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EVENT

2024.3.11

【東京3/30〜】サエボーグと津田道子の新作展示「Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展」

東京都現代美術館で「サエボーグ『I WAS MADE FOR LOVING YOU』/津田道子『Life is Delaying 人生はちょっと遅れてくる』Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展」が開催されます。会期は3月30日(土)〜7月7日(日)です。

サエボーグ「Ultra Unreal」展示風景(シドニー現代美術館、2022) 撮影:アレックス・デイヴィス “Ultra Unreal” installation view at Museum of Contemporary Art Australia, Sydney, 2022 Photo: Alex Davies

東京都とトーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)が実施する「Tokyo Contemporary Art Award(TCAA)」は、中堅アーティストを対象に、受賞から複数年にわたる継続的支援によって更なる飛躍を促すことを目的とした現代美術の賞です。4回目となる2022年1月には、受賞者にサエボーグさん、津田道子さんの2名が選出されました。

津田道子《東京仕草》 2021「Back TOKYO Forth」展示風景(東京国際クルーズターミナル、 2021) 撮影:Akira Arai(Nacása & Partners Inc.) 𝘛𝘰𝘬𝘺𝘰 𝘉𝘦𝘩𝘢𝘷𝘪𝘰𝘳, 2021, installation view at “Back TOKYO Forth,” Tokyo International Cruise Terminal, 2021 Photo: Akira Arai(Nacása & Partners Inc.)

賞金授与や翌年の海外での活動支援など約2年の支援期間を経て、今回、それぞれによる個展が実現します。今後の活動にも注目したい2名の現在地を観ることができる、美術好きにとっても嬉しい機会です。

また会期末には、各受賞者の過去作や本展のための新作を掲載した非売品のモノグラフ(作品集)の発行が予定されています。

見どころ①サエボーグ「I WAS MADE FOR LOVING YOU」

撮影:ZIGEN

サエボーグさんはラテックス製のボディスーツを自作し、パフォーマンスとインスタレーションを展開しています。半分人間、半分玩具の造形は、ときに愉快で楽しそうにも見えるものの、私たち人間が動物に向けている無意識の残酷性に気づいてハッとさせられることも。

「あいちトリエンナーレ2019 情の時代『House of L』」公演風景(愛知県芸術劇場、名古屋) 撮影:蓮沼昌宏 “House of L” performance at Aichi Triennale 2019: Taming Y/Our Passion, Aichi Prefectural Art Theatre, Nagoya Photo: Masahiro Hasunuma

本展ではこれまでのパフォーマンスを土台に、人間と動物の関係性というテーマを踏襲しつつ、「ケア」の視点に立った作品を発表するそうです。「ここで皆さんには家畜キャラクターに変身してもらい、ライフサイズの玩具のような牧場空間で、普段とは違う、動物的な体験をしてもらうことを構想しています」というサエボーグさんのコメントのとおり、鑑賞者は展示室でパフォーマンスの一部を担います。

「Dark Mofo 2019『Pigpen』」公演風景(Avalon Theatre、ホバート、オーストラリア) 撮影:Dark Mofo 2019 “Pigpen” performance at Dark Mofo 2019, Avalon Theatre, Hobart, Australia Photo: Dark Mofo 2019

本展では美術館の構造を利用し、観る側が観られる側に回るような仕掛けを試みるとのこと。私も体験してみたい楽しみな気持ちと、今まで目をつぶってきた現実に直面するのではないかという怖さの両方があり、忘れられない展覧会になりそうです。

「Cycle of L」公演風景(高知県立美術館、2020) 撮影:釣井泰輔 “Cycle of L” performance at The Museum of Art, Kochi, 2020 Photo: Taisuke Tsurui

見どころ②津田道子「Life is Delaying 人生はちょっと遅れてくる」

撮影:奥祐司

津田道子さんは映像メディアを用いて、インスタレーションやパフォーマンスなど多様な形態で制作を行っています。映像装置とシンプルな構造物を配置した虚実入り混じる作品空間は、鑑賞者の知覚や身体感覚を刺激します。

