STUDY
2023.5.29
クリストファー・ウールとは?世界の現代アーティストをわかりやすく解説
「TwitterSpaceArtTalk」は、Twitterのスペース機能内で、私現代美術家のMasakiHaginoを語り手として、東京美術館巡りさん、そしてスポンサーにイロハニアートさんを迎えて、世界中の現代アーティストを紹介・解説する1時間番組です(毎月第2第4水曜日21時開催)。
今回の記事では、2023年5月10日に放送されたChristopher Wool(クリストファー・ウール)特集の内容をご紹介します。
番組アーカイブはこちらから聴取可能です。
【5月10日(水)夜9時~】【TSAT】今回はアメリカ・シカゴ生まれのクリストファー・ウール。写真とペインティングという異なる媒体を用いた抽象的な作風が特徴。#ARTTALK#イロハニアート#TSAT
— 東京美術館巡り【公式】 (@tokyoartmuseum) May 9, 2023
語りは、現代美術家の萩野真輝氏( @masakihaginoart )。https://t.co/83XmgjwdPg
作家情報
Christopher Wool(クリストファー・ウール)
1955年アメリカボストン生まれ。現代アートの中でもストレートな抽象画、ステンシルを使ったアルファベットを用いるなどメッセージの高い作品が代表的。2015年には世界中のオークションでの取り扱い金額が、$113,952,823(約150億円)で、19番目に売れた作家とされた。メガギャラリー、ガゴシアンでも取り扱いがある世界で有名な作家。
クリストファー・ウールは、白いキャンバスに黒く大きな文字がステンシルされたペインティングで有名だが、スプレーペイント、ハンドペイント、スクリーンプリントなどの絵画的技法を組み合わせて、描くと消す、ジェスチャーと除去、深さと平面の間の緊張感を与える、幅広いスタイルを持っている。
過去の作品に使用されたスクリーンプリントの要素、つまり複製から取り出したモノクロームの形、写真の細部の拡大、スクリーン、自身の絵画のポラロイドの上に白やオフホワイトを何層にも塗り重ねることによって、圧力がかかった絵画の表面を加速させ、その実体そのものを明らかに空洞化する。ゴーストや視界を遮るものだけが残り、それぞれが時間的に固定されている。
ウールは、このような様々な適用と取り消しの手続きを通じて、以前の要素の限界の痕跡を不明瞭にし、現代絵画の新しい章を形成するために、複製と否定を生成的に使用する。したがって、彼の絵画は、「何であるか」と同様に、「何でないか」「何を持っているか」によって定義することができる。
ウールは1955年にシカゴで生まれ、サラ・ローレンス・カレッジ(ニューヨーク州ブロンクスビル)と、ニューヨーク・スタジオ・スクールで学んだ。ウールの作品は、世界中で多くの個展やグループ展に出展されている。
これまでに個展が開催された場所は以下の通り。
サンフランシスコ近代美術館(1989年)、ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館(ロッテルダム、オランダ)(1991年、クンストハレ・ベルン(スイス)、ケルン(ドイツ)に巡回)、イーライ・ブロード・ファミリー財団(ロサンゼルス、1992年)、オフィユカス コレクション、ヒドラ工房(ギリシャ)(1998年)、ロサンゼルス現代美術館(1998年、ピッツバーグ、カーネギー美術館、クンストハーレバーセルに巡回)、ジュネーブ現代美術センター(1999)、ル・コンソーティウム(ディジョン、フランス)(2002、2003年までダンディー現代美術(スコットランド)に巡回)、カムデン・アートセンター(ロンドン)(2004)、バレンシア近代美術館(スペイン)(2006)、ETH(スイス連邦工科大学)、チューリッヒ(2006)、セラルベス美術館(ポルト、ポルトガル)(2008、ルートヴィヒ美術館(ケルン、ドイツ)に巡回)、パリ市立近代美術館(2012)、ソロモンR.グッゲンハイム美術館、ニューヨーク(2013年、シカゴ美術館に巡回)
翻訳・引用元:https://gagosian.com/artists/christopher-wool/
Christopher Woolはどんな作家なのか?
