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2024.1.9
意外?女性が活躍した明治〜昭和の大阪画壇に迫る『決定版! 女性画家たちの大阪』
大阪中之島美術館で『決定版! 女性画家たちの大阪』が開幕しました。会期は2024年2月25日(日)までです。
歌人の吉井勇が
女絵師女うたびとなど多く浪華は春も早く来るらし
と詠んだように、約100年前の大阪では女性画家たちが大いに活躍していました。本展では、島成園をはじめとする大阪ゆかりの女性画家たち59名の作品計186点(通期85点、前期49点、後期52点)と豊富な資料により、彼女たちの活躍の全貌を探ります。
お稽古事や趣味にとどまらず、画家として社会に進出した、あるいは進出しようともがいた女性たち。自立しようとする強いエネルギーと、自分の人生を思うがままに決定して生きる難しさを痛感しました。
現代は価値観が多様化してきていますが、しかし旧来の価値観に圧迫されて生きづらさを感じることはありませんか。明治~昭和の女性画家たちの苦悩も、本質は同じところにあるのかもしれません。
ありとあらゆる立場の現代人におすすめしたい本展の見どころを、美術ライターの明菜が紹介していきます。
20歳で文展に入選した島成園
女性画家たちの活躍のきっかけとなったのが、島成園(しま・せいえん、1892-1970)です。図案家の兄の仕事を手伝いながら絵を独習し、北野恒富など画家仲間との交流も経て、大正元年(1912)、20歳という若さで第6回文展に入選しました。
当時は京都の上村松園、東京の池田蕉園という日本画家が主に美人画で活躍していた時代。大阪の成園を合わせて「三都の三園」と称され、注目を集めたそうです。
前期展示風景(手前:島成園《祭りのよそおい》大正2年(1913)大阪中之島美術館【通期展示】)
翌年の第7回文展に入選した《祭りのよそおい》は本展でも展示され、特に注目したい作品です。
成園は女性を描いた作品が多く、どれもがほのかな「色気」をまとっているように感じました。「媚」とは異なるものの、女性たちの豊かな表情や仕草を描き出しているように思います。
それだけでなく、愛らしい子どもを描いた作品や、母の愛情を主題とする作品も。さらには、《無題》や《伽羅の薫》のような印象的な作品もあります。
島成園《無題》大正7年(1918) 大阪市立美術館【通期展示】
《無題》は自分をモデルにして、顔にアザがある女性を描いたそうです。本人にアザは無いのですが、当時、26歳の成園の求婚広告だと揶揄する報道がありました。
そうした浅はかな言葉たちが、彼女の心にアザを作るのでは? と思わずにはいられませんでした。若くして高い評価を得た一方、当時の女性であるがゆえの難しい状況もあり、目立つ立場の彼女には誹謗中傷もあったでしょう。
「痣のある女の運命を呪ひ世を呪ふ心持ちを描いた」
と語る成園の本音が、作品の圧力となって鑑賞者にも伝わるように思います。
父の希望もあり、28歳のときに成園は縁談を受け入れ結婚しました。制作環境に大きな変化は無かったものの、結婚後は思うように制作できず苦しんだそうです。《囃子》が最後の入選作となり、あっさりした作風へ変化します。
前期展示風景(島成園《お客様(原題・祭りの客)》昭和4年(1929)髙島屋史料館【前期展示】)
《お客様(原題・祭りの客)》は、第10回帝展のために描いた作品ですが、残念ながら落選となりました。本展では落選作も展示され、改めて画業を捉え直そうとする展覧会の姿勢を感じられます。
女性画家たちの進出
前期展示風景(女四人の会(大阪三越) 大正5年 左から岡本更園、吉岡(木谷)千種、島成園、松本華羊)
成園の文展初入選のニュースは、絵を描く若い女性たちを大いに鼓舞しました。成園に続き、大阪に縁のある岡本更園(1895-不詳)、木谷(旧姓・吉岡)千種(1895-1947)、松本華羊(1893-1961)が続々と文展に入選します。
前期展示風景(手前:岡本更園《秋のうた》大正3年(1914)個人蔵【通期展示】)
