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2022.4.28
1200年の歴史のロマンに息をのむ。特別展『最澄と天台宗のすべて』
1200年。人間の寿命よりもはるかに長い時間を超えることができるのが、思想と文化財です。
東京、九州(福岡)を巡回し、京都国立博物館で『伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」』が始まりました。約1200年前に最澄が広めた天台宗が、どのような文化を生み、現代につながっているかを読み解く展覧会です。この記事では、美術ライターの明菜が本展の見どころを解説していきます。
最澄ってどんな人?
画像提供:東京文化財研究所
国宝 聖徳太子及び天台高僧像 十幅のうち 最澄 平安時代・11世紀 展示期間:4月12日(火)~5月1日(日)
兵庫・一乗寺蔵
伝教大師・最澄(767~822)は、日本に天台宗を広めた平安時代初期の名僧です。桓武天皇の後押しを受けて唐(中国)に留学し、天台宗を学びました。
さて、仏教の本場はインド。しかもお釈迦様が入滅したのははるか昔。お釈迦様がいない時代に、インドから遠く離れた日本に生まれてしまった時点で、我々は罪深い存在なのです。
インドの人々が実践している教えをそのまま日本の人々が真似しても意味がないのでは? と疑問を持った最澄は、日本に合った形で教えを実践していこう、と考えました。それまでは出家者にしか許されなかった受戒を開かれたものにする(大乗戒壇)など、革新的な考え方で日本の仏教に大きな影響を与えました。
あまりに革新的だったため、ほかの宗派からの反発もあったそうです。それでも、最澄は「すべてのものが仏になれる」という『法華経』の教えを拠り所に、当時の日本に合った仏教を広めていきました。
重要文化財 日吉山王金銅装神輿(樹下宮) 江戸時代・17~19世紀
滋賀・日吉大社蔵
本展では最澄の現存する最古の肖像画や現代まで守り継がれてきた仏像や仏画、書などを通し、天台思想とそこから生まれた文化を学ぶことができます。
最新科学が解き明かす謎
1200年の日本天台宗の歴史を俯瞰できるのも大きな見どころですが、最新の科学技術を用いた仏像の調査も見逃せません。本展では、九州国立博物館にて出展作品の2件のお像をX線CT撮影により調査した結果が公開されています。
なぜ仏像のCTスキャンを撮るのかというと、見た目ではわからない内部の構造や損傷を確認するためです。そのうえ、調査によって「中に何か入ってるぞ!」と新たにわかることがときどきあるそうです。
菩薩遊戯坐像(伝如意輪観音) 鎌倉時代・13世紀
愛媛・等妙寺蔵
今回の調査では、愛媛県の等妙寺が所蔵する《菩薩遊戯坐像(伝如意輪観音)》の首の部分に、小さな五輪塔が入っていることがわかりました。塔の内部には舎利(釈迦や聖者の遺骨)を表す直径1~3ミリの粒が約20個納められていることも明らかになったそうです。
画像提供:九州国立博物館
菩薩遊戯坐像(伝如意輪観音)内部の五輪塔 3次元データ
五輪塔と約20個の粒は3Dプリンターで複製され、本展で展示されています。
展示風景
重要文化財 性空上人坐像 慶快作 鎌倉時代・正応元年(1288)
兵庫・圓教寺蔵
また、兵庫県の圓教寺が所蔵する《性空上人坐像》(重要文化財)のCT調査も行われました。過去の調査で、頭の中に骨壺があることがわかっていましたが、今回は骨壺の中に遺骨が納められていることまで発覚。性空上人のものと推定されるそうです。
骨壺と遺骨も3Dプリンターで複製され、本展では骨壺に遺骨を納めた状態で複製が展示されています。
画像提供:九州国立博物館
重要文化財 性空上人坐像 X線 CT 画像(左から見た断面)
2件のお像の内部がCT調査によって明らかになりつつあるのですが、これっておもしろくないですか? これまでの私は仏像などを彫刻として捉えていたので、外側にしか関心を持っていませんでした。ですが、内部に秘められたものがあるとわかったら、鑑賞時に抱く思いが変わってきます。
命を象徴するようなものを内部に抱えて、仏像は約千年もの時を越えてきたのですね。そしてまた千年後の鑑賞者も、同じように感じるのでしょうか。
【まとめ】1200年の歴史のロマンを体感せよ
本展で強く感じたのが、1200年という歴史の重みです。人間の寿命をはるかに上回るスケールで、天台宗の思想や文化は継承されてきました。次の世代にも継承され、1300年、1400年と続いていくのでしょう。鑑賞者として展覧会を客観的に見ていたつもりが、自分も当事者として歴史に身を置いているのだと気づき、はっとする展覧会でした。
展覧会情報
伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」
会期:2022(令和4)年4月12日(火)~5月22日(日)
[主な展示替]
前期展示:2022年4月12日(火)~5月1日(日)
後期展示:2022年5月3日(火・祝)~5月22日(日)
※会期中、一部の作品は上記以外にも展示替あり
会場:京都国立博物館 平成知新館
休館日:月曜日
展覧会公式サイト:https://saicho2021-2022.jp
画像ギャラリー
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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