EVENT
2024.4.8
【東京4/27〜】江戸時代の手描き図鑑?「殿さまのスケッチブック」が開催
永青文庫にて、初夏展「殿さまのスケッチブック」が開催されます。会期は4月27日(土)〜6月23日(日)です。
「毛介綺煥(もうかいきかん)」(部分)江戸時代(18世紀)永青文庫蔵 前期展示
展覧会タイトルにある「殿さま」とは、細川重賢(ほそかわ・しげかた、1720〜85)のこと。博物趣味に熱中した18世紀の大名のひとりで、動物や植物、昆虫などをスケッチさせた作品は、驚くほどの細かさで描写されています。
「艸木生写(そうもくいきうつし)」(部分)奥書:宝暦12年(1762)永青文庫蔵 後期展示
あらゆる生きものが描かれたスケッチブックは、さながら「手描きの図鑑」のよう。重賢が自然に向けたまなざしも感じられ、私もしみじみとした心地でこの記事を書いています。
本展では永青文庫が所蔵する全20件の「博物図譜」が、33年ぶりにすべて公開されます。殿さまが写し取った「リアル」を、皆さまもぜひご覧ください。
見どころ①全20件の博物図譜が33年ぶりに大公開
「艸木生(そうもくいき)うつし」(部分)奥書:宝暦11年(1761)永青文庫蔵 後期展示
熊本大学附属図書館や熊本県立美術館などで度々紹介されてきた永青文庫の博物図譜。同館で全20件が紹介されるのは、1991年の「殿様の博物学」展以来、33年ぶりとのことです。
そもそも日本の博物学は、中国の薬学・博物学である「本草学」の影響を受けて発達しました。18世紀には「博物趣味」に熱中する大名が多く現れ、その先駆けの一人が細川家熊本藩6代藩主の重賢です。
竹原玄路筆、谷口鶏口賛「細川重賢像」江戸時代(18世紀)永青文庫蔵
重賢は「肥後の鳳凰」と称されるほどの名君でありながら、動物や昆虫、植物などにも大いに関心を持ちました。参勤交代の道すがら、植物採集に勤しんだこともあったそう。
「群禽之図(ぐんきんのず)」(部分)江戸時代(18世紀)永青文庫蔵
重賢は博物学に没頭し、採集・飼育した動植物などを色つきでスケッチさせ、多くの博物図譜を作らせました。本展はその全貌を目にできる貴重な機会となりそうです。
見どころ②「毛介綺煥」全場面が一挙に展示
「毛介綺煥(もうかいきかん)」(部分)江戸時代(18世紀)永青文庫蔵 前期展示
さらに、「毛介綺煥(もうかいきかん)」の全場面も一挙に公開されます。毛介綺煥は、哺乳類や爬虫類、魚類などさまざまな動物の図が、名称、年月日、場所とともに記録された図譜です。
「毛」と「介」には動物や貝類、「綺」と「煥」にはうつくしい・光かがやくさま、という意味があります。その名のとおり、あらゆる生きものが鮮やかに描かれています。
「毛介綺煥(もうかいきかん)」(部分)江戸時代(18世紀)永青文庫蔵 後期展示
本展は、全場面を通覧できる初めての機会。見た目にインパクトがあって有名な「アサヒガニ」や「ニホンオオカミ」の図を含む裏面は前期、「ヤマネ」「アナグマ」の図を含む表面は後期に公開される予定です。
「毛介綺煥(もうかいきかん)」(部分)江戸時代(18世紀)永青文庫蔵 前期展示
私はオオカミが大好きなので、特にニホンオオカミの図に注目しています。現在は絶滅したとされる動物ですが宝暦8年(1758)の年記とともに、胴や顔、足の長さが記録されているとのこと。とても貴重な資料ですよね。
見どころ③実物の動植物の写真と比べてみよう
「群芳帖(ぐんぽうじょう)」(部分)江戸時代(19世紀)永青文庫蔵
会場では、作品に登場する動植物の写真も紹介されます。実物と比べながら、図譜の描写を観てみましょう。
脚色によって美を高められる芸術作品と異なり、同植物のスケッチでは客観性や正確性が大切です。実物の写真と見比べることで、いかに緻密に表現されているかを識ることができそうです。
また、重賢が同植物のどんな部分に惹かれたのか、想像しながら作品を観るのも面白そうです。
展覧会情報
令和6年度 初夏展「殿さまのスケッチブック」
会期:2024年4月27日(土)〜6月23日(日)
※会期中、一部場面替えあり
◎前期 4月27日~5月26日
◎後期 5月28日~6月23日
会場:永青文庫
時間:10:00〜16:30(最終入館時間 16:00)
休館日:毎週月曜日(ただし4月29日・5月6日は開館し、4月30日・5月7日は休館)
美術館公式サイト:永青文庫
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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