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2024.8.30
戦前から戦後まで駆け抜けた瑛九の全貌を明らかにする関東では13年ぶりの回顧展
戦前、戦後の日本の前衛美術における重要作家、瑛九の回顧展が、横須賀美術館で2024年9月14日(土)〜2024年11月4日(月)に開催されます。油彩画を中心に、写真作品、銅版画やリトグラフなど、約100点を一堂に展示し、瑛九の軌跡を展覧します。
目次
瑛九は、油彩画だけでなく、写真や版画などのさまざまな分野で活動を展開し、その作風も印象派やシュルレアリスム、キュビスムなどの影響を受けながら絶えず進化を続け、新たな表現を模索し続けました。
彼は常に批判的な視点を持ち、美術や社会に関する評論を精力的に行い、「デモクラート美術家協会」の設立にも関わり、指導者としても活躍しました。彼の存在と作品は、同時代の芸術家や後進に多大な影響を与えました。
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本展では、初期の作品から晩年の作品に至るまで、油彩画を中心に、「フォト・デッサン」による写真作品や銅版画、リトグラフなど、各分野の代表作約100点が一堂に会します。瑛九が追求し続けた理想の美を通して、彼が戦前・戦後を駆け抜けた軌跡をご紹介します。
瑛九とは
宮崎県に生まれた瑛九(えいきゅう、本名:杉田秀夫、1911年-1960年)は、日本の画家、写真家、版画家で、戦前・戦後の日本の前衛美術における重要な存在です。
彼の創作活動は多岐にわたり、油彩画をはじめ、写真(特に「フォト・デッサン」と呼ばれる技法)、版画(銅版画やリトグラフなど)など、さまざまなメディアで作品を制作しました。瑛九は、印象派やシュルレアリスム、キュビスムなど、ヨーロッパの前衛芸術の影響を受けながら、独自の表現を追求し続けました。特に晩年に達した点描技法による作品は、微細な点を用いた緻密な描写が特徴です。
また、彼は芸術家としてだけでなく、評論家としても活動し、美術や社会に対する批評を積極的に行いました。1947年には「デモクラート美術家協会」を結成し、戦後日本の芸術家たちを牽引する存在となりました。
瑛九は、理想の美を追い求める姿勢を貫き、彼の作品と思想は、同時代の芸術家たちや後の世代に大きな影響を与えました。49歳で早逝しましたが、その創造力と表現力は今も評価され続けています。
展覧会の見どころ
展覧会の見どころを章ごとにご紹介します。
見どころ1: 13年ぶりに関東で開催される回顧展
関東の美術館で開催される瑛九の全画業を紹介する回顧展は、「生誕100年記念 瑛九展」(2011年、埼玉県立近代美術館・うらわ美術館)以来、13年ぶりの大規模な展覧会です。
今回の回顧展では、彼のデビュー作である『眠りの理由』をはじめ、幅3メートルを超える大作《カオス》、そして彼が亡くなる直前に手掛けた絶筆作品《つばさ》など、初期から晩年に至るまでの代表的な作品が約100点展示されます。
見どころ2: 油彩画、写真、コラージュ、エッチング、リトグラフなど多岐にわたる作品群
瑛九は、油彩画だけでなく、写真、版画、コラージュなど、多岐にわたる技法を駆使して多様な表現を探求した芸術家です。彼の写真作品は「フォト・デッサン」と呼ばれ、独特の感性で現実を切り取る手法が特徴的です。
また、エッチングやリトグラフといった版画技法も取り入れ、さらにコラージュを用いて、異なる素材や要素を組み合わせることで新たな表現の可能性を模索しました。
見どころ3: 晩年に到達した「点描」作品の展示
瑛九が晩年に到達した「点描」技法は、彼の芸術的探求の集大成ともいえる重要な表現手法です。この技法は、無数の微細な点を画面全体に精密に配置し、色彩や形態を構築することで、独特の視覚的な密度と繊細さを生み出します。
点描による作品群は、瑛九が理想とする美を追求し続けた結果、到達した高度な表現技法であり、彼の作品の中でも特に評価が高いものです。本展では、この「点描」技法による代表的な作品を一挙に7点展示し、その魅力を堪能できる貴重な機会を提供します。
瑛九 《青の中の黄色い丸》 1957-58年 埼玉県立近代美術館蔵
開催概要
展覧会名 瑛九 ―まなざしのその先に―
会期 2024年9月14日(土)〜2024年11月4日(月)
休館日 10月7日(月)
会場 横須賀美術館
〒239-0813 神奈川県横須賀市鴨居4丁目1番地
開館時間 10:00~18:00
入館料
一般 1,300円、高校生・大学生・65歳以上 1,100円、中学生以下無料
※所蔵品展、谷内六郎館も観覧できます。
※地階で開催する企画展「運慶展」の観覧料は別途必要となります。
※高校生(市内在住または在学に限る)は無料
※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方と 付添1名様は無料
アクセス
京浜急行線「馬堀海岸」駅 1番乗り場から京急バス
「観音崎」行(須24、馬24)「ラビスタ観音崎テラス・横須賀美術館前」(約10分)下車、徒歩約2分
京浜急行線「浦賀」駅 1番乗り場から京急バス
「観音崎」行(浦3)終点「観音崎」(約15分)下車、徒歩約5分
JR横須賀線「横須賀」駅 3番乗り場から京急バス
「観音崎」行(須24)「ラビスタ観音崎テラス・横須賀美術館前」(約35分)下車、徒歩約2分
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東京美術館巡りというSNSアカウントの中の人をやっております。サラリーマンのかたわら、お休みの日には、美術館巡りにいそしんでおります。もともとミーハーなので、国内外の古典的なオールドマスターが好きでしたが、去年あたりから現代アートもたしなむようになり、今が割と雑食色が強いです。
東京美術館巡りというSNSアカウントの中の人をやっております。サラリーマンのかたわら、お休みの日には、美術館巡りにいそしんでおります。もともとミーハーなので、国内外の古典的なオールドマスターが好きでしたが、去年あたりから現代アートもたしなむようになり、今が割と雑食色が強いです。
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