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2023.4.11

没後30年、色あせないエレガンスを京都で。『オードリー・ヘプバーン写真展 AUDREY in Cinema』

美術館「えき」KYOTOで『オードリー・ヘプバーン写真展 AUDREY in Cinema』が開幕しました。会期は2023年5月14日(土)までです。

オードリー・ヘプバーン(1929-1993)は、「ローマの休日」や「ティファニーで朝食を」などの主演で知られる、世界でもっとも有名と言っても過言ではない女優です。2023年は彼女の没後30年となる節目の年。本展ではこれを機に、彼女が主演した映画をテーマとして、著名な写真家の作品を含む約120点の写真と15点の映画ポスターを展覧します。

『ティファニーで朝食を(1961)より』 mptvimages.com

私も展覧会を訪れ、オードリーの魅力やこの時代の映画のおもしろさに改めて気づくことができました。「ローマの休日」から順に見返している最中です。

この記事では、本展の見どころについて、美術ライターの明菜が紹介していきます。

オードリー・ヘプバーンの魅力とは?

『マイ・フェア・レディ(1964)』より』 Bob Willoughby/mptvimages.com

オードリー・ヘプバーンは1929年5月4日にベルギーの首都ブリュッセルで生まれました。母はオランダの貴族出身、父はアイルランド系イギリス人という家系。バレリーナを夢見る少女でしたが、第二次世界大戦下、ナチス占領下のオランダで命の危機にさらされる日々を過ごしました。

1945年、オランダが解放されるとバレエを再開しますが、170cmという高身長はプリマになるには向かず、夢を断念。その後、ミュージカルのオーディションを受けたことから女優の道に進み、ウィリアム・ワイラー監督の目にとまった22歳の彼女は、「ローマの休日」のアン王女役に抜擢されました。

『ローマの休日(1953)より』 mptvimages.com

同作でアカデミー賞主演女優賞を受賞したオードリーは、「麗しのサブリナ」「ティファニーで朝食を」「シャレード」などの映画に主演し、いずれも大ヒット。作中でのファッションにも注目が集まり、ファッション・アイコンとしても人気を博しました。

平成生まれの私はリアルタイムで彼女の活躍を見てきたわけではなく、先入観で「とにかくものすごい大女優」というイメージを持っていました。ですが、本展で映画のワンシーンやオフショットのような写真を見て、イメージが変わりました。「ローマの休日」のアン王女のように、お茶目でおてんばなところがあり、でもそこがかわいい! というタイプの人なのかな、と感じています。

ところで、「ローマの休日」でジョーが真実の口に手を入れて噛まれたフリをするシーンをご存じでしょうか(改めて聞くのもおかしなくらい有名ですが)。あのシーンはジョー役のグレゴリー・ペックがアドリブを仕かけたなど諸説ありますが、いずれにしろ、オードリーは知らないシナリオだったそうです。

ジョーのドッキリに大慌てして、ネタばらしに心底ほっとした表情をするアン王女の素朴なかわいさが見られるシーンですが、あれはオードリー自身の表情でもあったのだと思います。本展でたくさんの写真を見てオードリーのキュートな性格を知ると、映画を見ているときも演技の中に等身大のオードリーを感じられてより楽しくなります。

世界を魅了する「エレガンス」

『麗しのサブリナ(1954)より』 ©Bud Fraker/ mptvimages.com

会場には「エレガンス」(私の感覚だと「かわいい」)が溢れているので、オードリーをよく知る人にも、あまり親しみがない人にも、ぜひ会場を訪れて楽しんでいただきたいです。

たとえば、ファッション・アイコンとしてのオードリー。「麗しのサブリナ」ではジバンシィのパリ・コレクションから自ら衣装を選びました。黒のトップスに細見の八分丈パンツという格好は「サブリナ・ファッション」としてブームになりましたし、「サブリナ・パンツ」という呼び方もされますよね。「ティファニーで朝食を」で披露した黒のイブニングドレス姿も私たちに強いインパクトを残しています。

『パリの恋人(1957)』より ©Bud Fraker/ mptvimages.com

また、本展では、バド・フレイカー、ボブ・ウィロビー、マーク・ショウ、サンフォード・ロス、レオ・フォックスなど著名な写真家の作品も展示されています。オードリーがモデルとして完璧なポーズを取る写真から、少し気が抜けたオフの一瞬をとらえた写真まで、いろいろな表情の彼女を見ることができました。写真家たちも彼女の魅力に夢中になっていたのではないでしょうか。

展示作品を通して感じたのが、映画の内だけにとどまらないオードリーの魅力です。彼女のちょっとした仕草や笑顔に永遠の「エレガンス」があり、今も私たちを魅了しているのだと感じました。

まとめ

私には大女優のイメージがあるオードリー・ヘプバーンですが、本展を通じ、お茶目でキュートな人柄に触れることができました。約120点の写真を通し、オードリー自身の魅力を感じられる展覧会です。

さらに、会場には映画で使用された音楽が流れています。「ティファニーで朝食を」でオードリー演じるヒロインが歌った「ムーン・リバー」がかかったときは、どうしてか涙がこぼれそうになりました……。

こうして主演映画の写真を展覧すると、また映画を見たい気持ちにもなります。というわけで見返している最中ですが、どれも名作……。この時代の映画が描く人生が好きなのかもしれません。ぜひ、展覧会でオードリーの魅力に触れ、映画を楽しむ機会にもしていただけたらと思います。


▼『ローマの休日』関連記事はこちら。
『ローマの休日』に登場する「真実の口」はミステリアス!?歴史背景と美術解説
https://irohani.art/study/10675/

展覧会情報

展覧会名:オードリー・ヘプバーン写真展 AUDREY in Cinema
会場:美術館「えき」KYOTO
会期:2023年4月1日(土)~5月14日(日) ※会期中無休
開館時間:午前10時~午後7時30分(入館締切は閉館30分前)
入館料:有料
https://kyoto.wjr-isetan.co.jp/museum/exhibition_2304.html

【写真8枚】没後30年、色あせないエレガンスを京都で。『オードリー・ヘプバーン写真展 AUDREY in Cinema』 を詳しく見る
明菜

明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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