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EVENT

2025.5.28

「最後の浮世絵師」、鰭崎英朋の魅力とは?太田記念美術館にて大規模な回顧展が開催!

東京・神宮前の太田記念美術館にて『鰭崎英朋』が、2025年5月31日から開催されます。明治後期から昭和にかけて活躍し、「最後の浮世絵師」とも呼ばれる鰭崎英朋(ひれざき・えいほう/1880~1968年)の活動や魅力を紹介する展覧会です。

柳川春葉『誓』前編 口絵(朝日智雄氏蔵)柳川春葉『誓』前編 口絵(朝日智雄氏蔵) 前期展示

小説の単行本や雑誌の挿絵などで人気を集める

泉鏡花『続風流線』 口絵(朝日智雄氏蔵) 前期展示泉鏡花『続風流線』 口絵(朝日智雄氏蔵) 前期展示

1880年(明治3年)に東京の京橋(現在の中央区)に生まれた鰭崎英朋。浮世絵師・月岡芳年の門人である右田年英に師事して浮世絵を学びます。

1901年には鏑木清方らとともに美術団体「烏合会」を結成するなどして活動し、同会が解散された後も、小説の単行本や文芸雑誌の口絵や表紙、挿絵を描いて大衆の心をつかみました。また相撲の取り組みを描いた相撲絵も得意としていました。

しかしその功績は残念ながら現在、ほとんど語られることがありません。よって本展では、浮世絵版画が大衆の暮らしと共にあった最後の時代に、英朋がどのような活躍をしたのかを作品とともに紐解いていきます。

187点の作品による大回顧展!主な見どころ紹介

柳川春葉『かたおもひ』三巻 口絵(朝日智雄氏蔵)柳川春葉『かたおもひ』三巻 口絵(朝日智雄氏蔵) 後期展示

それでは展覧会の4つの主な見どころをご紹介します。

①浮世絵、最後の美人画。英朋の妖艶な美の世界とは?

柳川春葉『誓』中編 口絵(朝日智雄氏蔵)柳川春葉『誓』中編 口絵(朝日智雄氏蔵) 後期展示

英朋は小説の単行本や文芸雑誌の口絵において、妖艶な美しさを漂わせる女性たちの姿を多く描きました。その人気は、近代を代表する美人画家として知られる鏑木清方と並び称されるほどでした。

大正時代は浮世絵版画が大衆向けメディアとしての役割を終えようとしていましたが、英朋は木版画における美人画を手がけた最後の絵師ともいえます。浮世絵版画の歴史の終わりを飾る、英朋の妖しく艶やかな美人画の魅力に迫ります。

②知られざる石版画をたっぷりと紹介!

「子守り」校正摺(弥生美術館寄託)「子守り」校正摺(弥生美術館寄託) 後期展示

木版画の口絵と同時に、石版画の口絵も数多く手がけた英朋。しかし石版画の口絵については、これまでほとんど紹介されてきませんでした。

よって本展では、英朋の画業の全貌を明らかにするために、木版画だけでなく石版画も余すことなくたっぷり紹介します。大衆向け娯楽の地位を、浮世絵版画から奪ったとされる石版画を堪能しましょう。

③木版画や石版画、肉筆画など、187点の作品を展示

本展で公開されるのは全部で187点(前後期で全点展示替え)。しかも刊行された木版画や石版画だけでなく、原画や彩色の指示をした絵(差し上げ)など、英朋がどのように作品を仕上げていたのかが分かる作品もあわせて展示します。また珍しい掛軸や、英朋の息遣いが伝わるスケッチにも注目です。

④現存最古の肉筆画「上杉謙信」を初公開

「上杉謙信」(大和明氏蔵)「上杉謙信」(大和明氏蔵) 前期展示

最新の調査や研究により、若い英朋の貴重な肉筆画が発見されました。これまで現存する最古の肉筆画は22歳の時の作品とされていましたが、今回はそれを2年上回る20歳の時のもの。タイトルは「上杉謙信」です。

これは第9回日本絵画協会第4回日本美術院連合絵画共進会に出品され、褒状2等を受賞した作品で、若かりし頃の英朋の才能の片鱗をうかがうことができます。※前期(5/31〜6/25)に初公開。

英朋の画業を掘り下げるスライドトークも開催!

「有明」『新婦人』第2巻5月之巻 口絵(朝日智雄氏蔵)「有明」『新婦人』第2巻5月之巻 口絵(朝日智雄氏蔵) 後期展示

最後にイベントの情報です。会期中に学芸員によるスライドトークが行われます。

【学芸員によるスライドトーク】
開催日時:2025年6月3日(火)、6月18日(水)、7月2日(水)、7月11日(金)、7月15日(火) それぞれ10:50〜
※各回30分程度 定員50名
会場:太田記念美術館 視聴覚室(B1)
参加方法:10:30より美術館受付にて整理券を配布します。展覧会入場券ご購入時にお申し出ください。聴講には「鰭崎英朋」展の当日入場券と整理券が必要です。
※申し出のない場合整理券はお渡ししません。整理券は展覧会に入場の方1名につき1枚まで。

「秋の声」『婦女界』第22巻第3号 表紙原画(朝日智雄氏蔵)「秋の声」『婦女界』第22巻第3号 表紙原画(朝日智雄氏蔵) 後期展示

英朋の描く女性は気品があり、どこかしっとりとした美しさが感じられます。それでいて親しみやすく、時に劇画を思わせるような動きのある表現も魅力といえます。

かつて清方と双璧をなすほど人気を集めながら、時代の狭間に埋もれてしまった鰭崎英朋の作品を、太田記念美術館の展覧会にて目に焼きつけてください。

展覧会情報

『鰭崎英朋』 太田記念美術館
開催期間:2025年5月31日(土)~7月21日(月・祝)
※前期 5月31日(土)~6月25日(水)、後期 6月28日(土)~7月21日(月・祝)※前後期で全点展示替え
所在地:東京都渋谷区神宮前1-10-10
アクセス:JR山手線 原宿駅(表参道口)より徒歩5分。東京メトロ千代田線・副都心線 明治神宮前駅(5番出口)より徒歩3分。
開館時間:10:30~17:30 ※入館は17時まで
休館日:6月2、9、16、23、26、27、30,7月7、14日
観覧料:一般1200円、大高生800円、中学生(15歳)以下無料
※リピーター割引:会期中2回目以降にご鑑賞の方は半券のご提示にて200円割引
美術館HP:太田記念美術館

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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

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