STUDY
2024.5.28
「デッサン」はどう鑑賞する?アート初心者が美術館を楽しむコツ
アートに詳しくないけど美術館でデッサン鑑賞を楽しみたい!
でも、何に注目したらいいのかわからない…難しそうでとっつきにくい…
そんな悩みを抱えていませんか?
Parmigianino - drawingPublic domain, via Wikimedia Commons
とくに「デッサン」と呼ばれるジャンルはほかの作品に比べると副次的な印象があり、なにを見ていいかわかりづらいですよね。美術鑑賞に「正解」はありませんが、楽しむためのコツはあります!
この記事では、これまでに世界中100以上の美術館を訪れてきた筆者が「デッサン」鑑賞のコツをご紹介します。(紹介するのは、西洋美術のデッサンです)
美術館でデッサン鑑賞を楽しむコツ①:素材に注目!
A drawing by Renaissance artist Michelangelo of Madonna and ChildPublic domain, via Wikimedia Commons
デッサンの定義は一般的に「紙や羊皮紙に描かれたもの」であり、絵画は木製パネル、カンバスや壁に描かれる一方、より小規模な支持体に鉛筆やペンで描かれると「デッサン」の括りに入るようです。(明確にデッサンかデッサンでないかを判断しづらいケースもあります。)
デッサンを鑑賞するうえで筆者が一番楽しいと感じるのは、素材を見極めることです。デッサンと言えば白い紙に黒の鉛筆が使われている作品を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実はさまざまな道具が用いられます。
とくにデッサンが盛んにおこなわれたルネッサンスのイタリアでは、インクと羽ペンがよく使われました。ヨーロッパの美術館で展示されているデッサンを見ると、黒だけではなく茶色のものも結構あります。
インクや鉛筆以外では、チャコ―ルと呼ばれる木炭を使うケースや、石を粉砕して作るチョークなども筆記具として用いられました。時代・地域によって使われる筆記具が限定されるケースもありますが、芸術家が何で描くか筆致や耐久性などの特徴から選んで決めていたようです。
複数の筆記具が組み合わされることもあります。たとえば、実線部分ははっきり線が引けるペン(インク)で、陰影は広がりのあるチョークで、ハイライトは白チョークで…など、道具に注目して観察すると面白い発見があるかもしれません。
美術館でデッサン鑑賞を楽しむコツ②:目的を考察
Drawing, sketch-book (BM 1898,1123.3.9)Public domain, via Wikimedia Commons
デッサンは、なんのために作成されたのでしょうか?
答えは、「デッサンによる」です。デッサンを作成する目的はさまざまで、主に、絵の練習、下絵、被写体の記録、コピーなどでした。
デッサンといえば美術の授業で習ったような被写体の陰影や形状をとらえるための練習を思い浮かべる人も多いでしょう。もちろんそれもデッサン作成の大切な目的の1つです。とくにフィレンツェ・ルネッサンスにおいては、「すべての基礎はデッサンにある」と考えられていたほど重要な素養でした。
レオナルド・ダヴィンチは多くのデッサンを残したことで知られ、奥行きのある風景を記録したり、布がたゆたう様子を練習したりしていたようです。解剖学(人体の構造)の研究においても、デッサンは非常に重要でした。
また、大きな絵画作品を作成する前に、構成や配置を決めるためにデッサンを作成するケースがあります。スケールの大きな作品を依頼された際は、芸術家はまずデッサンでイメージを固め、それを実物に反映する手法が一般的でした。これらの下絵デッサンは芸術家の思考プロセスを理解するために重要であり、美術史の貴重な史料として実際の完成作品と比較されるケースもあります。
さらに、写真がなかった時代、目の前にあるものを記録する目的としてもデッサンは有効でした。有名な例では、北方からローマに留学してきた美術学徒が、さまざまな古代の遺跡や芸術作品をデッサンにまとめ、国に持ち帰った文化が挙げられます。
美術館でデッサン鑑賞を楽しむコツ③:陰影表現を観察
Drawing - SalviatiPublic domain, via Wikimedia Commons
デッサン鑑賞では、ぜひ陰影表現に注目しましょう。陰影の作り方は、使用される筆記具によって異なりますが、少ない色で立体感を出す技術は非常に高度なため、芸術家の純粋な実力が試される機会でもありました。
たとえばインクとペンで描かれるデッサンの場合、陰影は繰り返される斜線で表現されることが一般的です。ミケランジェロは斜線をクロスして重ね(ハッチング)、よりはっきりした陰影を強調したことで知られます。
陰になる部分には色が広がりやすいチャコールやチョークを用いるケースもありました。インクで斜線を広範囲に引くよりも、自然で強弱のある影が作れるためです。
影を作るのは反対に、光が当たる部分には色を全く加えなかったり、ハイライトを入れたりするケースもあります。ちょうど化粧でハイライトを入れる位置と同じようなポイントが明るくなっているので、メイクの勉強になるような気がしてついつい観察してしまいます。
デッサンはシンプルだからこそ、芸術家の細部へのこだわりや物体への観察眼が問われるジャンルといえるでしょう。美術館でデッサンを観察する際は、ぜひこれらのポイントに注目してくださいね!以上、デッサンを楽しむコツについてでした。
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イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
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