EVENT
2024.10.16
【大阪】「塩田千春 つながる私(アイ)」が大阪中之島美術館で開催!
現在、ベルリンを拠点に国内外で精力的に制作活動を展開する現代アーティストの塩田千春さん。
大量の糸で空間を編み上げる大規模なインスタレーションをはじめ、自身の精神性に深く根ざした作品づくりを行っています。彼女が手がける作品には糸だけでなく、鍵、紙、船、窓、扉、衣服など、じつにさまざまな私たちの身近な素材を使用しています。
現在、彼女が生まれ育った大阪で16年ぶりに開催されている、大阪中之島美術館にて開催中の大規模個展「塩田千春 つながる私(アイ)」をご紹介します。
見出し|塩田千春(しおた・ちはる)とは?
1972年、大阪府生まれ、ベルリン在住。国際的に活躍する現代アーティストの塩田千春。
生と死という人間の根源的な問題に向き合い、「生きることとは何か」、「存在とは何か」を探求しつつ、その場所やものに宿る記憶といった「不在の中の存在感」というテーマに向き合い、糸で紡ぐ大規模なインスタレーションを中心に、立体作品、写真、映像など多様な手法を用いた作品を制作しています。
彼女の作品は、言葉や文化的歴史的背景、政治・社会状況の違いを越えて、世界各国の鑑賞者に感動を与え、なかでも糸で空間を埋め尽くすほど全体に張り巡らせた没入型のダイナミックなインスタレーションは、彼女の代表的なシリーズとなっています。
2008年に芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。日本では2001年の第1回横浜トリエンナーレに出展した《皮膚からの記憶》で注目を集め、15年には第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館代表を務め、これまでに世界各地の個展のほか、250本以上の展覧会に参加し、世界各地で作品を発表しています。
本展覧会について
本展覧会は、全世界を襲った感染症の蔓延を経験した私たちが、否応なしに意識した他者との多様な「つながり」をテーマとし、3つの【アイ】-「私/I」、「目/EYE」、「愛/ai」から、自身を通じて、目を通じて、愛を通じて、私たちはさまざまな人や物のつながっているということを伝えています。
会場では、大規模なインスタレーション6点を中心に、ドローイング19点、タブロー3点、立体作品1点、小説家・多和田葉子が新聞で連載している『研修生(プラクティカンティン)』のために描いた挿絵原画(会期末までに361点を展示予定)を展示します。
作品には、糸、紙、衣服などのアイテムが使用されており、それらの意味なども取り上げながら、展示作品を絡めてご紹介したいと思います。
彼女の芸術活動を象徴する重要なモチーフの糸
空間を覆い尽くすだけでなく、吊るしたり、絡めたり、塩田作品においてなくてはならない存在の糸。
本展覧会においてもほとんどの展示作品が、塩田さんがモチーフとして使用している糸が施されており、絡まり、ほどけ、切れ、結ばれる…糸はまるで人間関係のつながりをあらわしているかのようです。
また、報道内覧会では塩田千春さんは「赤という色は血液などの生命を表すだけでなく、血縁のほかに“赤い糸”という人間関係とも考えることもできる」と語っていました。
会場では、赤い糸を使用した作品が数多く展示されていましたが、脳の神経細胞ニューロンのように、白い糸で空間全体が編み込まれた、生命と記憶の循環をあらわした《巡る記憶》(2022/2024)が印象的でした。
作品に目をこらすと隙間から水滴がポタポタと水盤に落ちて一体化し、目には見えない蒸気となって立ち上がっていき、再びその水滴がポタポタと水盤に落ちるというサイクルを繰り返しているかのようです。
生命の源であり循環するエネルギーを象徴する水は、人と人のつながりをあらわしており、ここにはいない人々の記憶が糸によってつながれて、私達の目の前に「不在の中の存在」として示されています。
私たちも日常的に使用している紙
塩田作品において、なくてはならない存在の糸に合わせて、一緒に使用されることもある紙。
紙は風化しやすい素材であり、その紙が持っている特性を生かし、時間の経過や記憶の曖昧さを表現しています。加えて、人間の体験、記録、思考を視覚化するための媒体としても機能し、彼女の作品において重要な要素となっているといえるでしょう。
会場では、本展のキーワード“つながる”をテーマに《つながる輪》(2024)が展示されています。
一般公募で集めた“つながる”をテーマに1500通以上のテキストが使用されていますので、ぜひ作品に近づいてメッセージを読みながら鑑賞してみてください。
それぞれのテキストには、さまざまな人々の、内に秘めた「つながり」への思いが込められており、塩田さんの糸により見えるかたちで掲示されることで、糸を通じてその場にいない誰かと鑑賞者を繋げています。
第二の皮膚とされている衣服
森美術館の「魂がふるえる」において展示壁に「第一の皮膚は人の皮膚。第二の皮膚は衣服。だとしたら第三の皮膚は居住空間、人間のからだをとり囲む壁やドアや窓ではないのか」という印象的なフレーズが掲示されていました。
塩田作品に度々登場するモチーフであるドレス(衣服)は、第二の皮膚として存在させることで、「不在の中の存在」であることを語りかけてきます。第二の皮膚として存在させることで、「不在の中の存在」であることを語りかけてきます。
会場では、赤いドレスと糸で構成されるインスタレーション《インターナルライン》(2022/2024)とドレスと5つのオブジェが回転するインスタレーション《多様な現実》(2022/2024)が展示されています。
展覧会情報
「塩田千春 つながる私(アイ)」
会期:2024年9月14日(土)– 12月1日(日)
会場:大阪中之島美術館 5階展示室
時間:10:00 – 17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜日、10/15(火)、11/5(火)
*10/14(月・祝)、11/4(月・休)は開館
HP:「塩田千春 つながる私(アイ)」
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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。
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