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2024.12.19

蔦屋重三郎とは?活躍した時代や絵師たちとの関係を解説!

江戸時代の出版業界を席巻した蔦屋重三郎。浮世絵や洒落本など、当時の文化を彩る数々の作品を通じて、その名は今も多くの人々に知られています。
俳優の横浜流星さんが演じる、蔦屋重三郎が主人公の2025年NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」を楽しみしている人も多いでしょう。本記事では、その蔦屋重三郎とは何をした人物なのか深堀りしていきます。

蔦屋重三郎とは

山東庵京伝(山東京伝)著『絵本宝七種』、蔦屋重三郎版、1804年刊、国立国会図書館所蔵。「高砂」の場面。, Public domain, via Wikimedia Commons.

蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)は、江戸時代に活躍した版元です。「版元」という言葉は、文字通り「版の元」を意味します。江戸時代においては、印刷物の出版に関わる全ての工程を請け負う事業主のことを指しました。
彼が創業した「耕書堂(こうしょどう)」は単なる本屋ではなく、重三郎が自ら作品を企画し、絵師や戯作者とともに作品を作り上げていました。いわゆるプロデューサーのような役割を担い、その活躍ぶりから現代では「メディア王」とも評価されています。

耕書堂では浮世絵をはじめ、洒落本や黄表紙といった大衆向けの小説、そして風刺の効いた狂歌など、さまざまなジャンルの作品を出版しました。作品を通じて江戸の文化を大きく発展させた重三郎は、まさに出版業界の革命児ともいえる存在です。

蔦屋重三郎の生きた時代

蔦屋重三郎の生きた時代は、江戸時代の中期にあたります。重三郎は寛延3年(1750年)に生まれ、寛政9年(1797年)に亡くなりました。

化政文化が発展

蔦屋重三郎が出版した狂歌本『古今狂歌袋』の2ページ, Public domain, via Wikimedia Commons.

化政文化とは江戸時代後期、特に文化・文政の時代に花開いた文化様式です。この時代には、浮世絵や文学、歌舞伎・人形浄瑠璃・文楽などの芸能が町民の間で人気となり、現代の日本文化にも大きな影響を与えています。

蔦屋重三郎は、この化政文化の中心的な人物の一人として、浮世絵や狂歌といった大衆文化の発展に大きく貢献しました。これまで高貴な人々のものであった文化を、庶民も楽しめるように、大衆向けの出版物を積極的に手がけたのです。

寛政の改革による弾圧

文化を創造し、世に広めるという革新的な功績を残した重三郎でしたが、後に江戸幕府による弾圧という逆境に見舞われました。

松平定信が実施した寛政の改革では、風俗や出版物に対する規制が強化されました。蔦屋重三郎が出版した洒落本などは風紀を乱すとして取り締まりの対象となり、財産の一部を没収されるなどの処罰を受けたのです。

蔦屋重三郎の死因

晩年の重三郎は病に苦しみ、47歳という若さで生涯を閉じました。死因は当時の国民病とも呼ばれた脚気(かっけ)とされています。

脚気とは、ビタミン欠乏症が原因で起こる病気です。症状が進むと心不全や神経障害などを引き起こし、蔦屋重三郎のように命を落とすこともありました。

蔦屋重三郎と絵師たちの関係

蔦屋重三郎は、喜多川歌麿や東洲斎写楽といった後の浮世絵界を代表するような絵師たちの才能を見出し、彼らの作品を世に送り出しました。

喜多川歌麿

色刷りの木版画。美人画。 版画家:喜多川歌麿 執筆者:酒桶数在 出版者:蔦屋重三郎, Public domain, via Wikimedia Commons.

蔦屋重三郎と喜多川歌麿は、江戸時代の出版界において、切っても切れない関係にあった二人です。

重三郎は歌麿がまだ無名だった頃に目をつけ、積極的に作品を発表する機会を与えました。その支援のもとで歌麿は才能を開花させ、数々の傑作を生み出したのです。特に、美人画においては歌麿の表現が人々を魅了し、大きな人気を集めました。

東洲斎写楽

東洲斎写楽, 三代目大谷鬼次(二代目中村仲蔵)の江戸兵衛, 寛政六年五月, 江戸河原崎座上演『恋女房染分手綱』, Public domain, via Wikimedia Commons.

重三郎は、東洲斎写楽が描いた役者絵を大量に出版し、江戸中に広めた人物でもあります。写楽は瞬く間に名を馳せ、浮世絵界のスターへと上り詰めました。

写楽の絵は背景を黒雲母摺りにするなど、新しい表現技法を導入したことも特徴的です。

黒雲母摺りとは、人物画の背景に雲母の粉(もしくは貝殻の粉で代用)を混ぜる技法です。蔦屋重三郎が版元となった作品で多く用いられ、東洲斎写楽が発展させたことで知られます。

2025年のNHK大河ドラマも必見!

2025年のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」は、蔦屋重三郎が主人公です。主演は俳優の横浜流星さんが務め、脚本は森下佳子さんです。

2025年1月5日(日)の午後8:00から放送開始予定です。

参照:大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」

蔦屋重三郎をもっと知りたくなる!

蔦屋重三郎は単なる出版業者にとどまらず、時代の寵児として江戸の文化を牽引する存在でした。彼の慧眼とビジネスセンスは、多くの才能ある人々を世に送り出し、江戸文化を大きく発展させました。こうした版元にも注目すると、浮世絵などのアート鑑賞がもっと楽しくなるはずです。

2025年4月22日(火)からは、NHK大河ドラマと連動して、東京国立博物館で特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」が開催されます。この機会にぜひ、蔦屋重三郎について学んでみましょう。

【写真4枚】蔦屋重三郎とは?活躍した時代や絵師たちとの関係を解説! を詳しく見る
さつま瑠璃

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文筆家(ライター)。芸術文化を専門に取材執筆を行い、アートと社会について探究する書き手。SNSでも情報を発信する他、さつまがゆく Official Podcastでは取材執筆にまつわるトークを配信中。

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