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EVENT

2025.4.21

京都国立博物館『日本、美のるつぼ』国宝19件を含む200件が集うオールジャンル展覧会

「異文化の交流」を切り口に、日本美術の歴史を振り返る大阪・関西万博開催記念 特別展『日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―』が、京都国立博物館で開催されます。会期は2025年4月19日(土)〜6月15日(日)です。

富嶽三十六景 神奈川沖浪裏 葛飾北斎画 江戸時代 天保2年(1831)頃 山口県立萩美術館・浦上記念館所蔵 [前期展示 ※後期は和泉市久保惣記念美術館所蔵品を展示]富嶽三十六景 神奈川沖浪裏 葛飾北斎画 江戸時代 天保2年(1831)頃 山口県立萩美術館・浦上記念館所蔵 [前期展示 ※後期は和泉市久保惣記念美術館所蔵品を展示]

大阪・関西万博の開催を記念する本展は、なんと「オールジャンル展覧会」。弥生・古墳時代から明治期までの絵画、彫刻、書跡、工芸品など、200件もの日本美術の至宝が一堂に会します。

古くから、日本列島では海を介した往来によって、さまざまな異文化がもたらされてきました。まるで「るつぼ」のように多様な文化が溶け合う日本では、そうした出会いをきっかけに、新たな美が生み出されてきました。

重要文化財 三彩蔵骨器 和歌山県橋本市名古曽古墓出土 奈良時代 8世紀 京都国立博物館所蔵 [通期展示]重要文化財 三彩蔵骨器 和歌山県橋本市名古曽古墓出土 奈良時代 8世紀 京都国立博物館所蔵 [通期展示]

本展では、国宝19件、重要文化財53件を含む200件の文化財を紹介。多彩な作品を通じて、日本美術に秘められた異文化交流の軌跡をたどります。

見どころ①日本から世界へ。葛飾北斎、俵屋宗達の名品が一堂に

「万国博覧会と日本美術」を掲げるプロローグでは、「世界に見られた日本美術」と「世界に見せたかった日本美術」を切り口に、明治期の文化的な国際交流に焦点を当てます。

富嶽三十六景 凱風快晴 葛飾北斎画 江戸時代 天保2年(1831)頃 山口県立萩美術館・浦上記念館所蔵 [前期展示 ※後期は和泉市久保惣記念美術館所蔵品を展示]富嶽三十六景 凱風快晴 葛飾北斎画 江戸時代 天保2年(1831)頃 山口県立萩美術館・浦上記念館所蔵 [前期展示 ※後期は和泉市久保惣記念美術館所蔵品を展示]

日本が文明開花のただなかにあった頃、廃刀令や洋装のために無用となった刀装具、印籠、根付、浮世絵などが西洋に流出。こうした品々は西洋で人気となり、特にパリでは日本ブームが起きていました。

特に注目を集めたのが、葛飾北斎です。浮世絵は江戸時代の日本では「娯楽品」でしたが、西洋では「芸術」として高く評価されました。北斎の浮世絵版画はゴッホやドビュッシー、クローデルなどの芸術家たちにも影響を与えます。

国宝 風神雷神図屏風 俵屋宗達筆 江戸時代 17世紀 京都・建仁寺所蔵 [通期展示]国宝 風神雷神図屏風 俵屋宗達筆 江戸時代 17世紀 京都・建仁寺所蔵 [通期展示]

光琳風の作品も欧米で人気を博し、日本でも「琳派」という概念が形成されました。本展では、日本から海外に名を轟かせた芸術家たちの作品を見ることができます。

見どころ②海外から日本へ。模倣と改造で発展する文化

大陸との往来が盛んになった弥生時代以降、さまざまな技術や学問、文化が日本にもたらされます。日本美術はそれらから大きな影響を受けながら発展していきました。

国宝 宝相華迦陵頻伽蒔絵𡑮冊子箱 平安時代 延喜19年(919) 京都・仁和寺所蔵 [通期展示]国宝 宝相華迦陵頻伽蒔絵𡑮冊子箱 平安時代 延喜19年(919) 京都・仁和寺所蔵 [通期展示]

大陸文化の渡来を象徴する作品のひとつが、《宝相華迦陵頻伽蒔絵𡑮冊子箱》です。本作は醍醐天皇が経典を収めさせた箱で、蒔絵で迦陵頻伽(かりょうびんが)が描かれています。

迦陵頻伽は上半身は人、下半身は鳥の姿をしている想像上の生き物で、西アジアで誕生しました。自動車も飛行機もインターネットも無い時代、日本との間に横たわる距離を想像すると、異文化交流のスケールに目眩がするのでは。

重要文化財 鳥獣文様綴織陣羽織 豊臣秀吉所用 桃山時代 16世紀 京都・高台寺所蔵 [4月19日~5月11日展示]重要文化財 鳥獣文様綴織陣羽織 豊臣秀吉所用 桃山時代 16世紀 京都・高台寺所蔵 [4月19日~5月11日展示]

他にも、大航海時代にもたらされた織物で作られた豊臣秀吉の陣羽織《鳥獣文様綴織陣羽織》など、海外に由来する文化財も数多く展示。意外なルーツを持つ作品にも出会えるかもしれません。

見どころ③国宝19件、重要文化財53件を含む充実の展示

国宝 華厳宗祖師絵伝 義湘絵 巻第二(部分) 鎌倉時代 13世紀 京都・高山寺所蔵 [通期展示 ※巻替あり]国宝 華厳宗祖師絵伝 義湘絵 巻第二(部分) 鎌倉時代 13世紀 京都・高山寺所蔵 [通期展示 ※巻替あり]

本展には国宝19件、重要文化財53件を含む200件が出品。たくさんの貴重な作品を鑑賞でき、大満足の展示になりそうです。

うち、《伎楽面 酔胡王》と《旭彩山桜文花瓶》は、新たに国宝・重要文化財に指定されることが決まった作品です。どんな作品なのか、会場でじっくり鑑賞してみましょう。

重要美術品 埴輪 鍬を担ぐ男子 伝群馬県太田市脇屋町出土 古墳時代 6世紀 京都国立博物館所蔵 [通期展示]重要美術品 埴輪 鍬を担ぐ男子 伝群馬県太田市脇屋町出土 古墳時代 6世紀 京都国立博物館所蔵 [通期展示]

さて、本展エピローグのテーマは「異文化を越えるのは、誰?」です。世界の分断が深刻化する今だからこそ、異文化交流の日本美術史から学べることは多いのではないでしょうか。

展覧会情報

特別展「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」特別展「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」

大阪・関西万博開催記念
特別展「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」

会場:京都国立博物館 平成知新館

会期:2025年4月19日(土)〜6月15日(日)

[主な展示替]
前期展示:4月19日(土)〜5月18日(日)
後期展示:5月20日(火)~6月15日(日)
※会期中、一部の作品は上記以外にも展示替あり

休館日:月曜日
※ただし、5月5日(月・祝)は開館、5月7日(水)は休館。

開館時間:午前9時~午後5時30分
※金曜日は午後8時まで(入館は各閉館の30分前まで)

展覧会公式サイト:特別展「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」

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明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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