EVENT
2022.9.15
監修者が語る「クマのプーさん」展の見どころとは?PLAY! MUSEUMで開催中!
現在PLAY! MUSEUMにて開催中のクマのプーさん展。状態の良い貴重なカラー原画がずらりと並んでいます。
今回、こちらの展覧会を監修した聖心女子大学教授 安達まみさんによるギャラリートークで貴重なお話を伺いましたので、ご紹介します。
石井桃子さんとプーさんの出会いは?
A. A. ミルンの『プー横丁にたった家』を翻訳したことでよく知られている石井桃子さんとプーとの出会いは1933年のクリスマスイブ。犬養毅邸の犬養家の子どもたちのために、ちょうど手に入ったばかりの英語版『プー横丁にたった家』を朗読しながら翻訳したことがきっかけだったそう。これが、プーさんの物語が日本で始めて子どもたちに紹介された瞬間だったかもしれませんね。
「石井桃子さんは本当に楽しい翻訳を編み出しており、日本の多くの子供達、大人達に幸せをもたらした方です。」と安達さん。
例えば、Gloomy Placeの「Gloomy」は陰鬱という意味ですが、石井桃子さんの素晴らしい翻訳によって「しめっ地」と訳されました。
クマのプーさん二人の作者
『クマのプーさん』シリーズの作者A. A. ミルンはもともとジャーナリストであり、『パンチ』という風刺雑誌の編集をしていました。また、劇作家という一面も。息子のクリストファー・ロビンが生まれてからは童謡詩の本を出すようになり、大変評判がよかったため、クマのプーさんの物語を出版することになりました。
挿絵は同じ『パンチ』誌で活躍していたE. H. シェパードが担当することに。それまではすれ違っていたミルンとシェパードでしたが、クマのプーさんを通して共に仕事をするようになります。
「はじめは、シェパードの挿絵を見たミルンがこれは採用、これはボツ、など指示していましたが、だんだんとあうんの呼吸で仕事ができるようになっていったんです。」
原画を見るポイントはここ!
あうんの呼吸で描かれた挿絵を見てみると、シェパードの工夫が多く見られます。
例えば、慰労会のシーンの原画。こちらにはクリストファー・ロビンがプーさんにプレゼントを渡している光景が描かれています。まわりには仲間たちも集まって「なんだなんだ?」とプレゼントに近寄っています。テキストには描かれていませんが、自分の慰労会だと勘違いをしていたイーヨーがショック冷めやらぬ表情で落ち込んでいたり、また、ピグレットが先程まで座っていた椅子がプレゼント見たさで飛び降りたのでしょう、倒れていたりします。これらが、シェパードの機転によって描かれたものです。
また、安達さんはこの挿絵を何度も見たことがあったそうですが、原画を見ることで気がづいたことがあったそう。
「うさぎにはたくさんの親戚・お友達がおり、みんなプレゼントの方へ駆け寄ってきているのですが、一匹だけ、テーブルのご飯を未練がましく食べているうさぎがいたんです!」
原画をよく見ると、たしかに一匹だけうさぎがご飯を食べている様子が描かれています。こちらも本文中に記載はなく、シェパードが物語から着想を得て描いたものだとわかります。
会場には、物語とともに原画を展示しているところもあるので、テキストと挿絵を見比べながら見れば、こういったシェパードの工夫が見つけられるかも知れません!
ミルンのテキストとシェパードのあうんの呼吸によって描かれたワンシーン、ぜひ近寄って見てみてくださいね。
アッシュダウンの森を感じよう!
『クマのプーさん展』には原画だけでなく、イングランド南部、アッシュダウンの森のインスタレーション作品も展示されています。こちらでは、アッシュダウンの森の音・映像・香りに包まれてプーさんの舞台となった現在のアッシュダウンの森を全身で感じることができます。
アッシュダウンの森は、作者ミルンも幼い頃、父と兄と徒歩旅行した場所でもあるそうです。
子どもたちはいつも長靴を履いている?
「アッシュダウンの森のあたりは、秋から春まで足元がぬかるんでいるので、年がら年中長靴を履いているんです。ちょうどAtoZのCの部分に展示されているようなブーツを履いて、この地方に住む子どもたちは暮らしています。」
個人的に、クリストファーロビンはレインコートを着て長靴をよく履いているイメージがあるのですが、それはアッシュダウンの森がぬかるみ、比較的降水量が多いからなのかもしれません。クマのプーさんの世界が、ぐっと現実の世界に近づいた気持ちになります。
インスタレーション作品の映像では、プーたちが『プーぼうなげ』を楽しんだ木の橋を、子どもたちが楽しそうに渡る様子が見られました。今もプーさんの世界は存在しており、子どもたちはプーさんの世界を今も生きているのだということが伝わります。プーさんのカラー原画を間近で見ることができ、さらにプーさんの現在の世界を体感できる貴重な機会ではないでしょうか。
『クマのプーさん』展は、立川PLAY! MUSEUMで開催後、名古屋市美術館へ巡回します。この機会にぜひ訪れてみてくださいね。
展覧会情報
会 期:2022 年 7 月 16 日(土)−10 月 2 日(日)
*本展は 2022 年 10 月 8 日(土)―11 月 27 日(日)名古屋市美術館へ巡回予定
会 場:PLAY! MUSEUM
東京都立川市緑町 3-1 GREENSPRINGS W3 棟 2F
TEL:042-518-9625
開館時間:10:00−18:00(1 時間毎の日時指定制を導入)
入 場 料:一般 1,800 円 大学生 1,200 円 高校生 1,000 円 中・小学生 600 円(税込)
*特典つき
https://play2020.jp/
画像ギャラリー
あわせて読みたい
-

