Facebook Twitter Instagram

STUDY

2022.5.10

【ローマ】無料で見られるカラヴァッジョ!『聖マタイの召命』作品解説

今でも歴史と芸術の都としての側面を強く残すローマは、たくさんの芸術家が訪れ、重要な作品を手掛けてきました。
カラヴァッジョも、そんな芸術家の1人です。
カラヴァッジョ作品の多くは、フィレンツェやローマの美術館に所蔵されていますが、実はローマの街には無料で作品を見ることができる場所があります。

【ローマ】無料で見られるカラヴァッジョ!『聖マタイの召命』作品解説『聖マタイの召命』Caravaggio, Public domain, via Wikimedia Commons

今回の記事では、そんなカラヴァッジョ作品の1つ『聖マタイの召命』について、現役美術史ローマ大学院生の筆者が解説していきます!

『聖マタイの召命』は無料で見られるカラヴァッジョ

乱暴な性格でも有名なカラヴァッジョは、暴行事件を起こしたことをきっかけに、1592年に生まれ育ったミラノを離れローマに逃亡してきました。
その後もローマで画家としての活動を続けていましたが、1599年、枢機卿デル・モンテの依頼で、「サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会」のコンタレッリ礼拝堂の装飾をすることになりました。

【ローマ】無料で見られるカラヴァッジョ!『聖マタイの召命』作品解説サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会 Maros M r a z (Maros), CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

それまでは宗教画に限らず幅広い作品を手掛けていたカラヴァッジョの画家としての人生は、この依頼をきっかけに大きく変化します。
作品の評判は瞬く間に広まり、一躍、ローマで最も有名な画家として名を馳せることとなりました。
「サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会」のコンタレッリ礼拝堂の3枚の作品はいずれもカラヴァッジョが手掛けたもので、『聖マタイの召命』は向かって左側にあります。

イエスの手は有名な「あの作品」がモチーフ?

【ローマ】無料で見られるカラヴァッジョ!『聖マタイの召命』作品解説『聖マタイの召命』Caravaggio, Public domain, via Wikimedia Commons

カラヴァッジョ特有の陰影を強烈に表現した技法は「キアロスクーロ(イタリア語で「明暗」という意味)」と呼ばれ、後世のイタリア画家に大きな影響を与えました。
『聖マタイの召命』では、イエスが旅の途中に聖マタイを見つけ、声をかけるシーンを描いています。
薄暗い部屋に、イエスの背後から光が差し込み、ドラマチックな情景が表現されていますね。

【ローマ】無料で見られるカラヴァッジョ!『聖マタイの召命』作品解説https://commons.wikimedia.org/wiki/User:Masur, Public domain, via Wikimedia Commons

向かって右側で指を指しているイエスですが、この手の形に見覚えはありませんか?
実は、この手の部分はミケランジェロがシスティーナ礼拝堂に描いた「神とアダム」のアダムの手を表しています。

【ローマ】無料で見られるカラヴァッジョ!『聖マタイの召命』作品解説『アダムの創造』Michelangelo, Public domain, via Wikimedia Commons

【ローマ】無料で見られるカラヴァッジョ!『聖マタイの召命』作品解説Michelangelo, Public domain, via Wikimedia Commons

実際にはアダムは神の左側に座っているため、カラヴァッジョの作品では左右反転していますが、特徴的な手の形はミケランジェロのものとかなり似ています。

「聖マタイ」は誰?終わらぬ論争

【ローマ】無料で見られるカラヴァッジョ!『聖マタイの召命』作品解説Caravaggio, Public domain, via Wikimedia Commons

このシーンでは、イエスが収税所で働いていたマタイに声をかけ、一緒に布教の旅に出ることを誘っています。
では、「聖マタイ」は作中のどの人物でしょうか?
実はこのテーマは、現在もヨーロッパの美術史学者の間も意見が割れており、主に2つの説が論じられています。
1つは、黒い帽子をかぶって身体の前で指を指す仕草をしている男性が聖マタイであるという説です。
イエスの声がけに対して「私ですか?」という風に、自分自身を指さしているというのが、長年の一般的な解釈でした。
2つ目の説は、机の端で下を向いて作業をしている若い男の子が聖マタイであるという説です。
つまり、この黒い帽子の男性は自分ではなく、奥の青年を指し「彼ですか?」と言っていることになります。
今もまだ議論は続いていますが、筆者の個人的な意見としては、2つ目の説が正しいような気がします。
カラヴァッジョは場面ごとの緊張感が「出来事が起こる瞬間」の描写に長けた画家です。
この作品でいうと、聖マタイはまさに訪問者に気づき、作業の手を止め、顔を上げる直前ということになります。
イエスと聖マタイの運命的な出会いのシーンとして、より緊張感のある構成を表現したのではないか…と思っています。

カラヴァッジョの名を挙げた名作

カラヴァッジョの有名な作品は他にもたくさんありますが、個人的にはこの「サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会」のコンタレッリ礼拝堂は特に好きな作品たちです。
カラヴァッジョというと暴力的なシーンを多く描いた画家と思われるかもしれませんが、実は『聖マタイの召命』のような静かで力強い作品もたくさん残されています。
天才カラヴァッジョのドキドキするような場面表現を楽しんでくださいね。

はな

はな

3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経て2021年秋よりイタリアの大学で美術史修士課程に進学予定。フリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経て2021年秋よりイタリアの大学で美術史修士課程に進学予定。フリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。