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2022.3.11
幕末にヒーローを、民衆にグロテスクを。『挑む浮世絵 国芳から芳年へ』
幕末から明治の「芳」の系譜をたどる、『挑む浮世絵 国芳から芳年へ』が京都文化博物館で開幕しました。
本展で展示されるのは、名古屋市博物館が誇る浮世絵コレクションのうち、歌川国芳と月岡芳年を中心とした150点。幕末から明治にかけて活躍した彼らの作品は、時代の不安や混乱を反映するかのように、「キワドイ」作品が多いのです。規制をかいくぐって世相を風刺する戯画や、怖すぎてお腹が痛くなってくる血みどろ絵など、さまざまな作品を見ることができました。
この記事では、国芳と芳年の2人の絵師に焦点を当て、展覧会の見どころを美術ライターの明菜が紹介していきます。
奇想の絵師、歌川国芳
歌川国芳「通俗水滸伝豪傑百八人之一人 花和尚魯知深初名魯達」文政10年(1827)頃 名古屋市博物館蔵(高木繁コレクション)
歌川国芳(1797-1861)といえば、魔物を退治する勇ましい英雄を描いた武者絵がよく知られています。水滸伝の豪傑たちを描いた連作が有名ですが、背景となる作品を知らなくても楽しめる迫力です。ゆがんだ表情とムキムキの肉体は、現代のマンガのように誇張されています。
歌川国芳「相馬の古内裏」弘化2~3年(1845~46)頃 名古屋市博物館蔵(高木繁コレクション)
もうひとつ、国芳といえば3枚の絵をセットにした横長の作品です。当時の浮世絵は、生産効率を高めるため、紙のサイズが決まっていました。規定のサイズの紙を横に3つつなげることで、1枚では成し得ない、迫力のある作品を多数生み出しました。
歌川国芳「里すゞめねぐらの仮宿」弘化3年(1846)名古屋市博物館蔵(高木繁コレクション)
国芳は動物を擬人化して世の中をおもしろく描くなど、ユーモラスな戯画も数多く制作しました。これらは笑える作品ですが、なかには「幕政を風刺している」と噂になったものも。権力の圧力や幕末という不安定な時代を生きた芸術家として、規制をかいくぐってでも、世間を描かなければならなかったのではないでしょうか。
最後の浮世絵師、月岡芳年
国芳の弟子のひとりである月岡芳年(1839-92)も、幕末から明治にかけて活躍しました。日本が固有の文化を脱ぎ捨てて、欧化していく時代を生き抜いた絵師で、「最後の浮世絵師」と呼ばれることがあります。
月岡芳年「英名二十八衆句 福岡貢」慶応3年(1867)名古屋市博物館蔵(尾崎久弥コレクション)
近年、再評価されつつある芳年の代表作といえば、血みどろ絵です。本展では、リアルな流血が描かれた「英名二十八衆句」(落合芳幾と月岡芳年による)が、全点一挙公開されます。
「血みどろ絵」なので、やはり「血」の表現に非常に力が入っておりまして。赤い絵の具に膠(ゼラチン)を混ぜて、テカテカ、ヌラヌラとした血液の質感を表現しています。
ちなみに、血が苦手な人は見ないで次の展示室に移れるようになっております。映画や漫画の拷問シーンなど、残酷描写が苦手な人は注意したほうが良いかもしれません……。
月岡芳年「古今比女鑑 秋色」明治8~9年(1875~76)名古屋市博物館蔵(尾崎久弥コレクション)
一方、芳年は美人画もうまいと感じました。日常生活を送る女性のふとした瞬間が描かれているのですが、だからこそ、ねっとりとした色気を感じられるのです。その一瞬を見逃さない、芳年の観察力の高さがうかがえます。
【まとめ】ショックを求めたのは絵師?民衆?
武者絵に戯画に美人画に血みどろ絵。国芳も芳年もさまざまな題材を描きましたが、いずれにも「ショッキング」という共通点があります。鑑賞者を驚かせたい、一瞬で魅了したい、という野心に溢れているのです。
絵画は鑑賞者を映す鏡なので、当時の民衆がこうした作品を求めた、と言い換えられます。彼らには、魔物をぶっ倒す英雄も、血みどろの残虐描写も必要でした。幕末から明治という時代がどんなに過酷な時代だったのか、「芳」の系譜は雄弁に語るのです。
展覧会情報
挑む浮世絵 国芳から芳年へ
会場:京都文化博物館
会期:2022年2月26日(土)~4月10日(日)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)
公式サイト:https://www.ktv.jp/event/idomuukiyoe/
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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