EVENT
2026.06.24
【東京・大阪】『大英博物館日本美術コレクション 百花繚乱〜海を越えた江戸絵画』イギリスから初里帰り作品も!
明菜
-

EVENT
2026.06.19
【大阪市立美術館】『水滸伝』歌川国芳の出世作を一挙公開!亀梨和也さん音声ガイドも
明菜
-

EVENT
2026.06.15
【取材レポート!】文字から作品を読み解くともっと面白い。『はじめての古美術鑑賞 ―美術のなかの文字―』|根津美術館
はろるど
-

EVENT
2026.06.08
【会場レポート】約400点でたどる安西水丸の全仕事。PLAY! MUSEUMで新たな展覧会が開催中!【東京立川】
はろるど
-

EVENT
2026.06.05
【読者プレゼント/取材レポート】東京都美術館 アンドリュー・ワイエス展。自分の身近な人々と風景を描き続けた芸術家
ヴェルデ
-

EVENT
2026.06.02
【2026年6月のおすすめ展覧会5選】ピカソ、モネ、杉本博司から元禄文化へ。初夏に訪れたい注目展覧会
はろるど
このライターの書いた記事
-

EVENT
2026.06.25
気鋭のアーティスト・杉田万智が描く現代の希望。新作個展「灯火」で触れる土地の記憶
イロハニアート編集部
-

EVENT
2026.06.21
【京都】浮世絵が動き出す!「KUNIYOSHI IMMERSIVE ART in 歌川国芳展」7月18日から京都市京セラ美術館で開催
イロハニアート編集部
-

EVENT
2026.06.20
【名古屋】岐阜の伝統工芸に触れる夏のワークショップ「岐阜提灯&ぼんぼり 絵付け体験」7月25日開催
イロハニアート編集部
-

EVENT
2026.06.19
【阪急うめだ本店】ヘラルボニー「HERALBONY ART PARK」で17名の作家による原画と出会う。”予定調和のない”創作体験も。
イロハニアート編集部
-

EVENT
2026.06.18
【虎ノ門】日常が奇妙な違和感に変わる瞬間。佐藤雅晴『REAL≒UNREAL』で体験する、映像と平面の美しい越境
イロハニアート編集部
-

EVENT
2026.06.14
【ポーラ美術館】セザンヌ没後120年記念「セザンヌ・レジェンド」展―ゴッホ、ピカソ、マティスも集結。
イロハニアート編集部

アートをもっと自由に、もっとたくさんの人に楽しんでもらいたいという想いから生まれたメディア。日々、アートのイロハが分かるコンテンツを配信しています。アイコンは「イロハニくん」。アートのそばに、ひっそりと棲んでいます。
アートをもっと自由に、もっとたくさんの人に楽しんでもらいたいという想いから生まれたメディア。日々、アートのイロハが分かるコンテンツを配信しています。アイコンは「イロハニくん」。アートのそばに、ひっそりと棲んでいます。
イロハニアート編集部さんの記事一覧はこちら








