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EVENT

2025.5.6

泉屋博古館がリニューアルオープン!展示もミュージアムグッズも魅力的

あっという間に4月が終わり、気力だけで乗り切る日々に、そろそろ限界が…。そんなとき、ほっとひと息つける美術館を見つけました。

1年の改修工事を経て、2025年4月26日(土)にリニューアルオープンした、泉屋博古館(せんおくはくこかん)です。

中庭

住友家旧蔵の美術品を保存・公開する泉屋博古館が開館したのは、1970年、1回目の大阪万博イヤーのことでした。大きな改修は今回が初めてで、歴史的な建築でもある建物は残したまま、美術館としての機能を充実させました。

実際に取材して、落ち着いた静かな空間で作品を"愛でる"ことができる、プライベートな雰囲気をとても心地よく感じました。なので正直、あんまり教えたくないんですよね…。「自分だけが知ってる秘密の美術館」にしておきたい、そんな場所なんです。(誰もが知る美術館なのは承知してますが…!)

展示風景

リニューアルオープンを記念し、2つの展覧会が開催されています。同館を代表するおなじみの作品から、展示機会の少ない名品まで、今だからこそ出会える作品が会場を彩ります。

「あんまり教えたくないよ〜」とか言ってますが、泉屋博古館の魅力を知ってほしいのも本心です。たっぷりの写真とともに紹介していきますね。

泉屋博古館のここが新しい!リニューアルの3つのポイント

新設された「眺めのいい部屋」

名建築としても名高い泉屋博古館には、改修とともに新たな展示ケースが導入され、今まで以上に作品が見やすい環境になりました。

さらに、「泉屋八景」の企画やミュージアムショップの新設など、来館者それぞれが自分らしく美術館を楽しめる仕掛けも満載です。

最新の展示ケースで作品がより魅力的に

展示風景。1970年から使用している展示ケースも現役で活躍中

1970年の開館当初から使用してきた展示ケースに加え、このたびの改修により最新の展示ケースが導入。最新のLEDで照らされ、作品のディテールが見やすくなりました。

国宝《線刻仏諸尊鏡像》平安・12世紀 泉屋博古館

《線刻仏諸尊鏡像》は鏡の表面に絵が施された作品。斜め下から見上げるようにすると、うまい具合に光が当たって繊細な線もばっちり鑑賞できました。

漸江《江山無尽図巻》(部分)清・順治18年(1661) 泉屋博古館

《江山無尽図巻》などが展示される長細いケースは、上からだけでなく横からも作品が見られるように。軸に嵌め込まれた玉もよく見えて、今まで気づかなかった作品の魅力に出会えました。

美術館にとって、作品の魅力を余すところなく伝えることは大切なミッションです。そのためにも、設備のアップデートは必須。美術館を訪れる私たちも、作品の魅力を今までより深掘りできる、嬉しい改修となりました。

「泉屋八景」めぐりで良い眺めを楽しめる

中庭

泉屋博古館といえば、昭和のモダニズム建築を代表する建築や、東山を借景に取り入れた中庭など、美術館そのものにも見どころが沢山あります。同館が推す景観の良い8つのスポットが「泉屋八景(せんおくはっけい)」と名付けられ、スタンプラリーのように巡ることができます。

企画展示館

中庭を眺めながらソファでくつろいだり、美術館でゆったりとした時間を楽しめるのが泉屋博古館の素敵なところ。美術鑑賞は立っている時間が長く、また知らず知らずのうちに目も疲れているので、景色を眺めながら気持ちを緩められると、ほっとするんですよね。

青銅器館の窓

青銅器館には小さな窓が設けられ、東山が望めます。古代中国の青銅器を展示する青銅器館は外光が入らず、作品の時代感もあってか「棺桶の中にいるみたい」と言われることもあるらしく…うーん、わからなくもないです。重厚な展示の最後に自然光を浴び、それまで過ごした時間の濃密さにハッとさせられました。

泉屋八景のカードとケース

泉屋八景の8つのスポットには、無料のフォトカードが設置されています。カードを入れる箱が組み立てられるペーパークラフトももらえるので、自分用やおみやげ用などにぜひコンプリートを目指してくださいね。

(私は8箇所目のカードと箱をもらうのを忘れました…。写真は撮ったのにどうして…?)

