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2024.4.4
【京都4/20〜】破壊された壁画の新たな描き起こし図が公開『バーミヤン大仏の太陽神と弥勒信仰』
龍谷大学 龍谷ミュージアムにて、春季特別展『文明の十字路・バーミヤン大仏の太陽神と弥勒信仰-ガンダーラから日本へ-』が開催されます。会期は4月20日(土)〜6月16日(日)です。
アフガニスタンのバーミヤンは「文明の十字路」とも呼ばれ、特に紀元6世紀〜13世紀にかけてユーラシア各地の文化が行き交った地域です。2体の巨大な仏像や壁画がよく知られていましたが、2001年、イスラム原理主義組織・タリバンによって爆破されてしまいました。
弥勒菩薩立像 1軀 片岩 ガンダーラ 3~4世紀 高62.1 cm
あれから20年以上が経つとは信じられないほど、はっきりと記憶に残っている出来事です。本展では、失われた壁画の新たな描き起こし図や、中央アジアで発展した弥勒信仰が東アジアに広がっていった様子が紹介されます。
日本で暮らしていると、ガンダーラや中央アジアの仏教美術に触れる機会はあまり多くないと思います。本展は新たな学びを得られるチャンスになりそうで、私もとても楽しみにしている展覧会です。
見どころ①破壊された壁画の新たな描き起こし図
重要文化財 玄奘三蔵像 1幅 絹本着色 鎌倉時代 135.5×90.0 cm 東京国立博物館 (展示期間:4月20日~5月6日) Image: TNM Image Archives
バーミヤン遺跡はヒンドゥークシュ山脈の中にあります。渓谷の崖面に数多の石窟と2体の巨大な大仏が彫られた遺跡は、写真や映像で誰もが一度は目にしたことがあるのでは。
しかし2001年の爆破により、大仏とその周囲に描かれていた「太陽神」や「弥勒」の壁画も失われました。
東大仏龕天井壁画 描き起こし図 宮治昭 監修・正垣 雅子 筆 1幅 紙本墨画 2022年 114.7×145.4 cm
本展では、失われた壁画の新たな描き起こし図が展示されます。過去に日本の調査隊が撮影した写真や調査資料を元に制作されました。
監修は、仏教美術をご専門とする名古屋大学・龍谷大学名誉教授の宮治昭先生です。『バーミヤーン、遥かなり : 失われた仏教美術の世界』(NHKブックス)などのご著書も出版され、現地調査を含めインド・中央アジア仏教美術の研究に長く携わっていらっしゃいます。
線図の描き起こしを担ったのは、京都市立芸術大学の正垣雅子先生。壁画を含めた絵画模写をご専門とされています。
西大仏龕壁画 描き起こし図(中央部) 宮治昭 監修・正垣 雅子 筆 1幅 紙本墨画 2023年 163.2×188.7 cm
新たな描き起こし図の完成を記念して、本展ではその原図を展示し、壁画に表された太陽神と弥勒の世界に迫っていくとのこと。今は見ることができない文化財に触れられる、貴重な機会となりそうです。
#バーミヤン大仏壁画のみどころ① 東大仏の頭上に描かれた壁画の中央。これはゾロアスター教の太陽神・ミスラ。なぜ、大仏の頭上に異教の神が描かれたのでしょうか…。このことが受容された当時のバーミヤン、そこに暮らした人々の思いも想像してみましょう。 pic.twitter.com/wGaLP2WVjL
— 龍谷大学 龍谷ミュージアム (@ryukokumuse) March 13, 2024
同館公式Xでは、画像とともに見どころが解説されており、こちらも必見です。
見どころ②日本にも広がった弥勒信仰
弥勒菩薩交脚像 1軀 片岩 ガンダーラ 2~3世紀 高62.0 cm 平山郁夫シルクロード美術館
さて、本展の大事なキーワードのひとつとなるのが「弥勒(みろく)」です。未来仏である弥勒は、約56億7千万年後にこの世に現れ、人々を救うとされています。
弥勒菩薩来迎図 1幅 絹本着色 南北朝時代 117.9×41.9 cm 奈良国立博物館 (展示期間:4月20日~5月19日)
この未来仏を信仰するのが「弥勒信仰」で、中央アジアで発展し、東アジアへと広がっていきました。
本展では、彫刻や絵画を通し、弥勒信仰が東アジアへ広がる様子を学ぶことができます。
見どころ③関連イベント・音声ガイドで学びを深めよう
スーリヤ柱頭 1箇 片岩 ガンダーラ 2~3世紀 高11.0 cm、幅49.2 cm 平山郁夫シルクロード美術館
ガンダーラや中央アジアの仏教美術に日頃からアンテナを張っている……という方は少ないと思いますし、本展について「なんだかアカデミックで難しそうだなあ」と感じている方も多いのでは。
馴染みが無い内容の展覧会こそ、新たな学びや楽しさを得るチャンス。関連イベントや音声ガイドをフル活用し、知的世界を広げる機会としてはいかがでしょうか。
\速報/ 春季特別展「文明の十字路・バーミヤン大仏の太陽神と弥勒信仰」(4月20日開幕)の音声ガイドを人気声優・歌手の保志総一朗さんが担当されることになりました! 保志さんのあの声で聞く、仏教美術の魅力… 今から楽しみ! pic.twitter.com/VeAvLR7sv7
— 龍谷大学 龍谷ミュージアム (@ryukokumuse) March 1, 2024
音声ガイドのナビゲーターは、声優・歌手の保志総一朗(ほし・そういちろう)さん。アニメ『機動戦士ガンダムSEED』(キラ・ヤマト役)、TVアニメ「異修羅」(鵲のダカイ 役)で知られ、アニメ、ゲーム、洋画吹き替え、ラジオ、CMなど幅広く活躍されていらっしゃいます。
また、関連イベントも多数開催。4月28日(日)に開催される宮治先生の講演「釈迦・転輪聖王・弥勒の信仰と美術-ガンダーラから中国へ」(仮)など、多彩な学びの機会が設けられています。
展覧会情報
文明の十字路・バーミヤン大仏の太陽神と弥勒信仰―ガンダーラから日本へ―
会期:2024年4月20日(土)〜2024年6月16日(日)
会場:龍谷大学 龍谷ミュージアム
時間:10:00〜17:00(最終入館時間 16:30)
休館日:月曜日(ただし、4月29日(月)、5月6日(月)は開館)、4月30日(火)、5月7日(火)
展覧会特設ページ:文明の十字路・バーミヤン大仏の太陽神と弥勒信仰―ガンダーラから日本へ―
画像ギャラリー
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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