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EVENT

2021.11.24

500年で変わったもの、変わらないもの。メトロポリタン美術館展に見る西洋絵画の歴史

時代は変わっても、人が絵画を求める心は変わりません。ヨーロッパの絵画は、時代の変化とともに役目を変えながら、現在まで人々に求められてきました。

数百年にわたってヨーロッパで紡がれた、西洋絵画史を代表する作品を一望できる展覧会『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』が、大阪市立美術館で開幕しました。会期終了後は、東京の国立新美術館に巡回予定です。

『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』展示風景

展覧会でどんな名画が見られるのか、時代とともに変化した「絵画の役目」とは何なのか、美術ライターの明菜が紹介していきます。

比較でわかる絵画の変遷

『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』展示風景展示風景

本展では、15世紀の初期ルネサンスから19世紀のポスト印象派まで、約500年の西洋絵画史を代表する作品を見ることができます。ラファエロ、フェルメール、モネ、ゴッホなど、誰もが知る巨匠の名画を見られるので、1つ1つじっくり鑑賞したいところ。

ですが、せっかく西洋絵画史500年を代表する作品が集結しているのです。時代や画家が異なる絵を比較して見えてくる、絵に与えられた「役目」に注目して、絵画の歴史を紐解いていきましょう。

聖書と日常

フラ・アンジェリコ(本名 グイド・ディ・ピエトロ) 《キリストの磔刑》フラ・アンジェリコ(本名 グイド・ディ・ピエトロ) 《キリストの磔刑》 1420-23年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Maitland F. Griggs Collection, Bequest of Maitland F. Griggs, 1943 / 43.98.5

ルネサンスを代表する画家、フラ・アンジェリコの《キリストの磔刑》には、群衆が見上げる位置で十字架にかけられるキリストが描かれています。反逆者として捕らえられたキリストが公開処刑される場面で、キリスト教においてとても重要な主題です。

古典的な絵画には、文字が読めない人にも聖書の内容がわかるようにする、という布教の目的がありました。西洋の古い絵の多くが宗教画なのは、こうした背景があるからです。

フランソワ・ブーシェ《ヴィーナスの化粧》フランソワ・ブーシェ《ヴィーナスの化粧》 1751年 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Bequest of William K. Vanderbilt, 1920 / 20.155.9

ルネサンスから時代が進み、18世紀のロココ主義の画家ブーシェは、キューピッドに手伝われながら化粧をする女神ヴィーナスを描きました。淡い色が多用され、繊細で優美、かつ官能的な印象を与える作品で、ロココらしい一枚です。

しかし、描かれているのは女神が化粧をする様子。女神は聖なるものですが、化粧は日常的な行為です。「聖と俗」が一枚の絵の中に入り乱れている、面白い作品です。宝飾品の質感など、細部に凝らされた技量も見応えたっぷり。ちなみに本作は、ルイ15世の愛妾ポンパドゥール夫人のために建造されたベルヴュー城の浴室を飾っていたそうです。

オーギュスト・ルノワール 《ヒナギクを持つ少女》オーギュスト・ルノワール 《ヒナギクを持つ少女》 1889年 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 The Mr. and Mrs. Henry Ittleson Jr. Purchase Fund, 1959 / 59.21

今度は19世紀末の作品を見てみましょう。印象派のルノワールが描いたのは、主に身近な人とその暮らしでした。聖か俗なら、間違いなく俗。時代が変わり、身近な主題を描いた絵が受け入れられるようになったのです。

印象派に続いて台頭したポスト印象派のセザンヌが描いたのは、ただのリンゴと洋ナシ……。古典絵画が主題とした「聖」はどこかへ消えてしまいました。

ポール・セザンヌ 《リンゴと洋ナシのある静物》ポール・セザンヌ 《リンゴと洋ナシのある静物》1891-92年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Bequest of Stephen C. Clark, 1960 / 61.101.3

時代ごとに画題が変わった理由として大きいのが、絵の注文主の変化です。教会は「キリスト教の布教に役立つ絵」を注文しましたし、王族や貴族は権力や富を誇示するように、「豪華な衣装をまとった自分の肖像画」を注文しました。富裕市民が台頭すると、伝統とは異なる新しい価値観で絵が評価されるように。

西洋絵画は、時代によって異なる役目を負ってきました。本展では、絵画史の流れを一望し、各時代の美意識を味わうことができます。

変わらないのは絵を求める心

『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』の展示風景展示風景

約500年で絵画の主題は変わりましたが、人が絵画を求める心は変わっていません。どんな時代にも、人は絵を描きたいと思い、絵を見たいと思ってきました。時代を隔ててもその思いは受け継がれ、「西洋絵画史」という大きな流れになったのです。

大いなる西洋絵画史に、ちょこっと触れてみる。本展は美術を好きになるきっかけをくれる、とても良い機会です。

展覧会情報

『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』

『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』
展覧会公式サイト:https://met.exhn.jp/

【大阪展】
会期:2021年11月13日(土)~2022年1月16日(日)
会場:大阪市立美術館

【東京展】
会期:2022年2月9日(水)~5月30日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E

明菜

明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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