LIFE
2026.6.12
ファッションもアートだ!シャネル、マルジェラ、ディオールを映画で堪能しよう
2026年、映画『プラダを着た悪魔2』が世界的な注目を集めています。さらに近年、ブランドの回顧展が相次いで開催されるなど、ファッションとアートの親和性はかつてないほど高まってきました。
ファッションは、クリエイターの哲学が込められたアート作品です。そこでこの記事では、シャネル、マルジェラ、ディオールという有名ブランドにスポットを当てた映画をご紹介します。メゾンのエッセンスに触れることで、いつものコーディネートや憧れのブランドが、新しい輝きを放って見えてくるかもしれません。
※映画のネタバレを含みます。
目次
『ココ・アヴァン・シャネル』(2009年)シャネルは、制約から解放されたワードローブを世に送り出し続ける
参照:『ココ・アヴァン・シャネル』(2009年)
ココ・シャネル(本名ガブリエル・シャネル)は、フランスのファッションブランド「シャネル」の創業者です。孤児院で育ち、ナイトクラブの歌手やお針子として働きながら、世界のトップデザイナーへと登り詰めました。映画『ココ・アヴァン・シャネル』は、彼女が「シャネル」になる前の、愛と苦悩に満ちた日々を描いています。
ココ・シャネル(1931年)/Los Angeles Times, Public domain, via Wikimedia Commons.
「自立した女性の象徴」のように語られる彼女ですが、その根底には家族への不信や孤独、数々の挫折があったと思われます。男尊女卑の激しい時代、資産家エティエンヌ・バルザンの愛人になったものの、「男性の所有物」のような不自由な立場に退屈し、生きる手段としての労働を望みました。
そんな中、同じく孤独な境遇を持ち、働くことを理解してくれる実業家ボーイ・カペルと出会います。真実と思える恋に落ちますが、結婚は叶わず、ココ・シャネルは「誰の妻にもならない」と決断しました。
ブランドの代名詞となる、革新的なファッションの原点も登場します。バルザンの乗馬服をリメイクした、男装風のスタイル。カペルが気に入っていた、ジャージー生地のポロシャツ。そうしたプロセスを経て、彼女は機能的な「シャネル・スーツ」を生み出し、モードの帝国を築くことになりました。
ジャージー生地を婦人服の素材に採用したことで、シャネルは初めての成功を経験した。作者不明、シャネルのジャージーの服3点(1917年), Illustration published in Les Elegances parisiennes, March 1917, Public domain, via Wikimedia Commons.
『ココ・アヴァン・シャネル』では、バルザンやカペルとの恋愛模様に焦点が当たっています。その後の彼女に興味がある方は、ロシアの作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキーとの短い恋を描いた映画『シャネル&ストラヴィンスキー』(2009年)も鑑賞してみてくださいね。
『We Margiela マルジェラと私たち』(2019年)たくさんのランウェイにまだマルタン・マルジェラはいる
参照:『We Margiela マルジェラと私たち』(2019年)
フランス発のファッションブランド「メゾン・マルタン・マルジェラ」の創設者で、伝説のデザイナーであるマルタン・マルジェラ。ファッション業界に革命を起こしながらも、公の場に一切姿を現さず、2008年に突如引退したことでも知られています。
映画『We Margiela マルジェラと私たち』は、2017年に逝去した共同創設者ジェニー・メイレンスや、当時のクリエイティブチームのコメントから、ブランドの知られざる舞台裏に迫るドキュメンタリーです。
表参道のメゾン・マルジェラ, Public domain, via Wikimedia Commons.
「1人では成し遂げられなかった」と語るジェニーをはじめ、当時のスタッフたちは既成概念を打ち破るようなヴィジョンを共有し、まるで遊ぶように真剣に働くチームでした。日本の足袋からインスピレーションを得た名作「タビ」など、安いものでも独自の解釈でアップデートする才能は異彩を放っていたといいます。
参考:「タビ」のストーリー
ブランドの象徴である「4本の白いステッチ」は、斜めに配置された白いステッチで、ウェアやアクセサリーの外側にナンバリングロゴや無地のラベルを施したものです。ブティック経営の才覚を持つジェニーのアイデアに、マルジェラが賛同して生まれたものといわれています。
2005年秋冬 メゾン・マルジェラ「アーティザナル」トップス、ナイロンストッキング製 04, Public domain, via Wikimedia Commons.
