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EVENT

2023.1.11

イラストレーター・宇野亞喜良の個展が開催中。幻想的な「万華鏡」の世界へ

1960年代から80年代に、寺山修司演出の天井桟敷などの舞台ポスターで脚光を浴び、2022年3月に米寿(88歳)を迎えた今なお、新作を発表し続ける伝説のイラストレーター・Aquiraxこと宇野亞喜良(うの あきら)。彼の個展「万華鏡展」が中央区・銀座のギンザ・グラフィック・ギャラリーで2023年1月31日まで開催されています。すでに2回見てきた筆者が、本展の見どころをフロアごとに紹介していきます。

1階フロア内装

幻想的な「万華鏡」の世界

会場に足を踏み入れると、自身が選んだ松尾芭蕉、寺山修司や宇野亞喜良ご本人の俳号である「左亭」などの俳句からインスピレーションを得た、見慣れた少女のイラストで、幻想的な世界が展開。幻想的なのは、その印刷も然り、「デザインのひきだし」編集長の津田淳子が担当した特殊印刷で、新聞紙、和紙、ホイルペーパー、段ボール、書籍などの素材に、ラメ加工、エンボス空押し、箔押しなど手の込んだ20種類の異なる印刷技法が映え、まさに展覧会名の「万華鏡」の再現でした。
また、壁紙にも同じ絵が背景として大きく印刷されていて、フロア全体が幻想的な佇まいになっていました。ちなみに、会場設計と評論は芸術家でデザイナー、写真家でもある矢萩喜從郎(やはぎ きじゅうろう)が担当。

1階フロア内装

1階フロア内装

1階フロア内装

1階フロア内装

《虹盗み/Rainbow Stealer》

《ユニコーンの/Why the unicorn》

《百合/Lily》

《襤褸市/Night Flea Market》

《三日月夜/Crescent Night》

本会場と隣接するミュージアムショップ「メゾン・デ・ミュゼ・デュ・モンド」では本展連携企画をしており、会場と同じ技法で特殊印刷された作品に直接触ることも可能です。宇野亞喜良の直筆サインを入れた数量限定の絵画も購入できますので、ぜひ寄ってみてください。

メゾン・デ・ミュゼ・デュ・モンド内観

また、2023年3月より、新宿区・市ヶ谷にある大日本印刷が運営する文化施設「市谷の杜 本と活字館」にて、本特殊印刷作品の制作過程を紹介する展覧会も開催予定ですのでお見逃しなく。

エロティック、ノスタルジーあふれるポスター展示

地階には、1960年代を中心としたポスターが、刈谷市美術館の協力のもと50点が一挙に展示されています。読書週間から始まり、越路吹雪リサイタル、MAX FACTOR、舞台告知、大学案内、ラジオ番組、信託銀行、ピンクフロイドまで。
テイスト的には、わりとニッチな画風かと思っていたのですが、いろいろなキャラクターで描き分けられ、幅広い業種のポスターで採用されてました。このあたりは時代に画風がフィットしていたのかもしれません。全体的にアート色が強い描写となってましたが、ピンクフロイドの販促用のポスターでは宇野亞喜良には珍しい男性が描かれていたのが目をひきました。

地階フロア内観

地階フロア内観

「越路吹雪リサイタル」ポスター 1963年

劇団:人形の家 第1回公演《人魚姫》ポスター 1967年

天井桟敷《星の王子さま》ポスター 1968年

日産パックインミュージック ポスター 1968年

天井桟敷 「毛皮のマリー」フランクフルト公演 1969年

ピンクフロイド レコード付録ポスター 1973年

官能的なショートアニメーション

見落として欲しくないのが、2階ライブラリのアニメーション作品「AQUIRAX CINEMA」。1960年代に制作したもので、3本で約25分の作品。人体を動かすことによって人体に描かれた動物や人物が動くという作品のほか、どれもいま見ても魅力的な仕上がりになっています。