《東京仕草》 2021/2023「ICC アニュアル 2023 ものごとのかたち」展示風景(NTT インターコミュニケーション・センター [ICC]、東京) 撮影:木奥惠三 画像提供:NTT インターコミュニケーション・センター [ICC] 𝘛𝘰𝘬𝘺𝘰 𝘚𝘩𝘪𝘨𝘶𝘴𝘢, 2021/2023, installation view at “ICC Annual 2023: Shapes of Things,” NTT InterCommunication Center [ICC], Tokyo Photo: KIOKU Keizo Photo Courtesy: NTT InterCommunication Center [ICC]

津田さんは「コロナ禍に身体への関心が大きく変化したのは、私だけではないと思います。例えば家族のような最小単位の社会においても、他者との距離を意識することが身体の振る舞いに関わっていることを経験しました」とコメントを寄せています。

本展では、ご自身の幼少期にビデオカメラが家に来て、最初に撮影されたホームビデオから着想した新作を中心に展示されるとのこと。

《so far, not far》よりスチル画像 2023 Still from 𝘴𝘰 𝘧𝘢𝘳, 𝘯𝘰𝘵 𝘧𝘢𝘳, 2023

作品は個人的な記録と言えるホームビデオから、集団の中での人々の立ち位置やシステムへとその領域を広げていくそうです。鑑賞者と直接関係の無い家族の出来事が、どのように自分事として響いてくるのか想像できず楽しみです。

《あなたは、翌日私に会いにそこに戻ってくるでしょう。》 2016「オープン・スペース 2016 メディア・コンシャス」展示風景(NTT インターコミュニケーション・センター [ICC]、東京) 撮影:山本糾 𝘠𝘰𝘶 𝘸𝘰𝘶𝘭𝘥 𝘤𝘰𝘮𝘦 𝘣𝘢𝘤𝘬 𝘵𝘩𝘦𝘳𝘦 𝘵𝘰 𝘴𝘦𝘦 𝘮𝘦 𝘢𝘨𝘢𝘪𝘯 𝘵𝘩𝘦 𝘧𝘰𝘭𝘭𝘰𝘸𝘪𝘯𝘨 𝘥𝘢𝘺., 2016, installation view at “Open Space 2016: Media Conscious,” NTT Inter Communication Center [ICC], Tokyo Photo: Tadasu Yamamoto

見どころ③鑑賞者のふるまいが作品の一部に

ふたつの展覧会は隣り合い、同時に開催されますが、制作に対する関心もアプローチも異なる独立した個展です。しかし、展示室内で鑑賞者のふるまいが作品の一部になるという共通点があります。


会期中には展示のほか、パフォーマンスなどのプログラムが開催され、展示空間と鑑賞者の身体を架橋するような体験へと誘うとのこと。おふたりとも「身体」をひとつの起点としており、作品には身体表現の実践を欠かすことができません。

作品を能動的に鑑賞し、自身に向き合ったり、他者との関係性や社会の中の自分を見つめたりする機会にしてはいかがでしょうか。

展覧会情報

サエボーグ「I WAS MADE FOR LOVING YOU」/津田道子「Life is Delaying 人生はちょっと遅れてくる」Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展

会場:東京都現代美術館 企画展示室 3F
会期:2024年3月30日(土)〜7月7日(日)
開館時間:10:00-18:00
休館日:月曜日(4月29日、5月6日は開館)、4月30日、5月7日
主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 トーキョーアーツアンドスペース・東京都現代美術館
入場料:無料
公式サイト: Tokyo Contemporary Art Award(TCAA)

関連イベント アーティスト・トーク

TCAA2022-2024選考委員と出展作家が選考を振り返りながら本展出展作品や今後の展開について話すイベントも予定されています。

日時:2024年3月30日(土)14:00-15:30(開場13:30)

出演(敬称略):
サエボーグ、津田道子、
ソフィア・ヘルナンデス・チョン・クイ(キュレーター/TCAA 2022-2024選考委員)
モデレーター
塩見有子(特定非営利活動法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT]ディレクター/TCAA選考会運営事務局)

定員:200名

申込締切:3月29日(金)

会場:東京都現代美術館 地下2階講堂
※入場無料・要事前申込・先着順/日英同時通訳あり

申込締切日までに、予約フォームよりお申込みください。
詳細・予約フォーム

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明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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