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2023.11.10
アートはみんなのために!『キース・ヘリング展 アートをストリートへ』が森アーツセンターギャラリーにて開催。
アメリカ北東部ペンシルベニア州に生まれ、1980年代にアンディ・ウォーホルやジャン=ミシェル・バスキアと共にカルチャーシーンを牽引したキース・ヘリング(1958~1990)。その明るく、ポップな作品のイメージは、日本を含む世界中の人々から深く愛されています。
目次
Photo by ©Makoto Murata Keith Haring Artwork @Keith Haring Foundation
東京・六本木の森アーツセンターギャラリーにて12月9日から開催される『キース・ヘリング展 アートをストリートへ』では、アイコニックなモチーフから6メートルの大型作品など150点が集結。へリングのアートを東京で一堂に体感することができます。展示の内容に沿って見どころをご紹介します。
ニューヨークの公共空間にてアートを展開。「サブウェイ・ドローイング」のプロジェクトとは?
1978年、ピッツバーグからニューヨークに移り、絵画だけでなく映像やインスタレーションなどを学んだへリング。美術館や画廊といった従来の展示空間から公共空間でアートを展開する方法を模索すると、最も多くの人が利用する地下鉄に注目し、駅構内の空いている広告板に貼られた黒い紙にチョークで描く「サブウェイ・ドローイング」をはじめました。
しかし公共施設へのグラフィティは違法行為です。よってへリングは警官に捕まらないように素早く描き、地下鉄に飛び乗って次の駅へと向かいました。
そして光り輝く赤ん坊や吠える犬、光線を出す宇宙船など、コミカルで人々の思考や想像力を刺激するイメージはニューヨーカーを魅了。有名になるにつれてドローイングは剥がされ、売買されるようになったため、1986年にこのプロジェクトは中止されました。
HIVの蔓延は社会に暗い影を落としはじめていましたが、ヘリングにとってのニューヨークはゲイカルチャーも華やいでいる刺激的な場所でした。生の喜びと死への恐怖を背負いながら、約10年間という限られた時間に自らのエネルギーを注ぎ込んでいきます。
ジャン・デュビュッフェやウィリアム・バロウズ、そしてアーティストの独立性を主張したロバート・ヘンライのマニフェスト『アート・スピリット』に影響を受けると、独自の表現を推し進めながら、アフリカの芸術から着想を得た表現なども確立していきました。
《スリー・リトグラフス》は3点からなるシリーズであり、「人の梯子」とも呼ばれる本作では、人が肩車によって作るタワーが描かれています。
人物が踊っているのか、バランスを保とうと葛藤しているのかは定かではありませんが、共同体は個人で活動するよりも力強いものになるというヘリングの考えが強調されているともいえます。このシリーズではヘリングの特徴的な太く鮮明なラインを維持するため、版画の技法を用いて制作されました。
核放棄から反アパルトヘイト、HIV・エイズ予防などまで。ポスターを用いてメッセージを訴える。
『スウィート・サタデー・ナイト』のための舞台セット 1985年
80年代のニューヨークは現在よりも犯罪が多発していて、ドラッグや暴力、貧困が蔓延していました。しかしクラブ・シーンやストリートアートは盛り上がり、街もカルチャーも人々もパワーに溢れていました。
特に人種のるつぼであったパラダイス・ガラージは、ヘリングにとって最高のクラブであり、踊りと音楽に酔いしれながら、創作のアイデアを生み出していきます。ヘリングはポップアートだけでなく、舞台芸術や広告、音楽などと関わりながら制作の場を広げていきました。
『スウィート・サタデー・ナイト』のための舞台セットは、黒人歴史月間にニューヨークの芸術劇場ブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージックで行われたダンス・パフォーマンスの舞台背景として制作された作品です。
ここでは横幅6メートルを超える大画面に黒い線でダンサーが踊るように描かれていて、この前で踊られたブレイクダンスが作品に息を吹き込みました。
ヘリングが大衆にダイレクトにメッセージを伝えるために用いたのはポスターという媒体でした。題材は核放棄、反アパルトヘイト、HIV・エイズ予防や、性的マイノリティのカミングアウトを祝福する「ナショナル・カミングアウト・デー」などの社会的なものから、スウォッチなどとのコラボレーション広告といった商業的なものまで100点以上にも及びます。
中でも社会へのメッセージを発信したポスターは数多く、ヘリングが初めて制作したポスターは、1982年に自費で2万部を印刷した核放棄のためのポスターであり、セントラル・パークで行われた核兵器と軍拡競争に反対する大規模デモで無料配布されました。
トレード・マークは通称ラディアント・ベイビー。時空を超えて現代社会に生きる人々の心を揺さぶるヘリングのアート。
アートを富裕層にだけではなく大衆に届けたいと考えたヘリングは、ストリートや地下鉄での活動や、自らがデザインした商品を販売するポップショップといった活動を通して、彼らとコミュニケーションしてきました。
絵画の連なりから1つのストーリーを想像する、子どもだけでなく大人にも訴えかける視覚言語が用いられた代表的な作品に《赤と青の物語》があります。
子どもたちのために作られた20枚からなるシリーズで、1点のみや、20点すべてを使って物語を考えることを目的としていて、アメリカの学校やこども美術館が物語創作コンテストで使用するなど、教育プログラムにも取り入れられました。
17点による《ブループリント・ドローイング》は、不平等や争いがはびこる社会や、テクノロジーが人間を支配するような未来をモノクロームでコミックのように描写した作品で、へリングは「ニューヨークでのはじまりを啓示するタイムカプセル」とテキストに残しました。
版画のシリーズ《イコンズ》にも登場する光り輝く赤ん坊、通称ラディアント・ベイビーは、ヘリングのトレード・マークとして最もポピュラーなモチーフです。ヘリングは赤ん坊が人間の完璧な姿であり、社会の色に染まらず純粋無垢で、未来への希望の象徴であると考えていました。
へリングは1990年に、エイズによる合併症によりわずか31歳の若さで亡くなります。しかし社会に潜むさまざまな課題や、HIV・エイズに対する偏見と支援不足に対して最後まで闘い続けたヘリングのアートは、時空を超えて現代社会に生きる人々の心を揺さぶり続けているのです。
展覧会では活動初期のサブウェイ・ドローイング、トレードマークとなったモチーフによる作品《イコンズ》や彫刻、ポスター、晩年の大型作品までを紹介。さらに日本に対して特別な想いを抱いていたヘリングが、数度にわたる来日が縁で生まれた貴重な作品や資料を、当時の写真とともにトピックとして展示します。
「アートはみんなのために」の信念のもとに活動し、アーティストとして駆け抜けたへリングの10年のストーリーを、『キース・ヘリング展 アートをストリートへ』にて体感してください。
作品はすべて中村キース・ヘリング美術館蔵。All Keith Haring Artwork ©Keith Haring Foundation
展覧会情報
『キース・ヘリング展 アートをストリートへ』 森アーツセンターギャラリー
開催期間:2023年12月9日(土)〜2024年2月25日(日)
所在地:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 52F
アクセス:東京メトロ日比谷線「六本木駅」1C出口より徒歩3分(コンコースにて直結)、都営地下鉄大江戸線「六本木駅」3出口より徒歩6分。
開館時間:10:00~19:00、金曜日・土曜日は20:00まで。
年末年始(12月31日~1月3日)は11:00~18:00
※入場は閉館の30分前まで
会期中無休
観覧料:一般、大学生・専門学生2200円、中高生1700円、小学生700円。
※事前予約制(日時指定券)を導入
公式サイト: 『キース・ヘリング展 アートをストリートへ』
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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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