STUDY
2022.5.6
【ローマ】ベルニーニ作の噴水『四大河の噴水』簡単解説!ナヴォーナ広場
永遠の都ローマにはたくさんの美術館があり、有名な芸術家の価値ある作品が所蔵されています。
美術館に行く時間・お金はないけれど、手軽に巨匠の作品を見たい!という方にぜひおすすめなのが、ナヴォーナ広場の彫刻『四大河の噴水』です。
Fred Romero from Paris, France, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
バロック期の巨匠「ベルニーニ」が残した彫刻の周りには、いつでも観光客が溢れています。
この記事では、ベルニーニの作品『四大河の噴水』の楽しみ方について解説します。
四人の男性が『四大河』を表す
Nicholas Gemini, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
『四大河の噴水』のタイトル通り、この作品は当時(17世紀)に考えられていた世界の四つの大きな川を表しています。
つまり、この四人の男性像がそれぞれの川ということになります。
川は、ヨーロッパを流れる「ドナウ川」、アジアを流れる「ガンジス川」、アフリカを流れる「ナイル川」、そして南米を流れる「ラプラタ川」です。
真ん中から立っているのは、古代ローマ時代に皇帝がエジプトから持ち帰ってきたオベリスクです。
あえて異教的なシンボルを重要な作品の中に配置することで、キリスト教が古代の英知を礎に大いなる発展を遂げたことを表現しています。
四人の男性の中に、顔を布で覆っている人がいます。
これはナイル川を象徴しており、当時これらの四つの川の中で唯一水源がわかっていなかったことに由来しています。
ラプラタ川の象徴は、足首のブレスレットが目印です。
当時の人々にとって、南米はまだ解明されていないことも多く、エキゾチックな土地でした。
同時に、南米への遠征を通じてヨーロッパは巨万の富を得たため、その表現としてラプラタ川の男性の近くには、銀貨が積み重なっています。
ドナウ川の象徴は、教皇のエンブレムを手で触れる体勢で表現されています。
これは、単にキリスト教会の力がヨーロッパ全体に及んだことを示すだけではありません。
この作品が制作された17世紀には宗教改革の影響で、ローマを中心としていたカトリック教会はしばしば難しい立場に立たされていました。
そのため、宗教改革の中心(プロテスタント)であったドイツなど北部ヨーロッパを流れるドナウ川が教皇のエンブレムに触れることで、キリスト教会全体の統合性を表したと言われています。
『四大河の噴水』注目ポイント
Vicenç Valcárcel Pérez, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
ベルニーニの彫刻の特徴は、静と動、水平と垂直などと言った、正反対の概念が1つの作品の中に表現されている点です。
『四つの川』は噴水という常に水が動きつづける場所を装飾するために制作されました。
精密に彫られた四つの大河の表現とは反対に、背景や土台の部分は荒々しいカットが残っています。
ベルニーニは人物の描写に長けていただけでなく、素材ごとの異なる表現にも長けていました。
水の流れまでを計算し、複雑な構図でも全体的に統一感のあるベルニーニらしい作品です。
ライバル・ボッロミーニとの因縁!?
Picture by Carlo Morino,public domain, via Wikimedia Commons
この噴水には、ベルニーニとライバルである建築家ボッロミーニの因縁が隠されているという伝説があります。
ベルニーニが制作した噴水の目の前にあるのは、ボッロミーニが設計した「サンタニェーゼ・イン・アゴーネ聖堂」です。
ベルニーニは「ボッロミーニの設計した教会なんて、すぐに倒れるに違いない!」という気持ちを込めて、ラプラタ川にあたる教会側の男性を驚き恐れるような表情で表現したと言われています。
しかし、実際にはこの噴水はボッロミーニの教会よりも先に作られたものなので、これは後世の人の作り話なのです。
無料で楽しめるベルニーニの作品!
ナヴォーナ広場は、ローマに来た人は誰しもが通るといっても過言ではないほど、
街の中心にある広場です。
ベルニーニの『四大河の噴水』は、そんなにぎやかな場所をより一層盛り上げてくれています。
無料で楽しむことのできるバロックの巨匠ベルニーニの作品、ローマを訪れた際にはぜひ立ち寄ってみてくださいね。
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イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
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