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2023.6.15

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」が待ちきれない!【第5回】グエル公園の特徴

建築家アントニ・ガウディはスペイン・カタルーニャを代表する建築家です。ガウディのキャリア初期の作品である「グエル公園」は、現在でも多くの観光客が集まる魅力的な建造物です。

Photo by Maksim Sokolov (maxergon.com) , CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

この記事では、2023年6月13日(火)~9月10日(日)に東京国立近代美術館で開催される『ガウディとサグラダ・ファミリア展』をより楽しむための解説をしていきます。

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第5回となる今回は、建築家ガウディの代表作品の1つ「グエル公園」について詳しく紹介します。

グエル公園を知るためのポイント①グエル公園の歴史

Photo by Txllxt TxllxT,CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

グエル公園は、バルセロナのカルメル山の斜面に造られた公園です。実業家エウセビ・グエルがガウディに依頼し、1900年から1914年にかけて建設されました。グエル公園は「公園」と名を冠していながら、依頼主グエルとガウディの当初の構想は複合施設でした。

1878年のパリ万博でガウディの作品を目にしたグエルは彼の才能に感銘を受け、グエル公園(当初は住宅地の予定)の建築を依頼しました。グエルとガウディは多くの政治理念・宗教的信念を共有していたため、グエル公園は象徴性の高い建築の側面があります。カタルーニャ主義(※)の概念を示すエントランスのデザイン、カトリックの礼拝堂が構想されていた記念碑がその例です。

※バルセロナを含むスペインのカタルーニャ州は現在においても独立運動が盛んであり、ガウディの時代はとくにカタルーニャ主義運動の機運が高まった時代でした。

グエル公園に含まれるシンボルの多様性は、後世の歴史家によってさまざまな憶測を呼びました。しかし現在は依頼主グエルと建築家ガウディの政治理念(カタルーニャ主義)・宗教的信念(カトリック)の強さによってもたらされた性質であると考えられています。

2人の想いが詰まった複合施設は、残念ながら商業的には失敗に終わります。計画ではバルセロナを一望できる場所に約60戸の住宅を建てる予定ことになっていたものの、立地や価格を理由に多くが売却されずに残ってしまったためです。グエルの没後、公園はバルセロナ市に譲渡されました。

グエル公園を知るためのポイント②グエル公園の建築特徴

Photo by Txllxt TxllxT, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

グエル公園は、ガウディのキャリア初期の自然主義時代の作品であり、自然界にある有機的な形態から大きな影響を受けています。全体を通してガウディの有機主義な装飾スタイルを象徴しており、自然の美しさの表現と自然との共存が追求されました。建造物を構成する要素には直角的な要素が排除され、すべてが起伏ある曲線で構成されています。

広大な土地においてガウディは、デザインに自然由来のモチーフを取り入れるだけでなく、「自然」そのものを取り入れることで、自然との完璧な融合を目指しました。とくにグエル公園が建築されたエリアは森林破壊が進んでいたため、ガウディは地形に則した地中海の在来種を植生し自然を増やしました。

ガウディが目指した自然との調和は植物だけに限りません。現在、グエル公園内では約60種類の鳥類の存在が記録されており、バルセロナ市管理のもと巣箱や給餌桶が設置されています。

グエル公園を知るためのポイント③:グエル公園の見どころ

Photo by es:Usuario:Rapomon, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

グエル公園の最も重要な見どころの1つは、エントランスホールから続く階段です。階段は二手に分かれており、11段の階段が3つと12段の階段が1つで構成されています。階段を囲む壁は陶器で覆われており、凸型のタイルと平板のスラブが交互に並べられています。

中央エリアの3つの噴水には、カタルーニャ諸国を表す彫刻的なモニュメントが備わっています。最初の噴水は台形で、植物や鉱石を用いた自然主義的な構成が特徴で、「世界」の象徴として円を、「建築家」の象徴としてコンパスを配置しています。

2つめの噴水はメダリオン型で、カタルーニャの紋章と衣装を象徴する蛇がデザインされています。3つめの噴水の特徴は、2.4mのトカゲ(もしくはドラゴン)です。トカゲは公園のエンブレムとなっただけでなく、バルセロナを象徴するシンボルの1つともなっています。

Photo by Baikonur, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

階段の最上部にあるベンチは、冬には陽が当たり暖かく、夏は日陰になり涼しく過ごせる造りが特徴です。自然の共存を目指したガウディは、自然の力を活かして快適に過ごすための仕組みを模索し続けていました。

まとめ

ガウディの初期の作品群の1つであるグエル公園は、建築家の芸術思想の根幹を支える自然、政治、宗教などの要素が複雑に組み合わされた結果です。商業的な成功は得られなかったものの、グエル公園の芸術・建築としての影響力は絶大でした。

現在では公園内にピクニック、売店、犬用スペース、子ども用スペースなどが設置されており、市民や観光客が楽しく過ごせる環境が整っています。グエル公園を訪れた際は、デザインに込められたガウディの思想を感じてくださいね。


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はな

はな

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

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