「お前とわたし」(1965年)
女性の身体に描かれた官能的な線画が、身体の動きで変化するアニメ。
「La Fate Blance(白い祭り)」(1964年)
『草月アニメーション三人の会』のゲストとして、参加した際に制作。
「午砲(ドン」(1966年)
宇野亞喜良独特の物憂げな女性画による幻想的な紙芝居。

最後に

最後まで読んでいただきありがとうございます。今回は、なかなかまとめてみられない宇野亞喜良作品が、まとめてみられるチャンスです。質量ともに、宇野亞喜良ファンの期待を決して裏切ることのない展示になっていますし、いつもの少女のイラスト、昔懐かしいポスター、そして実験的な動画と3つの魅力を一度に味わえる内容となっていますので、銀座に行くついでに立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

ギャラリー外観

宇野亞喜良プロフィール

1934年名古屋市生まれ。カルピス食品工業、日本デザインセンター、スタジオ・イルフィルを経てフリー。日宣美特選、講談社出版文化賞さしえ賞、サンリオ美術賞、日本絵本賞などを受賞。1999年紫綬褒章。2010年旭日小綬章受章。
主な作品に、「宇野亜喜良60年代ポスター集」、「奥の横道」、「宇野亞喜良クロニクル」、「宇野亞喜良ファンタジー挿絵の世界」。絵本に、「白猫亭」、「上海異人娼館」(寺山修司・原作)、「おおきなひとみ」(谷川俊太郎・詩)、など。Bunkamuraギャラリー他、個展多数。

展覧会情報

ギンザ・グラフィック・ギャラリー第392回企画展
宇野亞喜良 万華鏡
会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
開催期間:2022年12月9日(金)~2023年1月31日(火)
所在地:東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F/B1F
アクセス:
・JR有楽町駅・新橋駅「銀座口」より徒歩10分
・東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線 銀座駅「B3出口」より徒歩5分
開館時間:11:00~19:00
入場:無料
展覧会サイト:
https://www.dnpfcp.jp/gallery/ggg/jp/00000813

関連企画

ggg「宇野亞喜良 万華鏡」展連携企画
会期:2022年12月9日(金)~2023年1月31日(火)
会場:メゾン・デ・ミュゼ・デュ・モンド(MMM)/3Fアートスペース
住所:東京都中央区銀座7-7-4 DNP銀座アネックス
アクセス:
・JR有楽町駅、新橋駅「銀座口」より徒歩10分
・東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線 銀座駅「B3出口」より徒歩5分
開館時間:11:00~19:00
休館日:日曜日・祝日・年末年始
入場:無料
会場サイト:
https://www.mmm-ginza.org/

「宇野亞喜良 万華鏡」展の制作過程を紹介する企画展
会期:2023年3月より
会場:市谷の杜 本と活字館
住所:東京都新宿区市谷加賀町1-1-1
アクセス:
・JR市ケ谷駅より徒歩15分
・東京メトロ南北線・有楽町線 市ケ谷駅「6番出口」より徒歩10分
・都営地下鉄新宿線 市ヶ谷駅「1番出口」より徒歩 15分
・都営地下鉄大江戸線 牛込神楽坂駅「A1出口」より徒歩 10分
開館時間:平日 11:30~20:00、土日祝 10:00~18:00
休館日:月曜日・火曜日(祝日の場合は開館)
入場:無料
会場サイト:
https://ichigaya-letterpress.jp

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つくだゆき

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東京美術館巡りというSNSアカウントの中の人をやっております。サラリーマンのかたわら、お休みの日には、美術館巡りにいそしんでおります。もともとミーハーなので、国内外の古典的なオールドマスターが好きでしたが、去年あたりから現代アートもたしなむようになり、今が割と雑食色が強いです。

東京美術館巡りというSNSアカウントの中の人をやっております。サラリーマンのかたわら、お休みの日には、美術館巡りにいそしんでおります。もともとミーハーなので、国内外の古典的なオールドマスターが好きでしたが、去年あたりから現代アートもたしなむようになり、今が割と雑食色が強いです。

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