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2023.2.28

知らなかったミュシャに出会える?『ミュシャ展 ~マルチ・アーティストの先駆者~』

京都の美術館「えき」KYOTOで『ミュシャ展 ~マルチ・アーティストの先駆者~』が開幕しました。会期は3月26日までです。

油彩画「エリシュカ」油彩画「エリシュカ」1932年/油彩(カンヴァス)

アール・ヌーヴォーを代表する画家のひとりで、女性と植物を組み合わせた優美な作風で人気のアルフォンス・ミュシャ(1860-1939)。国内では頻繁に展覧会が開かれ、作品を目にする機会も多いです。美術館に通い慣れている人にとっては、良くも悪くも「見慣れている」存在では。

ブローチ「アザミ」1900年/金属細工(緑瑪瑙、銀(925))

本展が注目するのは、ミュシャの「マルチ・アーティスト」としての側面です。代表作のポスターはもちろん、お菓子のパッケージやアクセサリー、少女の胸像にオリジナルの油彩画など、「ポスター以外のミュシャの仕事」がよく分かる内容です。さらに、少年時代のミュシャが描いた練習や落描きのような貴重な作品も……!

多岐にわたる仕事を通し、知られざるミュシャの一面に迫ります。本展の見どころについて、美術ライターの明菜が紹介していきます。

マルチ・アーティストとしての活躍

展示風景

チェコ・プラハ出身のミュシャがパリに出たのは、1887年、20代半ばの頃。はじめは雑誌や書籍の挿絵を手がけ、ブレイクしたのが1895年です。女優サラ・ベルナールが主演する「ジスモンダ」のポスターは、貼り出されるやいなやパリの街を驚かせ、ミュシャは一躍人気アーティストになりました。

本展ではポスターや挿絵のみならず、ミュシャが手がけたさまざまな作品を通し、マルチ・アーティストとしてミュシャを捉え直します。たとえばお菓子のパッケージ。チョコレートやビスケットなどの甘いお菓子とミュシャの流麗な装飾がよく合っていて、「パケ買い」したくなる作品です。

ルフェーヴル=ウティール社ビスケット(プティ・ボルドー風味)缶のパッケージ、1900年/リトグラフ(金属、紙)

19世紀、アール・ヌーヴォーが興ったのは消費文明が始まった時代でもありました。ミュシャは、自身の作品を広告に使用した、おそらく最初の芸術家と見られるそうです。

今では商品のパッケージやショップの紙袋にアーティストの作品をデザインすることは珍しくありませんが、当時は画期的だったのですね。

アール・ヌーヴォーの置時計(ジャピ兄弟工房製)の胸像「四季・春」1899年/鋳造他美術工芸(大理石、ブロンズ、木、ガラス)

少女の胸像が付いた卓上時計など、彫刻作品も。ミュシャはロダンなど彫刻家とも交流があったそうで、彫刻も制作しているのですが、展示機会はあまり多くなく、本展は貴重な機会です。

チェコスロヴァキアのコルナ紙幣、郵便切手とデザイン画、1918‐31年/凹版印刷、凸版印刷(紙)

さらに、紙幣や切手にまでミュシャのデザインが使用されました。ミュシャがどれほど人々に支持されていたか、展示を通して時代の空気を知ることができます。

知られざるミュシャの一面

ミュシャの展覧会が頻繁に開催される理由のひとつに、主要作品が版画など複製されるもので数が多いことが挙げられると思います。言い換えると、オリジナルの油彩画など1点しか残っていない作品は、展覧会で見かける機会が少ないです。

展示風景

本展では少年時代のデッサン、友人やその家族をモデルに描いた油彩画、スラヴ叙事詩の習作、ミュシャが撮影した写真など、ミュシャのプライベートにより近い作品が多数展示されています。なかでも私が気になったのが、アルファベットの「J」を装飾した作品です。

デザイン原画「J(ユリンカ、ミュシャの初恋の人)」1874年/鉛筆、水彩(紙)

Jというのは、ミュシャの初恋のひと「ユリエ・フィアロヴァー(愛称ユリンカ、Julinka)」を示しているそうです。1874年ということは、ミュシャが14歳の頃の作品でしょうか。

好きな人の名前をノートの隅に書くような行為には、私以外にも覚えのある人はいらっしゃると思います。ただ文字を書くだけではない繊細な装飾や、おそらく完成していないところに甘酸っぱさを感じ、ミュシャのプライベートを覗き見してしまった気分になりました。


まとめ

展示風景

最初期のデッサンから成功のきっかけとなったポスター、生活を彩る装飾品やパッケージなど、本展では多岐にわたるミュシャの仕事が網羅的に紹介されています。

本展の出品作品は、ミュシャの生家からほど近くに在住する医師、ズデニェク・チマル博士の親子3代にわたるコレクションから厳選されたものです。ミュシャの私的な生活を示す作品や資料も含むチマル・コレクションの日本巡回は、今回で3回目。過去最多となる169点が出品され、チェコ・ミクロフに住んでいた頃に描かれた地元の夫婦の肖像画など、出品されるコレクションの中には日本初公開の作品もあります。

これまでに知る機会の無かった作品に触れ、ミュシャの新たな一面を発見できる展覧会です。


※掲載した写真内の作品は、すべてチマル・コレクション

展覧会情報

ミュシャ展 ~マルチ・アーティストの先駆者~

会場:美術館「えき」KYOTO
会期:2023年2月17日(金)~ 3月26日(日) ※会期中無休
開館時間:午前10時~午後7時30分(入館は閉館の30分前まで)
https://kyoto.wjr-isetan.co.jp/museum/exhibition_2303.html

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明菜

明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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