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2025.12.12
原田マハ渾身の“アート長篇”最新作 『晴れの日の木馬たち』──小説家を夢見る工女・すてらが出会う「芸術の奇跡」
アート小説の旗手として、長年にわたり美術と文学を架橋してきた作家・原田マハ。
その最新長篇『晴れの日の木馬たち』が、2025年12月17日(水)、新潮社より刊行される。
目次
『晴れの日の木馬たち』──小説家を夢見る工女・すてらが出会う「芸術の奇跡」
『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』『リーチ先生』『たゆたえども沈まず』など、美術史を鮮やかに再構築する物語を生み出してきた原田マハが、今回はついに 自身の「化身」ともいえる主人公 を描きだした。
その少女の名は、すてら。
貧しくも誠実に生きる工女であり、「いつか小説を書く」ことを夢見る若き女性だ。
この主人公に注ぎ込まれた熱量について、リリースでは「著者自身の情熱を重ねた」と明言されており、ファンにとっても新たな“原点回帰”となる作品といえるだろう。
カバーには、ロベール・ドアノーの写真《シャン・ド・マルスの騎馬隊、1969年6月》が採用されている。
ドアノーの静謐で幻想的なモチーフが、すてらの人生の象徴――「雨の日もあるが、いつか晴れる」という物語のテーマを暗示するようだ。
工女から小説家へ。アートが少女の運命を変える
物語は1910年の岡山から幕を開ける。
母に見捨てられながらも、病に倒れゆく父の深い愛に包まれて育った少女・すてらは、父の治療費を支えるため倉敷紡績で働き始める。
そこで彼女は、同社社長である 大原孫三郎 と出会う。
言わずと知れた日本近代美術のパトロンで、後の大原美術館創設にもつながる人物だ。
大原から贈られた雑誌『白樺』──その1冊が、すてらの運命を大きく変える。
そこに掲載されていたのは、 フィンセント・ファン・ゴッホ の絵画。
さらに武者小路実篤による批評文が、すてらの胸に火を灯す。
「ゴッホが絵を描いたように、自分は小説を書く」
彼女の内側に芽生えた確信は、まさに“創造への目覚め”そのもの。
アートとの邂逅をきっかけに、自らの道を切り開こうとする姿は、これまで原田作品に登場した多くの芸術家の魂と響き合う。
20歳手前で倉敷紡績を退職したすてらは、岡山の富家で住み込みで働き始めるが、ある出来事をきっかけに追い出されてしまう。
そんな中手を差し伸べたのは、幼少期から彼女を見守ってきた宣教師・アリス。
その励ましを胸に、すてらは東京へ向かい、ついに流行作家の家で書生として迎えられることになる。
しかし、その先に待つ道は平坦ではない。
成功も、挫折も、雨のように降り注ぐ日々。
それでも「雨はいつかきっとあがる」と信じ、すてらはひたむきに自身の物語を紡いでいく。
“芸術が人を救う”という原田マハの信念が、鮮烈な物語へ
原田マハが今回描くのは、単なる成長物語ではない。
ゴッホとの精神的共鳴、白樺派文学の思想、大原孫三郎という芸術支援者との出会い──
近代日本におけるアートと文学の交錯 が、ひとりの少女の人生とともに立ち上がる作品である。
原田マハは美術史を学び、森美術館の設立準備室にも携わった後、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に派遣された経歴を持つ作家だ。
アートの最前線で培った美意識と情熱が、これまで数々のアート小説を生みだしてきた。
『楽園のカンヴァス』や『暗幕のゲルニカ』では美術館と名画を巡るミステリーを、
『リーチ先生』では日本陶芸を、
『たゆたえども沈まず』では若きゴッホと日本の浮世絵を描いた。
そんな原田マハが今回は、芸術家本人ではなく “芸術に魅入られた普通の少女” を主人公にしている点が実に印象的だ。
すてらは画家ではなく小説家志望。
だが、芸術そのものに人生を賭けようとする熱は、ゴッホにも似た“純粋ゆえの危うさ”を孕む。
アートに導かれ、アートに救われようとする主人公の姿は、まるで著者自身の若き日の情熱を鏡のように映し出す。
「すてらは私の化身」という一文は、本作が単なる歴史小説でも芸術小説でもない、
“原田マハの物語の核心”に位置付けられる作品であることを示している。
アート好きも文学好きも惹きつける、時代と情熱のドラマ
本作の舞台は、日本が近代化の波を受けて大きく変わろうとしていた1910年代。
倉敷紡績という当時の先端産業、美術への深い理解を持ったパトロンたち、
白樺派が切り開いた「個人・芸術・自由」の思想──
これらは日本の近代美術史を語るうえで欠かせない要素だ。
すてらの人生は、そうしたアートの潮流を背景に、
「自分は何を表現して生きるのか」という根源的な問いと向き合っていく。
これは現代を生きる私たち読者にも通じる、普遍的なテーマだ。
どしゃぶりの日のような絶望も、
晴れ渡る空のような希望も、
すてらは作品を通じて読者にそっと手渡してくれる。
著者プロフィール
原田マハ
1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部美術史科卒。
森美術館準備室やMoMA派遣などアートの現場を経て作家へ。
『楽園のカンヴァス』が山本周五郎賞ほか多数受賞。
『暗幕のゲルニカ』『リーチ先生』『板上に咲く』など、アートを題材にした作品で高い評価を得る。
2027年には、自作を原作にした監督映画『無用の人』公開予定。
書籍データ
タイトル:『晴れの日の木馬たち』
著者:原田マハ
発売日:2025年12月17日(水)
造本:ハードカバー
定価:2,310円(税込)
ISBN:978-4-10-331756-2
出版社URL:https://www.shinchosha.co.jp/book/331756/
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