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2023.9.28
【国立西洋美術館】50年ぶりの大キュビスム展。『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命』が見逃せない!
20世紀初頭、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックという2人の芸術家によって生み出されたキュビスム。西洋絵画の伝統的な技法であった遠近法や陰影法による空間表現から脱却し、幾何学的な形によって画面を構成する試みは、西洋美術の歴史に大きな変革をもたらしました。
目次
フアン・グリス『朝の食卓』 1915年10月/ポンピドゥーセンター(1947年購入) Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Philippe Migeat/Dist. RMN-GP
そのキュビスムの全貌を国内では50年ぶりに大規模に紹介する展覧会、『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ』が、東京・上野の国立西洋美術館にて開かれます。
初来日作品50点以上!ポンピドゥーセンターのコレクションから140点の作品が出展。
マリー・ローランサン『アポリネールとその友人たち(第2ヴァージョン)』 1909年/ポンピドゥーセンター(1973年代物弁済) Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Audrey Laurans/Dist. RMN-GP
1908年にブラックの風景画が「キューブ(立方体)」と評されたことに由来するキュビスムは、絵画を現実の再現とみなすルネサンス以来の常識から画家たちを解放し、抽象芸術やダダ、シュルレアリスムへといたる道を切り開きました。
そして視覚表現に新たな可能性を開くと、パリに集う若い芸術家たちに衝撃を与えただけでなく、装飾・デザインや建築、舞台美術を含むさまざまな分野で世界中へと広まり、それ以後の芸術の展開に多大な影響を及ぼしました。
コンスタンティン・ブランクーシ『眠れるミューズ』 1910年/ポンピドゥーセンター(1963年寄贈) ※東京会場のみ Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Adam Rzepka/Dist. RMN-GP
今回の展覧会はパリのポンピドゥーセンターと国立西洋美術館という、日仏を代表する国立美術館の共同企画によって実現。世界屈指の近現代美術コレクションを誇るポンピドゥーセンターのコレクションから、初来日作品50点以上を含む140点の作品が公開されます。
「キュビスムの起源」からピカソ、ブラック、そしてレジェやシャガール、「ピュリスム」へ。
ポール・セザンヌ『ポントワーズの橋と堰』 1881年/国立西洋美術館 ※東京会場のみ
展示の構成についてたどってみましょう。前半では、ポール・セザンヌやアンリ・ルソーの絵画、またアフリカの彫刻など、キュビスムの多様な源泉を探る「キュビスムの起源」からはじまり、それらをピカソとブラックが解釈しながら、新しい絵画を生み出す軌跡を紹介していきます。
フェルナン・レジェ『婚礼』 1911-1912年/ポンピドゥーセンター(1937年寄贈) Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Philippe Migeat/Dist. RMN-GP
後半では、キュビスムの展開に重要な役割を果たしたフェルナン・レジェ、フアン・グリス、ロベール・ドローネー、ソニア・ドローネーといった画家たちをはじめ、キュビスムを吸収しながら独自の作風を打ち立てたマルク・シャガールらの国際色豊かな芸術家たちの作品を展示します。
ロベール・ドローネー『円形、太陽 no.2』 1912-1913年/ポンピドゥーセンター(1961年寄贈) Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Georges Meguerditchian/Dist. RMN-GP
そして第一次世界大戦を経て、キュビスムを批判的に乗り超えようとしたル・コルビュジエらのピュリスム(純粋主義)の運動や、合理性を重視する機械美学が台頭してくるまでを展覧します。
ブラックの重要作『大きな裸婦』やロベール・ドローネーの大作『パリ市』が見逃せない!
マリア・ブランシャール『輪を持つ子供』 1917年/ポンピドゥーセンター(1951年購入) Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Bertrand Prévost/Dist. RMN-GP
本展のハイライトはピカソ12点、ブラック15点というまとまった作品数で、絶えず変化を続けながら展開した2人の画家によるキュビスムの造形実験を追体験できることです。
中でもピカソのプリミティヴな裸婦像に衝撃を受けて制作されたブラックの重要作『大きな裸婦』(1907〜08年、日本初出品)や、ポンピドゥーセンターを代表するピカソのキュビスム絵画『肘掛け椅子に座る女性』(1910年)は必見の作品といえるでしょう。
ロベール・ドローネー『パリ市』 1910-1912年/ポンピドゥーセンター(1936年国家購入) Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Georges Meguerditchian/Dist. RMN-GP
またピカソ、ブラックとは異なるアプローチでキュビスム旋風を巻き起こした「サロン・キュビスト」たちの作品では、幅4メートルにもおよぶロベール・ドローネーの『パリ市』も初来日。ポンピドゥーセンターを象徴する大作のひとつといっても過言ではありません。
アンリ・ローランス『頭部』 1918-1919年/ポンピドゥーセンター(1997年代物弁済) Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Adam Rzepka/Dist. RMN-GP
このほか、初期の傑作『ロシアとロバとその他のものに』(1911年)を含む、粒揃いのシャガールの絵画5点にも注目が集まるのではないでしょうか。またナターリヤ・ゴンチャローワをはじめ、アルベール・グレーズにアンリ・ローランス、それにマリア・ブランシャールといった国内では見る機会の比較的少ない作品も見どころとなりそうです。
フランティシェク・クプカ『色面の構成』 1910-1911年/ポンピドゥーセンター(1957年購入) Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Philippe Migeat/Dist. RMN-GP
音声ガイドを務めるのは、ともに声優の三木眞一郎さんと伊駒ゆりえさん。コロナ禍以前は毎年海外へ出かけ、各国の美術館を訪ねたという美術愛好家のベテラン・三木さんとフレッシュな伊駒さんのお二人が、やさしくキュビスムの世界をナビゲートしてくれます。
また美術に極めて造詣の深い編集者で評論家の山田五郎さんによる、キュビスム愛がつまったボーナストラックも必聴です。
ポンピドゥーセンター外観 Centre Pompidou, architectes Renzo Piano et Richard Rogers, photo : G. Meguerditchian © Centre Pompidou, 2020
開幕は10月3日(火)。まさに秋の芸術シーズンの目玉ともいうべき展覧会です。パリ ポンピドゥーセンターからやって来る極めて質の高いコレクションにて、キュビスムの真髄を味わってください。
展覧会情報
『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ』 国立西洋美術館
開催期間:2023年10月3日(火)~2024年1月28日(日)
所在地:東京都台東区上野公園7-7
アクセス:JR線上野駅下車(公園口出口)徒歩1分。京成電鉄京成上野駅下車徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅下車徒歩8分。
開館時間:9:30~17:30
※金・土曜は20時まで
※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日。但し10月9日(月・祝)、1 月8日(月・祝)は開館。10月10日(火)、12月28日(木)〜2024年1月1日(月・祝)、1月9日(火)。
観覧料:一般2200(2000)円、大学生1400(1300)円、高校生1000(900)円。
※( )内は前売券。発売期間:2023年8月7日(月)~10月2日(月)。
※当日に限り本展の観覧券で常設展も観覧可。
公式サイト:パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ
※京都市京セラ美術館へ巡回。会期:2024年3月20日(水・祝)~7月7日(日)
画像ギャラリー
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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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