EVENT
2023.10.16
大流行した着物 “銘仙(めいせん)”が大集合!『大正の夢 秘密の銘仙ものがたり』展
大正から昭和初期に女学生を中心に大流行し、現代の着物にはない斬新な色柄が多く、見る者、纏う者、その全ての人々の心を魅了させた着物 “銘仙(めいせん)”。
現代では、アンティーク着物ブームで再注目され、その魅力が広く知られるようになり、日本のモダンデザインのひとつとして、海外の国立美術館がコレクションするほど。
そんな銘仙を楽しめる弥生美術館にて開催中の『大正の夢 秘密の銘仙ものがたり』展をご紹介します。
本展について ―銘仙でみるgirl’s History―
アンティーク着物ブームの牽引役として登場した “銘仙(めいせん)”。
大正から昭和初期に女学生を中心に大流行した着物で、現代の着物にはない斬新な色柄が多く、見る者、纏う者、その全ての人々の心を魅了させました。
本展では、銘仙蒐集家・研究家である桐生正子氏の約600点のコレクションから選び抜いた約60点の銘仙を紹介します。また、着物スタイリストの大野らふ氏による当時を再現したコーディネートも必見です。
会場では、4つのカテゴリーに分けて展示さています。
• 日本の伝統文様をアレンジした「Neo Classic」
• 西洋文化の影響を受けたロマンチックな柄「Girlish」
• 働く女性を意識したクールな柄 「Geometric」
• 面白柄では織の技術もアピールできる「kitsch」
100年前の女学生文化は新しいことの連続、伝統的な日本の価値観に西洋の文化が流入し、そんな過渡期に生まれた女性たちのカルチャーを、銘仙を通して紐解いていきます。
大流行した着物 “銘仙(めいせん)”とは?
“銘仙(めいせん)” とは、大正から昭和初期に大流行した絹の着物地のひとつであり、鮮やかな色合いと大胆な柄が特徴的な普段着として楽しめる着物です。
仮織りして型で染めたのち、ほぐして織り直すことから、強い線も、激しい柄も、輪郭線がかすれて生地に馴染み、着る人の顔の邪魔をしないさまざまな工夫が施されています。
銘仙は、養蚕農家の織子がくず糸を使用して自らが着用するものを織られていたことがはじまりです。その滑らかな着心地の良さと軽さ、絹製品としては安価だったことから、明治・大正・昭和と徐々に庶民の間に浸透し、主に女学生の通学着や若い女性のオシャレ着として人気を博しました。
大正末期から昭和初期には、各百貨店が新作銘仙を販売することで売り上げを伸ばし、デパートが富裕層のものから、中産階級まで間口を広げる起爆剤ともなりました。しかし、昭和30年代には洋装が広く定着したことから、ほぼ銘仙の生産は中止となってしまいました。
しかし、2000年頃のアンティーク着物ブームで再注目され、その魅力が広く知られるようになりました。1920年代〜1930年代に花開いた日本のモダンデザインのひとつとして、海外では評価が高まり、イギリス、オランダ、オーストラリア、などの国立美術館などにも所蔵されています。
和×洋の調和と融合が感じられる銘仙
特に筆者が面白いと感じたのは、日本の伝統文様をアレンジした「Neo Classic」や西洋文化の影響を受けたロマンチックな柄の「Girlish」が紹介されているコーナーです。
「Neo Classic」では海外から洋花が輸入されたことから、睡蓮や薔薇などの美しい文様が楽しめるほか、「Girlish」ではアール・ヌーヴォーやアール・デコ、ウィーン分離派、ロシア・アヴァンギャルドなど西洋の芸術運動から影響を受けたであろう柄などが展示されています。
その他にも、日本とアメリカを結ぶ豪華客船「浅間丸」の銘仙や、エリザベス女王の戴冠式を記念したもの、バレリーナやエンジェルなどが描かれたものなどがあります。日本と各国との平和や記念を象徴した文様も見られ、日本に西洋文化が受け入れられていることがわかる柄をご覧になれます。
数々の銘仙から和と洋の調和と融合が感じられ、鑑賞者をわくわくさせること間違いなしです!
最後に
近年、正統派、カジュアル、和洋mixなどの着物女子をSNSで数多く見かけますが、その多くは着物を元気に、楽しく着ている姿が印象的です。
アンティーク着物の旗振り役だった銘仙は、ポップな色や斬新な柄で、現代の着物女子たちだけでなく、明治・大正・昭和の若い女性をも虜にしました。
女性が社会に進出するなか、日常生活において活動もしやすく、カジュアルにお洒落であり、自由な空気をまとった銘仙は、当時の女性たちの「戦闘服」の役割を果たしたことが伺えます。
本展は、2022年8月伊勢丹新宿店を皮切りに、2022年9〜11月岡山・新見美術館にて好評を博した「大正の夢 秘密の銘 仙ものがたり」展」がパワーアップして再構成されたものです。
11月15日(水)からは中間展示替えをし、さらに鮮やかな色合いだけでなく、斬新なデザインの装いが会場を彩り、鑑賞者を楽しませてくれることでしょう。
また、会期中には銘仙蒐集家・研究家である桐生正子氏や着物スタイリストの大野らふ氏によるギャラリートークが開催されているほか、会場では展覧会関連書籍はもちろん、銘仙やアンティーク着物のハギレなどが購入できるので、この機会に身近に着物を楽しんでみてはいかがでしょうか?
(取材・撮影・文:新麻記子)
展覧会情報
アンティーク着物の魅力再発見!『大正の夢 秘密の銘仙ものがたり』展
会期:2023年9月30日(土)~12月24日(日)
会場 弥生美術館 1階~2階
〒113-0032 文京区弥生 2-4-3
休館日:毎週月曜、11月14日(火)
*ただし、10月9日(月祝)開館、翌10日(火)休館
*11月14日(火)は中間展示替えのため臨時休館
開館時間:10:00~17:00(入館は 16:30 まで)
★全館写真撮影 OK!
★同時開催 弥生美術館3階会場 高畠華宵展
竹久夢二美術館 明治・大正・昭和 レコードの時代と夢二の時代展
公式サイト: アンティーク着物の魅力再発見!『大正の夢 秘密の銘仙ものがたり』展
画像ギャラリー
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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。
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