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2026.8.27

【行ってきました!】『フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展』で見つけた「私だけの名画」

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大阪中之島美術館にて開幕した、『フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展 17世紀オランダ絵画の名品、奇跡の再来日』。
14年ぶりに来日した彼女に会うため、連日多くの人が訪れています。

ヨハネス・フェルメール 《真珠の耳飾りの少女》ヨハネス・フェルメール 《真珠の耳飾りの少女》 1665年頃 マウリッツハイス美術館

この機会を存分に楽しみたい、だから展覧会に行く前に予習をしておこう。そう思って、この記事を開いてくださった方もいるかもしれません。

ごめんなさい。この記事では《真珠の耳飾りの少女》の見どころについて、あえて詳しく紹介しません。

その代わりにお伝えしたいのが、「本物の絵画を自分の目で見る楽しさ」です。

展示風景

私もよくあるのですが、予習をすればするほど、実際の展覧会の体験が「誰かに教えてもらった見どころの再確認」になってしまいがち。そしてふと、「あれ? 私、何しに来たんだっけ?」と首を傾げるのです…。

本展は、「自分の目で実物を見ること」がどれほど貴重で面白い体験なのか、あらためて学ぶ機会になりました。それに気づかせてくれた、あの少女の話から始めていきますね。

《真珠の耳飾りの少女》が教えてくれたこと

ヨハネス・フェルメール 《真珠の耳飾りの少女》ヨハネス・フェルメール 《真珠の耳飾りの少女》 1665年頃 油彩/カンヴァス 44.5×39cm マウリッツハイス美術館 © Mauritshuis, The Hague

青いターバンを頭に巻き、こちらを振り返る彼女の姿は、フェルメールを知らない人でも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

誰もが知っている本作の説明は、本やネットに溢れています。たとえば、目の覚めるようなターバンの青色は、高級な宝石「ラピスラズリ」を砕いた絵具によるもの。一方、黄色の部分には、牛の尿を原料とした絵具が使われているとか…。

フェルメールが使用した顔料の展示フェルメールが使用した顔料の展示

しかし実物を前にした瞬間、こうした事前知識は頭から吹き飛んでしまいました。少女の佇まいが息を呑むほど上品で、完璧だったからです。

ヨハネス・フェルメール 《真珠の耳飾りの少女》ヨハネス・フェルメール 《真珠の耳飾りの少女》 1665年頃 マウリッツハイス美術館

青白く透明感のある肌。薄く開いた小さな唇。そして、「目を奪われる」という表現がぴったり嵌まる、丸くて吸引力の強い瞳。彼女を前にして私の口からこぼれたのは、「美しい…」という一言でした。

これは美形や美女という意味ではなく、「存在の美しさ」という感覚です。内面の輝きのようなものが、彼女の内側から滲み出ているように感じていました。現実でこんな女性を見かけたら、忘れられないくらい印象が残りそうです。

ヨハネス・フェルメール 《真珠の耳飾りの少女》ヨハネス・フェルメール 《真珠の耳飾りの少女》 1665年頃 マウリッツハイス美術館

同時に、私の目に飛び込んできたのは、耳元で小さく光る真珠でした。真珠そのものは顔の輪郭の陰に沈んでいるため暗いのですが、ぽつんと置かれた真っ白なハイライトは強く目立ち、コントラストの差で自然と目が行くようになっています。

面白いのが、私だって何度も書籍やスマホの画面で《真珠の耳飾りの少女》を見てきたのに、こんな体験はしたことがない、ということ。印刷物などでは青いターバンに注目していたので、ここまで真珠に目を引きつけられるとは思いませんでした。

展示風景

そして、実物を見て初めて体感したことがもうひとつ。少し離れたところから少女を見たあと、私はそのまま右側の出口方面へと進んだのですが、ふと何かを感じて振り返りました。

そのとき、彼女とばっちり目が合ったんです。

これは私個人の感想ですが、絵の正面を離れて右側に移っても、彼女の視線がついてくるように感じました。この感覚は、書籍やスマホの画面では感じなかったもの。自分の身体で実物の絵画に対面してみて、初めて得られた体験です。

ヨハネス・フェルメール 《真珠の耳飾りの少女》ヨハネス・フェルメール 《真珠の耳飾りの少女》 1665年頃 マウリッツハイス美術館

こうして私は、「知識として知っていた彼女」とは違う、「私しか知らない彼女」を見つけることができました。それは、ともすれば忘れがちな「絵画を見る面白さ」そのものです。

そして発見があったのは、《真珠の耳飾りの少女》だけではありません。

主役は誰?《ディアナとニンフたち》の謎

ヨハネス・フェルメール 《ディアナとニンフたち》ヨハネス・フェルメール 《ディアナとニンフたち》1653-1654年頃 マウリッツハイス美術館

今回来日したもう1点のフェルメール作品、《ディアナとニンフたち》も見てみましょう。月と狩りの女神ディアナが、ニンフ(森の精)たちとともに休息する場面を描いた作品です。