ミュージアムショップ新設!オリジナルグッズも多数

リニューアルにともない、待望のミュージアムショップが誕生。泉屋博古館の所蔵品にちなんだ、オリジナルグッズも多数揃っています。

特に注目したいのが、コラボアイテムです。フェリシモ「ミュージアム部」とのコラボでは、同館が誇る中国古代青銅器が親しみやすいカジュアルなアイテムになりました。

左:キョロキョロ見回す姿が愛らしい 鴟鴞尊ポーチ、右:《鴟鴞尊》 殷後期・前13-12世紀 泉屋博古館 展示期間:4/26-5/18, 8/9-8/17

鴟鴞尊(しきょうそん)ポーチは背中にファスナーがあり、ペンケースやメイクポーチとして活用できます。 青銅器の《鴟鴞尊》は酒器として使われていたので、小さいペットボトルを入れて同じように使ってみるのも楽しそう。

頭を外したり、首の向きを変えられたりするのも、青銅器の《鴟鴞尊》と同じです。頭は外れてなくならないよう、紐で本体とくっついています。

左:《戈卣》 殷後期・前12-11世紀 泉屋博古館 展示期間:4/26-5/18, 8/9-8/17、右:古代中国から現れた 立ちあがる戈卣クッション

ふわふわの戈卣(かゆう)クッションは抱きしめるも良し、付属の試香紙札を使って香りを楽しんでも良し。青銅器の《戈卣》も、お酒に香りをつけるための香草の煮汁を入れていたと考えられています。

優しいブルーが綺麗で、どんなお部屋にも意外と馴染みそうなアイテム。かつ、インテリアのスパイスになってくれそうです。

古代中国に伝わる伝説の文様 饕餮文フラットポーチの会

饕餮文フラットポーチ、殷周青銅器文様マルチクリップも、エッジが効きつつおしゃれなコラボグッズになっています。

便利堂謹製 コロタイプ青銅器ポートフォリオ

また、リニューアルを記念して佐々木香輔氏により同館が所蔵する中国古代青銅器が撮り下ろされ、便利堂がコロタイプでポートフォリオを製作しました。

コロタイプとは、19世紀半ばにフランスで発明された写真の印画技法。現在主流の「オフセット印刷」では物足りない、写真の印刷や文化財複製に適しています。今回のポートフォリオの写真もグラデーションが美しく、青銅器がそこにあるかのような存在感が素晴らしいです。

便利堂は、カラーコロタイプ技術を現在でも有する世界で唯一の老舗企業。ご興味のある方は、イロハニアートで取材した記事もぜひご覧ください。

リニューアルを記念した展覧会が開幕

リニューアルオープンに合わせ、企画展示館と青銅器館それぞれで展覧会が開幕しました。

リニューアル記念名品展Ⅰ 帰ってきた泉屋博古館 いにしえの至宝たち

展示風景

展示室を1つから2つへと増設し、広くなった会場では、リニューアルを記念した企画展の第1弾『リニューアル記念名品展Ⅰ 帰ってきた泉屋博古館 いにしえの至宝たち』が開催中です。

《能面 白色尉》桃山時代・16世紀 泉屋博古館東京

本展では、住友家伝来の美術品を中心に、日本、中国、朝鮮の古代から近世にいたる美術工芸の代表作を選りすぐって紹介。来場者を歓迎するように、能の特別な演目で使われる翁の面から展示がスタートします。

