EVENT
2022.6.9
関西では44年ぶりの大回顧展!『没後50年 鏑木清方展』、京都展のみの作品も
美人画の名手として知られる鏑木清方(かぶらき・きよかた、1878-1972)。江戸や明治を回顧するようなノスタルジックな美人画には、うっとりしてしまいます。
しかし、清方が絵を描く第一の目的は、美人を描くことではなかったそうです。美人画の名手と称えられているのに、本人の真意は違うところにあった……というのは、なかなか大きな衝撃です。清方が関心を寄せたのは、市井の人々の生活でした。
鏑木清方《鰯》1937(昭和12)年頃、東京国立近代美術館、通期展示 ⒸNemoto Akio
清方の没後50年という節目である2022年、『没後50年 鏑木清方展』が開かれています。東京国立近代美術館での開催が終了し、ただいま京都国立近代美術館で7月10日まで開催されています。
東京展の様子ははろるどさんのレポートのとおり。この記事では、京都展ならではの見どころを、美術ライターの明菜が紹介していきます。
★東京展のレポート
「市井の人々の生活を描き続ける。3つの時代を生きた日本画家、鏑木清方の魅力とは?」
https://irohani.art/event/7134/
年代順で分かる清方の興味関心
鏑木清方《雛市》1901(明治34)年、公益財団法人 北野美術館、通期展示 ⒸNemoto Akio
東京では作品がテーマ別に展示されたのに対し、京都は概ね年代順で作品が展示されています。東京を中心に活動していた清方の大規模な回顧展は、関西では44年ぶりとなるため、清方初心者にもやさしい年代順の構成としたそうです。
挿絵画家としてキャリアをスタートさせた清方の作品は、人物の姿勢や小道具、背景を駆使し、その場面の時代や場所、ストーリーを伝えているのが特徴です。時代が進むにつれて背景の描き込みは少なくなる傾向があるのですが、それでも絵のストーリーは濃密です。
鏑木清方《雪紛々》1937(昭和12)年、個人蔵、通期展示 ⒸNemoto Akio
むしろ、描き込みが少なくなるほど、ストーリー性の豊かさは増していきます。年代順の展示により、清方の芸術性がどんどん成長していくことがうかがえました。
京都展のみの作品も!
一部、東京展のみ、京都展のみ展示される作品があります。たとえば、《築地明石町》《新富町》《浜町河岸》は両展で展示されますが、その下絵が展示されるのは京都展のみ。
展示期間は以下のとおりです。
築地明石町 下絵:5/27~6/26
新富町 下絵:5/27~6/19
浜町河岸 下絵:6/21~7/10
下絵には描かれていたものの、本画には描かれていないモチーフを発見でき、清方が大胆な引き算を行っていたことが分かりました。
そのほか、清方自ら会心の作とした《ためさるゝ日》も必見です。左幅が公開されるのは30年ぶり、左右そろって公開されるのは40年ぶりとなります。
清方芸術のノスタルジーに迫る展覧会
鏑木清方《遊女》1918(大正7)年、横浜美術館、7月5日~7月10日展示 ⒸNemoto Akio
美人画で知られる鏑木清方ですが、彼が生涯に渡ってテーマとしたのは市井の人々の生活でした。年代順の展示では、一貫して暮らしや風俗に主題を見出してきたことが分かり、清方の思いを読み取ることができます。
関西では久々の清方の大回顧展ということで、清方に馴染みがない来館者にとっても、親しみやすい構成になっています。江戸や明治の風俗を瑞々しく描き出した、ノスタルジックな清方の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。
展覧会情報
「没後50年 鏑木清方展」
会期:2022年5月27日(金)~7月10日(日)
会場:京都国立近代美術館(岡崎公園)
公式サイト:https://kiyokata2022.jp
問い合わせ:075-761-4111(京都国立近代美術館)
休館日:月曜日
開館時間:9:30~18:00、金曜は20:00まで。
入館は閉館の30分前まで
観覧料金:一般1,800円(1,600円) 大学生1,100円(900円) 高校生600円(400円)
( )内は20名以上の団体料金。
画像ギャラリー
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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