館にも行ってみましょう。同館では、嵐山で誕生したと伝えられる百人一首の歴史と魅力を伝える常設展と、シーズン毎の企画展を開いています。
取材時は、福田美術館と共催した企画展『万博・日本画繚乱 ー北斎、大観、そして翠石ー』が開催中でした。大橋翠石や竹内栖鳳はもちろん、菊池芳文や尾竹竹坡などの作品も鑑賞できました。
嵯峨嵐山文華館といえば、2階の畳ギャラリーです。靴を脱いで広々とした和室に上がり、日本の美術品をゆっくり鑑賞。どこか懐かしい畳の香りとともに絵画を堪能できる、珍しい空間なんです。
今回の展覧会では、竹内栖鳳の屏風《春郊放牛図》と大橋翠石の屏風《悲憤》が向かい合わせに展示。2人とも動物を得意とした画家ですが、片や金牌、片や…という関係を知ると、絵の見方も変わりそうです。
質の高い日本美術を気軽に楽しめる福田美術館は、2025年に開館6周年を迎えます。新しい美術館ならではの視点と解釈で紡がれる展覧会は、日本美術に詳しい人にもそうでない人にも響いて、絵画の魅力を再発見できるはず。
渡月橋を眺めながら過ごせるカフェや、オリジナルグッズが素敵なミュージアムショップも魅力的で、何度でも訪れたい美術館です。嵯峨嵐山文華館にも足を伸ばし、美術鑑賞に浸る京都の特別な一日をお過ごしください。
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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