彼の作品を端的に説明するのならば、「意味があったものに、意味が無くなった時の現象」を鑑賞者に見せつけているように思う。言葉を選ばずに言えば、「意味の喪失/消失」を用いているように思う。
※参考:Christopher Wool | If you can't take a Joke (1992) | Artsy
https://www.artsy.net/artwork/christopher-wool-if-you-cant-take-a-joke
彼の代表作品の中で、ステンシルで描かれたアルファベットの作品群が存在する。
例えば「RunDogRunDogRun」と描かれた作品がある。単語ごとの隙間、スペースを埋めて更に不自然な位置での改行が行われているのが見て取れる。そうすると「Run」「Dog」という、犬が走っている様子が鑑賞者の脳内で浮かんでいるはずの文章の中に、「Rund」「Undo」「Grun」という単語が目につき始める。
Undoは英語でやり直すという単語だし、ドイツ語ではRundは円を、Grünは緑を指す単語だ。このたった「文字のスペースと改行をいじる」というシンプルな行為で、Woolの行う「意味の喪失」を浮かび上がらせることができる。
※参考:The Treachery of Images (This is Not a Pipe) (La trahison des images [Ceci n'est pas une pipe])(イメージの裏切り) | LACMA Collections
https://collections.lacma.org/node/239578
これはルネ・マグリッド(René Magritte, 1898-1967)の≪イメージの裏切り≫(Ceci n'est pas une pipe)を想起させる。パイプを写実的に描いておいて、下には「これはパイプではない」と文字を残しておくと、この作品の表面的な意味は消失し、鑑賞者に「ではこれは一体何だろうか?」という思考を強いる。
アナグラムを使って全く別の単語を重ねてみる作品群も面白い。
少し脱線すると、この「文字を使った作品」というのは、今では普通に受け入れることができるが、これは20世紀頃からようやく使われた技法。現代で有名どころだと下の3名なんかはどうだろうか。
Christopher Woolのペインティングについて
抽象的絵画の作品も同じようなことが見て取れる。過去の作品を塗り潰し、シンナーで絵の具を拭い取る。ロールシャッハテストに敢えて意味を持たせてみる。こういった実験的な作品は、鑑賞者にとって一見意味の分からない抽象画である一方で、単純に「意味の喪失」をぶつけられているような衝撃を受ける。
この「複製と否定」を用いて表現することは、いわば引き算の美術作品とも言える。この意味論的矛盾を用いて何をどう表現するのか、何をどう見えるようにするのか、というパウル・クレー(Paul Klee)が残した言葉に対して、「なにであるかということと同様になにで無いか」ということを表現しようとしている。
※参考:オンライン上で公開されているChristopher Wool(クリストファー・ウール)の作品
Works | Christopher Wool(MoMA)
https://www.moma.org/artists/6448
ARTWORKS | Christopher Wool(Guggenheim Museum)
http://web.guggenheim.org/exhibitions/wool/artworks/
記事の内容を音声で聞きたいという方は、こちらから聴取可能です。
【5月10日(水)夜9時~】【TSAT】今回はアメリカ・シカゴ生まれのクリストファー・ウール。写真とペインティングという異なる媒体を用いた抽象的な作風が特徴。#ARTTALK#イロハニアート#TSAT
— 東京美術館巡り【公式】 (@tokyoartmuseum) May 9, 2023
語りは、現代美術家の萩野真輝氏( @masakihaginoart )。https://t.co/83XmgjwdPg
また、Twitterスペースは毎月第2第4水曜日21時に開催しているので、ぜひリアルタイムでもチェックしてみてください。
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Contemporary Artist / 現代美術家。 Diploma(MA) at Burg Giebichenstein University of Arts Halle(2019、ドイツ)現在は日本とドイツを中心に世界中で活動を行う。
Contemporary Artist / 現代美術家。 Diploma(MA) at Burg Giebichenstein University of Arts Halle(2019、ドイツ)現在は日本とドイツを中心に世界中で活動を行う。
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