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2023.2.20
ピンチの連続?横尾忠則現代美術館10年の展覧会を振り返る『横尾忠則展 満満腹腹満腹』が開幕
兵庫県の横尾忠則現代美術館にて、開館10周年を記念する展覧会『横尾忠則展 満満腹腹満腹(まんまんぷくぷくまんぷく)』が開幕しました。
本展は、これまでに開催された30の企画展をダイジェストで振り返る展覧会です。出展された作品や展覧会ポスター、展示の部分的な再現によって、10年分の企画展を一気見できる嬉しい機会です。
タイトルの「満満腹腹満腹」は、10年前の開館記念展「反反復復反復」に由来。ちょっと口に出してみませんか?「はんはんぷくぷくはんぷく」「まんまんぷくぷくまんぷく」……楽しくなってきません?
「反反復復反復」は横尾さんの発案だったそうで、モチーフの反復やセルフ・パロディーといった作風がわかると同時に、美術の自由さや親しみやすさも感じられるように思います。
そんな楽しい展覧会の見どころを、美術ライターの明菜が紹介していきます。
横尾忠則さんとは?
日本を代表する現代美術家のひとり、横尾忠則(よこお・ただのり)さん。1936年兵庫県に生まれ、高校卒業後、神戸新聞社にてグラフィック・デザイナーを務め、1960年に上京してからグラフィック・デザイナー、イラストレーターとして活動しました。
1980年にニューヨーク近代美術館で大規模なピカソ展を見たことをきっかけに画家としての活動を本格的にスタートさせ、「Y字路」を描いたシリーズや西洋絵画のパロディなど、多彩な作品を手がけてきました。
2021年には東京都現代美術館で大規模な個展『GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?』が開催され、600点以上の作品が展示されました。この機会に横尾さんを知った方も多いのでは。
▼『GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?』レポート記事
https://irohani.art/event/4457/
コロナ禍にも負けず……というよりご自身のスタンスを貫き、現在も精力的に制作されているようです。「寒山拾得」シリーズの展示に向け、制作に取り組んでいらっしゃるとか。
次々に作品を発表する横尾さんの寄贈・寄託作品を保管し、鑑賞の機会を作っているのが、兵庫県の横尾忠則現代美術館です。横尾さんの作品に加え、制作の裏側にある資料の数々も保管しています。
10年分の展覧会のコラージュ
同館の10年を振り返ると、さまざまな切り口で展覧会が開かれてきたことがわかります。色で絵画を分類した展覧会、人物画を集めた展覧会など、わかりやすい切り口の展覧会もありますが……
・横尾忠則どうぶつ図鑑
・ようこそ!横尾温泉郷
・横尾忠則の恐怖の館
・横尾忠則 在庫一掃大放出展
・Curators in Panic~横尾忠則展 学芸員危機一髪
など、初見では美術展のタイトルとは思えない展覧会も行われてきました。
中でも興味深かったのが2018年の『横尾忠則 在庫一掃大放出展』です。あるとき、学芸員に対し「君たちは下手くそだから、一度ぼくに展覧会をキュレーションさせてほしい」と言った横尾さん。それならとお任せしたのに一向に連絡が来ず、諸々のタイムリミットが切れてどうしようというタイミングで、「うーん、困ったな。じゃあ、なんか適当にやっといて」と言われてしまったそうです。
横尾さんの自由な一面がわかるエピソードですが、学芸員はさあ大変ですよね。大慌てで展覧会を企画し、同館での展示実績のない作品(未発表ではない)を展示する運びとなったそうです。
企画展「Curators in Panic~横尾忠則展 学芸員危機一髪」セクション 展示風景
また、2021年の『Curators in Panic~横尾忠則展 学芸員危機一髪』もユニークな展覧会です。上述した東京都現代美術館での展覧会に200点もの作品を貸し出したため、収蔵庫がスカスカになってしまい、自虐的に「学芸員危機一髪」として展覧会のタイトルにしたそうです。
「残り物にも可愛い作品があるんやで」というわけで、各学芸員が推し作品を持ち寄り70点が展示されました。学芸員の皆さんのプロフィールや横尾さんとのエピソードも添えられており、同館のファンほど楽しい展覧会になったのではと思います。
展覧会ポスターにも注目!
展覧会開催に欠かせないのが、どんな展覧会がいつから始まるのかを私たちに教えてくれるポスターです。同館の企画展のポスターは、すべて横尾さんが手がけているとのこと!
30の展覧会ポスターを一度に鑑賞して気づいたのが、どれも洗練されており、かつ訴求力が高いこと。遠目で見るとかっこいいので近づきたくなるし、近寄ると展覧会の5W1Hがスムーズに入ってきます。
自由奔放で情熱的な芸術家の印象がある横尾さんですが、キャリアの出発点はデザイナー。誰がどんな状況で見る作品なのかを踏まえ、理性で制作している部分があるのではと感じました。
まとめ
開館からの10年を振り返る本展では、横尾さんと美術館が深めてきた絆を感じることができました。ときに自由な芸術家に振り回される学芸員……というドタバタコメディを思い浮かべる構図ですが、10年の歴史は両者の信頼関係の証でもあるように思います。
横尾さんの作品がずらりと並ぶ密度の高い空間で、ピンチをチャンスに変えてきた10年の歴史も知れるというお得な機会。横尾忠則現代美術館に足を運んでみてはいかがでしょうか。
展覧会情報
開館10周年記念横尾忠則展 満満腹腹満腹
会場:横尾忠則現代美術館
会期:2023年1月28日(土)~5月7日(日)
開館時間:10:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日
https://ytmoca.jp
画像ギャラリー
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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