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2025.12.17
小説家・曲亭馬琴とは?葛飾北斎との関係にも注目してみよう
曲亭馬琴(きょくていばきん)は、江戸時代後期、化政文化の時代に活躍した小説家です。生涯にわたって多くの作品を執筆し、読本(よみほん)という文学ジャンルを確立した人物で、特に大作『南総里見八犬伝』で広く知られています。
また、葛飾北斎とのコンビによって挿絵が加えられた作品も、圧倒的な人気を博しました。
本記事では馬琴の生涯や代表作を紹介しながら、その功績を深掘りします。
目次
曲亭馬琴『白蛇伝』歌川国芳画, Public domain, via Wikimedia Commons.
江戸時代後期の小説家、曲亭馬琴とは
『國文学名家肖像集』 曲亭馬琴, Public domain, via Wikimedia Commons.
曲亭馬琴は本名を滝沢興邦といい、1767年(明和4年)に江戸の武士の家に生まれました。後に馬琴と名乗って活動した年代は、大衆芸術が花開いた化政文化の時代にあたります。
馬琴の作品の多くは、長編小説である「読本」に分類され、武家社会の教訓と仏教的な因果応報の思想を取り入れた、勧善懲悪の物語が特徴です。その作風は、これまでの軽妙な戯作(げさく)とは一線を画し、後の日本文学にも大きな影響を与えました。
2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~』には、まだ小説家として大成する前の通称・滝沢瑣吉の名前で登場し、蔦屋重三郎との関係も含めて描かれています。
曲亭馬琴と滝沢馬琴、二つの名前
馬琴は作家名、すなわちペンネームとして「曲亭馬琴」を名乗っていました。
一方で、公的な場や自身の晩年の記録では、本名の姓で「滝沢馬琴」の別名を使っています。そのため、現代の伝記などでは両方の名前を併記しているものが見られます。
武士から戯作の世界へ。山東京伝に出会う
馬琴は20代後半で、当時の著名な絵師かつ戯作者の一人である山東京伝(さんとうきょうでん)に出会い、戯作の世界に足を踏み入れます。
そして、すぐに才能を開花させ、人気作を連発していた版元・蔦屋重三郎の企画にも参加しました。こうして、徐々に人気作家としての地位を確立していったのです。
読本という文学ジャンルの確立
四天王剿盗異録、1806年の曲亭馬琴作と歌川豊国画の読本、ボストン美術館蔵, Public domain, via Wikimedia Commons.
馬琴の功績は、それまで教訓的で物語性の薄かった読本というジャンルを、庶民が熱中する長編小説へと昇華させた点にあります。武士社会の道徳観を原点に、徹底した勧善懲悪の物語を書いた作風も特徴的です。
晩年は病に見舞われて失明しましたが、代筆を務めたのが息子の嫁であるお路(みち)でした。馬琴の息子はすでに亡くなっていましたが、お路の献身的な支えを受け、盲目でありながらも最後まで作品を書くことができたのです。
曲亭馬琴の代表作
馬琴の作品は膨大ですが、その中でも彼の名を不朽のものとした『南総里見八犬伝』と、名作といわれる代表的なものをご紹介します。
『南総里見八犬伝』
曲亭馬琴の代表作といえば、『南総里見八犬伝』です。
馬琴は、現在の千葉県南部にあたる安房国の戦国大名・里見氏をめぐる、勧善懲悪の伝奇物語に長年を費やしました。ヒロインの伏姫と神犬・八房(やつふさ)の因縁により生まれた8人の若者が主人公で、彼ら八犬士が集結する壮大なスケールや、複雑な人間ドラマが特徴です。
『椿説弓張月』
『椿説弓張月』(曲亭馬琴 著、1807 - 1811年刊)国立国会図書館デジタルコレクションより, Public domain, via Wikimedia Commons.
『椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)』は、源為朝を主人公とした伝奇読本です。為朝の豪快な活躍を描き、その物語のスケールと荒唐無稽な魅力から、『南総里見八犬伝』と並ぶ馬琴の傑作とされています。
挿絵は葛飾北斎が担当し、馬琴と北斎のコンビの初期の代表作となりました。
『傾城水滸伝』
曲亭馬琴著 歌川国安画『傾城水滸伝』第2編、1・2巻, Public domain, via Wikimedia Commons.
『傾城水滸伝(けいせいすいこでん)』は、中国の古典小説『水滸伝』を下敷きに、舞台を江戸の遊郭、すなわち傾城に移して構成された物語です。
江戸の遊郭を題材にするという当時の流行を取り入れた作品であり、大衆の関心を引きつけました。
曲亭馬琴と葛飾北斎の関係
曲亭馬琴・高井蘭山著 葛飾北斎画『新編水滸伝』, Public domain, via Wikimedia Commons.
曲亭馬琴の著作のうち『椿説弓張月』や『新編水滸伝』など数多くの作品では、葛飾北斎が挿絵を担当してヒットを連発しており、まさに黄金コンビの二人でした。
しかし、厳格な気質の馬琴と、自由奔放な北斎は対照的な存在でもあり、結果として二人のコンビは解消されます。しかし、この天才同士が生み出した作品群は、江戸後期の文学と美術が融合した大きな成果となりました。
曲亭馬琴を知ると、江戸の美術がもっと楽しくなる
馬琴の功績は、単に娯楽小説を普及させただけに留まりません。後の日本の大衆文化における物語にも影響を与え、「伝奇」というジャンルの原型を確立したといえます。また、壮大な物語とダイナミックな挿絵が融合した作品群は、江戸の人々を魅了し、文化を大きく前進させたのです。
浮世絵の展覧会では、馬琴の作品にも多く出会うことができます。ストーリーや登場人物を知ることで、絵に描かれている内容や場面がわかり、美術鑑賞をさらに深く楽しむことができるでしょう。馬琴の作品には現代語訳されているものも数多く、今の時代に読んでも面白さを感じられるはずです。アートをより楽しむために、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
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文筆家・アートライター。1994年神奈川生まれ。会社員を経て、2021年よりフリーライターとして独立。アートと日本伝統文化を専門としつつ、現代美術やカルチャーなど幅広いジャンルで執筆している。日本伝統文化検定2級。SNSでも情報を発信する他、Podcastでは伝統芸能にまつわるトークを配信中。
文筆家・アートライター。1994年神奈川生まれ。会社員を経て、2021年よりフリーライターとして独立。アートと日本伝統文化を専門としつつ、現代美術やカルチャーなど幅広いジャンルで執筆している。日本伝統文化検定2級。SNSでも情報を発信する他、Podcastでは伝統芸能にまつわるトークを配信中。
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