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2024.10.5
【東大阪市チームラボ】常設作品が10/5(土)オープン。大阪製罐の工場の一部が草むらとアートの空間へ
10月5日(土)、大阪製罐(おおさかせいかん)の敷地内に「カンカン工場の草原のカフェ」と「チームラボ:風と雨と太陽の草原」がオープンしました。チームラボの作品が大阪府内に常設されるのは、長居植物園に続いて2つめです。
主にお菓子の「カンカン」の製作を手がける大阪製罐は、今年で創業77年目となる老舗の企業。このたび製缶工場の一部を取り壊し、チームラボの手がける空間が誕生しました。
さまざまな工場が立ち並ぶ東大阪市の一角に現れたのは、まさかの"草原"。昼の部・夜の部があり、カフェ利用者のみが草原とチームラボの作品を体験できます。
作品群のテーマは、チームラボが提唱するコンセプト「環境現象」です。光や空気のように、この世界にあるけれど目に見えないものや手で触れられないものの"存在"が、作品の肝となります。作品や美術品という言葉には「物体」のイメージがありますが、チームラボは「物体」の垣根をどんどんはみ出していくようです。
まんまるの虹が見られる《太陽の円相》をはじめ、作品たちは私たちが暮らしているこの世界を新たな角度で映し出します。どんな作品が見られるかは、天候と時間帯しだい。昼と夜で異なる顔を見せる《風と雨と太陽の草原》を、さっそく体験してきました。
太陽の光を肌に浴びる昼の部
さて、私にとってチームラボの印象は、チームラボボーダレスなどの屋内の展示や、長居植物園の「チームラボ ボタニカルガーデン 大阪」のような夜間の展示です。暗い空間で作品が光を放つイメージがあるので、今回は空高く太陽が昇る時間帯の「昼の部」がある、ということ自体が衝撃でした。
白い彼岸花が咲く小道をざくざく分け入ると、一面に広がる草原のような草むらが! 太陽の光が降り注ぎ、風が通るたびに草がさわさわと音を立てます。空が広く、ここが工場の敷地内であることを忘れてしまいました。
《太陽の円相》は、風のない晴天の真太陽時の正午頃(11:30〜12:30)が鑑賞に最適な条件。取材日は奇跡的にこの条件にぴったりと当てはまり、階段の上から綺麗な円形の虹を見ることができました。
10月5日オープンの「カンカン工場の草原のカフェ」「チームラボ:風と雨と太陽の草原」の報道内覧会へ行ってきました!
— 明菜(物書き、美術ライター) (@Akina_art) October 3, 2024
お伺いした10/2は気持ちの良い晴天で、《太陽の円相》はまんまるの虹をバッチリ映してくれました🌈#チームラボ風と雨と太陽の草原 #teamLabField pic.twitter.com/QKSrScgcwG
自然の虹は半円形ですが、ここでは人間の工夫によって円形の虹が生まれます。光源は太陽なので、作品は単なる人工物ではありません。人が自然を歪めることはなく、自然と知的生命体がありのままに存在できる、チームラボらしい作品だと感じました。
ただし! 太陽が出ない雨天や曇天、風の強い日などは綺麗な虹が出ないそう。「作品が見られるか見られないかは当日の天候しだい」という、一般的な美術館では許されない設計すらも楽しめるって、豊かなことだな…などと考えながら「カンカン工場の草原のカフェ」で水出しの緑茶をいただきました。
空を泳ぐ《風と太陽の空書》と草原を一望できるカフェでは、兵庫県尼崎市の洋菓子店リビエールのパティシエがプロデュースするスイーツなどもいただけます。
今やクッキー缶が大人気で全国的に有名なリビエールですが、大阪製罐の缶だったとは知りませんでした。カンカンが繋いだご縁で生まれたカフェ…といっても過言ではないかもしれません。
光と闇が生み出す魔法の夜の部
日没後は、夜しか見られない作品を楽しめるように。日中は透明なガラスの石庭として、太陽の光を反射して輝いていた《太陽の海》が…