匿名性を重んじ、メディアの前に顔を出さなかったマルジェラ。そのミステリアスな姿勢はスタッフの忠義心を高め、過熱するマスコミによって神秘化されていきました。しかし会社の規模拡大に伴い、情熱とビジネスとの両立に限界を迎えることになります。
本作では、周囲の「私たち(We)」の視点から、メゾンの激動の20年間が語られました。当時をもう一歩深く知りたいなら、マルジェラ本人がキャリアやクリエイティビティについて語った映画『マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”』もおすすめですよ。
『オートクチュール』(2022年)ファッションを知らなかった少女は、1着のドレスからエレガントを学んでいく
参照:『オートクチュール』(2022年)
「クリスチャン・ディオール」は、オートクチュール(高級注文服)から香水まで幅広く手掛ける、フランスのファッションブランドです。映画『オートクチュール』では、そのアトリエを舞台に、人生の迷子たちがファッションを通じて心を通わせていきます。
ディオールのオートクチュール部門でアトリエ責任者を務めるエステルと、スリとしてその日暮らしを送る移民の少女ジャド。最悪の出会いから始まった関係ですが、エステルがジャドの器用さに才能を見出し、見習いとしてスカウトしたことで運命が大きく動き出します。
育った環境も世代も価値観も異なるせいで、2人は衝突が絶えません。しかし、ジャドが驚くべきスピードで成長していく姿は、周囲の偏見をも覆していきます。
Christian Dior (モスクワ展覧会, 2011), Public domain, via Wikimedia Commons.
劇中では、ディオールの魂ともいうべき「バー」ジャケットや、オートクチュールの制作工程が美しく描かれました。美の裏側にある孤独、ヤングケアラーとして限界を迎えていた苦悩など、それぞれが抱える傷に寄り添いながら、彼女たちは1着のドレスに向き合っていきます。
『オートクチュール』において大喧嘩のきっかけになるなど、ディオールの香水は重要なアイテムとして登場します。ブランドの香りの世界を深めたいときは、新調香師のフランシス・クルジャンが「ジャドール(j'adore)」を再発明する1年間に密着したドキュメンタリー『Inside the dream Dior』も必見です。
映画でファッションとアートの混ざり合いを感じよう
世界的なメゾンを題材にした映画からは、衣服という枠を超え、ブランドやデザイナーの哲学、チームとしてのこだわりが感じられます。時に孤独と戦い、時にビジネスの壁にぶつかりながらも、彼らはクリエイティビティを信じ、時代を切り開いていきました。スクリーンを通じて、モードの美学とその裏にある人間ドラマをぜひ堪能してくださいね。
参考
・アンヌ・フォンテーヌ 監督『ココ・アヴァン・シャネル』(2009年)
・ヤン・クーネン 監督『シャネル&ストラヴィンスキー』(2009年)
・メンナ・ラウラ・メイール 監督『We Margiela マルジェラと私たち』(2019年)
・ライナー・ホルツェマー 監督『マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”』(2021年)
・シルビー・オハヨン 監督『オートクチュール』(2022年)
・マチュー・メニュー 監督『Inside the dream Dior』(2023年)
・ココ・シャネル - Wikipedia
・シャネルの創業者、ガブリエル シャネル | CHANEL シャネル
・「タビ」のストーリー
・メゾン マルジェラについて
・012. The Bar suit
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ライター。若手社会人応援メディアや演劇紹介メディアを中心に活動中。ぬいぐるみと本をこよなく愛しています。アート作品では特に、クロード・モネ《桃の入った瓶》がお気に入りです。




