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EVENT

2023.11.2

自分“ごと”として考えよう!森美術館開館20周年記念展「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」

現在、森美術館にて開催している森美術館開館20周年記念展「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」(会期:2023年10月18日(水)- 2024年3月31日(日))をご紹介します。

ケイト・ニュービー《ファイヤー‼︎‼︎‼️!》2023年

本展覧会について

写真:保良 雄《fruiting body》2023年

産業革命以降、特に20世紀後半に人類が地球に与えた影響は、それ以前の数万年単位の地質学的変化に匹敵すると言われています。この地球規模の環境危機は、諸工業先進国それぞれに特有かつ無数の事象や状況に端を発しているのではないかという問いから本展は構想されました。


会場では、4つの章にて世界16カ国の34名のアーティストによる、歴史的な作品から新作まで多様な表現約100点を紹介しています。さらに世界共通の喫緊の課題である環境危機に対し、作品に込めたコンセプトや隠喩、素材、制作プロセスを読み解き、ともに未来の可能性を考えていきます。


本展のタイトル「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」は、私たちとは誰か、地球環境は誰のものなのか、という問いかけにもなっています。人間中心主義的な視点のみならず、地球を大局的な視点から見渡せば、地球上にはいくつもの多様な生態系が存在することに気付くことでしょう。

本展覧会の見どころ

本展では、環境問題をはじめとするさまざまな課題について多様な視点で考えることを提案しています。見どころを4つ紹介します。

日常を再利用する

写真:ニナ・カネル《マッスルメモリー(5トン)》2023年

本展覧会では、できる限り作品というモノ自体の輸送を減らし、作家本人が来日して新作を制作してもらう計画から、身近な環境にあるものを素材として再利用した作品が多く出展されます。


例えば、『第1章:全ては繋がっている』の冒頭に展示されている、貝殻を観客が踏みしめる感覚と音を体験できるニナ・カネルによる作品は、観客によって粉砕された貝殻は、展覧会終了後にセメントの原料として、さらに再利用される予定だそうです。

エコロジーの観点から日本美術史を紐解く

写真:展示風景 (手前)殿敷侃《山口—日本海ー二位ノ浜 お好み焼き》1987年 個人蔵 寄託:広島市現代美術館、(奥)谷口雅邦《発芽する?プリーズ!》 2023年

ゲスト・キュレーターのバート・ウィンザー=タマキによる「第2章:土に還る 1950年代から1980年代の日本におけるアートとエコロジー」では、日本の社会や現代美術史をエコロジーの観点から読み解きます。


色彩で感情を表現した絵画にはじまり、真実を捉えたドキュメンタリー写真、視聴者の心に訴えかける生々しい映像、そして大胆なパフォーマンスアートへと、時系列を追うごとに各時代の代表的な表現方法が移り変わっていく様子が伺えます。

人類の発展とは欲望の裏返し

写真:モニラ・アルカディリ《恨み言》2023年

私たち人間は地球上のあらゆる資源を利用して文明を発展させ、工業化、近代化、グローバル化を押し進めました。


『第3章:大いなる加速』では、歴史的背景を題材とする作品を通じて、より広い視点から地球資源と人間の関係を再考し、地球資源と人類との多様な関わり合いを示します。


モニラ・アルカディリの真珠を主題とした新作《恨み言》は、養殖真珠や石油産業の歴史を通して、自然への人間の介入と搾取、また人間と自然の共存について考えさせられる作品でした。

環境問題を自分“ごと”として考えてみよう!

写真:松澤 宥《私の死》1970年

さまざまな形で表現する現代アーティストたちの作品から、私たちが広大で複雑に絡み合う循環(エコロジー)のなかにあることを想起させます。


その上で、地球を傷つけることは自分を傷つけることであると、さまざまな物事を自分”ごと”として捉えてみると、未来にはどんな選択肢が残されているのか、地球の未来をじっくりと再考してみましょう。

最後に

写真:アサド・ラザ《木漏れ日》2023年

本展覧会が定義する「エコロジー」は、「環境」だけに留まりません。

この地球上の生物や非生物を含む森羅万象は、何らかの循環の一部であり、その循環をとおして、この地球に存在するすべてのモノ、コトは繋がっていることがわかりました。


昨今、工業化、近代化、グローバル化など、私たちが便利で快適になっている裏側で、地球環境が蔑ろになっていることから、毎年のように繰り返される自然災害が課題となっています。


しかし、このような環境危機は私たちの「選択」が招いた結果であり、現状を打破するには私たちの在り方を改めることはもちろん、自分の“ごと”として捉えるのが必要だと感じました。

写真:ミュージアムショップにて

ミュージアムショップでは、おしゃれな軍手をはじめとし、段ボールを再利用したパスケース、プラスチックを再利用した日用品が販売されていますので、ぜひお店にも立ち寄ってみては?


また会期中は、シンポジウムやギャラリートークだけでなく、アクセス・オンライン・プログラムなど、本展覧会を楽しめる関連プログラムが開催されていますので、会場を訪れる際にはそちらも合わせてチェックしてみてくださいね。

取材・撮影・文:新麻記子

展覧会情報

森美術館開館20周年記念展
「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」
会期:2023年10月18日(水)- 2024年3月31日(日)
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
開館時間:10:00-22:00
     (火曜日のみ17:00まで。ただし1月2日、3月19日は22:00まで)
     ※入館は閉館時間の30分前まで
     ※会期中無休
公式サイト:私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために

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新 麻記子

新 麻記子

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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。

アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。

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