宝石箱をひっくり返したような彩りに! 近くにいる人の動きに呼応するのか、至る所から波紋が広がるように光の色が変わっていくその景色は、魔法がかかったように幻想的でした。
作品は、ガラス工場の溶解炉から出る、炉内残留ガラスが砕かれて出たガラスの岩石からできている、とのこと。本来は溶かして再利用したり、処分したりされる素材が使われています。
《生命は闇の海に生まれる微小な光》は、草むらで生まれた光が草を軌道に飛び立つような作品。
— 明菜(物書き、美術ライター) (@Akina_art) October 3, 2024
動画では空間の一部しかご紹介できませんが、広々とした敷地の全体が呼応するように光が生まれて消えていきます…
感動的な光景なので、ぜひ見てほしい…!#チームラボ風と雨と太陽の草原 #teamLabField pic.twitter.com/ETBT47VeKO
草むらのなかを歩いていき、ふと立ち止まると、またもや幻想的な光景に出会いました。《生命は闇の海に生まれる微小な光》です。
草むらで生まれた柔らかい光が飛び立ち、闇に帰っていくような作品で、あたり一面に現れた光はまるで地上の流星のようでした。儚く消えていく優しい光に、私には見えないその先があるように…と願わずにはいられませんでした。
飛び立つ光をぼうっと眺めているとき、まさかと驚きました。涙が頬を伝う感覚があったからです。
私もいちおう仕事優先で報道向けの内覧会に行くので、普段は感動のスイッチをオフできるのですが、今回はダメでした…。涙を拭う動きすら周りに悟られたくなくて、流れるままに放置。夜の暗さのおかげで、おそらく見られてはいないでしょう…。(ここに書いた時点で周知の事実となるわけですが)
涙が乾かないうちに、「カンカン工場の草原のカフェ」へと移動。《共鳴する茶 - 動的平衡色》を体験しました。コップにお茶が注がれると光が満ち、近くにあるお茶や、カフェからも見える《生命は闇の海に生まれる微小な光》にも影響を与えます。
いちじくを使ったタルトもいただきました。チームラボの作品を鑑賞しながら、美味しいスイーツをいただける、これ以上なく贅沢な空間です。
昼の部・夜の部共通で、カフェ内の作品《銅の化石》《光の海とそのための台座》を見ることができます。
いずれも大阪製罐による作品。お菓子のカンカンのみにとどまらず、空間演出も手がけられるのでは? と未来の展望も感じられました。
【まとめ】予約制で味わうカフェとチームラボ
長居植物園の記事でも書いたのですが、チームラボは「そこにあるのに見えない・触れられないものを、どうすれば知覚できるか」に挑戦しているように思います。
関連記事:夜の植物園に常設のアートが!『チームラボ ボタニカルガーデン 大阪』
日常的な五感の刺激とは違った方法で、感覚や感性を刺激されるから、感傷的な心地になったり、ドキドキワクワク心が踊ったりするのではないでしょうか。
ものづくりを行う工場で、物体として知覚できない環境現象を扱うアイデア自体も面白く、自由であるように感じます。
入り口のアスファルトを突き破り、何かが出てきそうな気配も。秋が深まる頃には新たな楽しみも生まれていそうです。
展示情報
チームラボ:風と雨と太陽の草原
会期:2024.10.05(土) - 常設
開館時間
◎10:30-16:30(最終入場15:40)
◎18:30-21:30(最終入場 20:40)
* 本展は、「カンカン工場の草原のカフェ」をご利用の方のみ体験いただけます。
* 時間や天候によって、体験可能な作品が異なります。
休業日:火曜日、水曜日
住所:大阪府東大阪市岩田町2丁目3−2
風と雨と太陽の草原 公式サイト
カンカン工場の草原のカフェ 公式インスタグラム

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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