岡本更園の第8回文展入選作《秋のうた》は、本展でも展示されています。長く所在が不明だったそうですが、本展で久々の展示となりました。
鏡を見て描いた自画像であるという本作は、太い眉や目、口など顔の描き方に師である岡本大更の影響が現れているそうです。その後、大正8年に上京して鏑木清方に入門したり、翌年には京都の西山翠嶂に師事したりと、精力的に絵を学んだ様子が伺えます。
木谷千種《をんごく》大正7年(1918) 大阪中之島美術館【前期展示】
木谷(吉岡)千種は、東京で池田蕉園に師事したあとに大阪へ戻り、北野恒富や野田九浦、京都の菊池契月に学びました。大阪の伝統行事や人形浄瑠璃などの画題を好んだそうで、情感豊かな作品が多い印象です。
画塾「八千草会」では多くの後進を育て、彼女に学んだ女性画家たちの作品も本展で鑑賞することができます。
前期展示風景(手前:松本華羊《殉教(伴天連お春)》大正7年頃(1918)福富太郎コレクション資料室【通期展示】)
東京出身の松本華羊は池田蕉園と尾竹竹坡に学び、大正4年の来阪以降、大阪画壇の一員として活動しました。
20代前半で文展に入選した彼女たちは、井原西鶴の『好色五人女』を研究し、それぞれの画家が作中のキャラクターから1人を選んで表現した作品を、大正5年の「女四人の会」展で発表しました。出品作である島成園《西鶴のおまん》、岡本更園《西鶴のお夏》は、本展でも展示されています。
成園の文展初入選は同世代の女性画家たちを刺激し、後の女性画家たちも続々と台頭して、大きな流れとなったように思います。現代よりも男女の格差が大きかった時代において、絵筆で世に出ていこう、自立しようとする女性たちの強いエネルギーを感じられました。
南画・文人画における女性画家たち
日本画のみならず、中国の南宋画に由来する日本の南画(文人画)でも、西日本における中心地であった大阪では、女性画家たちが大いに活躍しました。水墨山水画に漢詩などの賛を加える教養が必要な絵画ですが、画壇やヒエラルキーが無く、古くから女性画家が活躍していたそうです。
近代大阪を代表する女性南画家としては、河邊青蘭が知られています。存命中から高く評価され、また彼女の画塾は池田青溪や渡辺花仙など多くの後進を輩出しました。
前期展示風景(手前:融紅鸞《熱帯魚》昭和14年(1939)関和男氏蔵【前期展示】)
「あんさん別れなはれ」の決め台詞で有名な、テレビやラジオの人生相談回答者として活躍した融紅鸞の南画も展示されます。《熱帯魚》の画題は南画としても日本美術としても珍しいですが、花の絵をよく描いた紅鸞にも珍しいとのこと。第1回乾坤社展に女性として唯一入選し、実力派の画家として期待されていました。
まとめ
この記事では挙げられなかった画家も多く、また日本画や南画だけでなく、さまざまな分野で数多くの女性画家たちが活動しました。
しかし多くの女性画家は一時的な活動で終わったそうです。結婚や出産、家事、育児、介護など、現代にも通じる問題ではありますが、より封建的な社会通念や世界大戦などがあり、女性が芸術家として長く活動することは困難でした。
本展では「明治から昭和にかけての大阪の女性画家」がフィーチャーされていますが、現代人にも響くものがあるはずです。彼女たちの生き様が滲む作品は、今を生きる私たちを励ましてくれるようにも思います。
展覧会情報
決定版! 女性画家たちの大阪
会場:大阪中之島美術館 4階展示室
会期:2023年12月23日(土) – 2024年2月25日(日)
前期:12月23日(土) – 2024年1月21日(日) 後期:1月23日(火) – 2月25日(日)
*月曜日(1/8、2/12を除く)、12/31、1/1休館
開館時間:10:00 – 17:00(入場は16:30まで)
*2月10日 – 2月25日の期間は10:00 – 18:00(入場は17:30まで)
展覧会公式サイト:決定版! 女性画家たちの大阪
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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