中央にいる黄色い服の女性がディアナです。彼女の視線の先では1人のニンフがしゃがみ込み、足を洗っています。

ヨハネス・フェルメール 《ディアナとニンフたち》ヨハネス・フェルメール 《ディアナとニンフたち》1653-1654年頃 油彩/カンヴァス 97.8×104.6 cm マウリッツハイス美術館 © Mauritshuis, The Hague

しかし、主役であるはずのディアナの顔、なんだか陰になって暗くないですか? どんな表情をしているのか、よくわかりません。

一方、ディアナの足を洗うニンフは、顔が明るく描かれています。俯いているため、彼女の顔のほうこそ暗くなりそうなのに…。

ヨハネス・フェルメール 《ディアナとニンフたち》ヨハネス・フェルメール 《ディアナとニンフたち》1653-1654年頃 マウリッツハイス美術館

ディアナの顔が暗いのはなぜなのか? ニンフの表情をよく見せているのはなぜ? フェルメールの真意はわかりませんが、この絵画は単純に「女神ディアナが主役」とは言い切れないのかもしれません。

発見によって謎が増えてしまいましたが、自分で気づけたことが、なんだか嬉しい…。「誰かに与えられた問い」ではない、「自分だけの問い」だから嬉しいんです。

理想が胸を打つ《想像のカトリック聖堂の内部》

展示風景

本展の見どころはフェルメールの2点だけではありません。17世紀オランダといえば、レンブラントやヤン・ステーンなどの画家も活躍した黄金期。当時を代表する風俗画や静物画、風景画なども10点並び、展覧会を彩ります。

なかでも特に気になったのが、エマヌエル・デ・ウィッテ《想像のカトリック聖堂の内部》です。画面の静けさはフェルメールに通じるものがありますが、こちらは壮麗な教会の内部を描いた絵画。カッチリと奥行きが作り込まれています。

エマヌエル・デ・ウィッテ《想像のカトリック聖堂の内部》エマヌエル・デ・ウィッテ《想像のカトリック聖堂の内部》1668年 油彩/カンヴァス110.0×85cm マウリッツハイス美術館 © Mauritshuis, The Hague

人物も描かれていますが、ものすごく小さいです。つまり天井がものすごく高く、非現実的な建物ということ。本作は実物の教会ではなく、画家が想像して描いた教会です。

どうして「想像」なのかというと…。当時のオランダの国教はプロテスタント(新しいキリスト教)で、カトリック(伝統的なキリスト教)の信徒は個人的な信仰実践しか許されませんでした。カトリックの教会も小さなものしかなかったため、デ・ウィッテは「大きくて立派な教会」を想像して描いたそうです。

「現実には叶わなくても、絵の中なら自由に創造できる」という、いじらしい願いを託したような本作を見て、なんだか目頭が熱くなりました。「そうだよ、好きなもの描きな?」と、気分はデ・ウィッテのオカンです。

展示風景

他の作品も知りたくなり、彼のことを調べてみたら、運河に落ちて亡くなり約11週間後まで遺体が発見されなかったと知って今、絶望しています。

何が言いたいかというと、私の心が動く作品は、《真珠の耳飾りの少女》のほかにもあったのです。作品の知名度にとらわれず、「自分にとっての名画」を見つけること。これが、私が美術を好きな理由だったな、と…。絵画を見ながらしみじみと思い出していました。

あなたが好きな絵画はどれ?

会場入口

生きているうちにあの少女を見られるのは、今回が最後かもしれない。私もそんな気持ちで臨んだひとりですが、この機を逃したくないと思えば思うほど、「正解の鑑賞」に囚われてしまうような気がします。

そうした「誰かに教えてもらった見どころ」も良いけれど、「自分で魅力を見つける」のはもっと楽しい。当たり前だけど忘れがちで大切なことを、あの少女をはじめとする12枚の絵画に教えてもらいました。

取っかかりは、「なんか好きかも!」「ちょっと変じゃない?」で十分です。小さな「!?」はいつのまにか大きく育って、あなたの目の前で「名画」として輝き始めます。

あなたが好きな絵画は、どんな作品ですか?

展覧会情報

フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展 17世紀オランダ絵画の名品、奇跡の再来日

フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展 17世紀オランダ絵画の名品、奇跡の再来日

会場:大阪中之島美術館 5階展示室
会期:2026年8月21日(金)~ 2026年9月27日(日) 会期中無休
開場時間:午前9時30分~午後5時 (入場は午後4時30分まで)
※金曜日、9月6日、9月8日、9月12日~9月16日、9月19日~9月27日は午後8時まで(入場は午後7時30分まで)
展覧会ウェブサイト:フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展

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明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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