呉春《蔬菜図巻》江戸・寬延2年(1749) 泉屋博古館

呉春の《蔬菜図巻》は43種の野菜が描かれた8mあまりの大作。今回は部分の展示ですが、新しい展示ケースを連結すれば全部を一度に公開することもできるそう。

伊藤若冲 《海棠目白図》 江戸・18世紀 泉屋博古館

若冲の《海棠目白図》は、国宝《動植綵絵》と同時期に描かれた作品です。大きさも《動植綵絵》と同じで、内容も濃密なので、"国宝級"と言っても良いのでは…!?メジロが身を寄せ合う「目白押し」が、写真のようなリアリティで描写されています。

展示風景

嗅ぎタバコを入れる鼻煙壷(びえんこ)や、印顆(いんか、いわゆるハンコ)など、手のひらに収まるほど小さな作品も数多く展示。展覧会では大作が注目を浴びがちですが、小さな作品も収集されてきたのは個人コレクションならでは。小さき芸術には"愛でたい""可愛がりたい"という独特の感情を掻き立てられます。

『リニューアル記念名品展Ⅰ 帰ってきた泉屋博古館 いにしえの至宝たち』の会期は4月26日(土)〜6月8日(日)です。

ブロンズギャラリー 中国青銅器の時代

展示風景

住友コレクションの中核をなすのが、中国青銅器です。今から約3000年前、中国大陸では高度に発達した鋳造技術により、数々の青銅器が作られました。

その特徴は、一目で分かるユニークさ。「こんな形、どうしたら思いつくんだろう?」と、首を傾げてしまう作品も。古代の超絶技巧により、実用性と装飾性を兼ね備えた青銅器が数多く生まれました。

《虎卣》 殷後期・前11世紀 泉屋博古館 通期展示

たとえば《虎卣(こゆう)》は、虎をモチーフにした青銅器です。後ろ脚で立って大きく口を開け、人間の頭を飲み込もうとしている…のでしょうか?人間の方は何とも言えない表情をしています。

《虎卣》の造形の意味をめぐっては諸説あり、まだ解明はされていないとのこと。中国古代の奇想と超絶技巧を象徴する本作は、世界で2点のみ現存が知られています。

展示風景

謎だらけの中国青銅器は、難しく考えず感じるままに楽しんでも良いと思うのですが、もうちょっと詳しく知りたい方もいるはず。組み合わせて使う青銅器を1つのケースで展示したり、イラストつきの分かりやすい解説があったり、青銅器について深く学べる展示にもなっていました。

《金銀錯獣形尊》(部分)北宋・10-12世紀 泉屋博古館 通期展示

あと今回発見したのですが、下から見上げると青銅器が違った表情を見せてくれます…!しかも下からでないと見えない紋様があったりします。作り手は下から見られることも想定していたのでしょうか…?

《鴟鴞尊》 殷後期・前13-12世紀 泉屋博古館 展示期間:4/26-5/18, 8/9-8/17

また、フクロウやミミズクをモチーフにした《鴟鴞尊(しきょうそん)》は、真っすぐではなく首に少し角度がついて展示されています。そこには、一番かわいい姿を見てほしいという担当学芸員・山本さんの熱いポリシーが。

3000年の時を超えて、かわいい、かっこいいを楽しめる『中国青銅器の時代』。会期は4月26日(土)〜2025年8月17日(日)です。

美術館・展覧会情報

泉屋博古館

住所:京都府京都市左京区鹿ヶ谷下宮ノ前町24
美術館ウェブサイト:泉屋博古館

◎『リニューアル記念名品展Ⅰ 帰ってきた泉屋博古館 いにしえの至宝たち』
会期:2025年4月26日(土)〜6月8日(日)

◎中国青銅器の時代
会期:2025年4月26日(土)〜8月17日(日)

開館時間10:00〜17:00(最終入館時間16:30)
休館日:月曜日、5月7日(水)、7月22日(火)、8月12日(火)(5月5日、7月21日、8月11日は開館)

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明菜

明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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