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2022.7.29
ドイツ・ケルンの美術館から選りすぐりの144点が来日!『ルートヴィヒ美術館展』レポート
ドイツ第4の都市であるケルン市が運営しているルートヴィヒ美術館は、20世紀初頭から現代までの美術作品を収集・紹介している美術館です。
そんなルートヴィヒ美術館の世界有数のコレクションから選りすぐりの144点がご覧になれる、『ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション』が六本木・国立新美術館にて開催中です。展覧会の内容をご紹介します。
ルートヴィヒ美術館とは?
左: カジミール・マレーヴィチ《スプレムス 38番》1916年 / 右:アレクサンドン・ロトチェンコ《宙づりの空間構成10番(光反射面)》
古来、ライン河沿いの交通の要衝として発展してきたケルンは、世界最大のゴシック建築であるケルン大聖堂や、ヨーロッパ最古の大学の一つであるケルン大学など、数多くの美術館や博物館などがある文化の薫り高い古都です。
1986年に開館したルートヴィヒ美術館の構想は、1976年に美術コレクターとして名高いペーター&イレーネ・ルートヴィヒがケルン市に、ピカソ、ロシア・アヴァンギャルド、アメリカのポップ・アートなど、約350点の作品を寄贈したことに遡ります。
また、1946年に同じくケルン市立のヴァルラフ=リヒャルツ美術館から、ケルンの弁護士であるヨーゼフ・ハウプリヒが寄贈したドイツ近代美術のコレクションを含む、1900年以降の作品が移管され、ルートヴィヒ美術館の基盤が整えられました。
今日、ルートヴィヒ美術館は、ヨーロッパで最大級のポップ・アートやパブロ・ピカソのコレクション、表現主義や新即物主義などのドイツ近代美術とその同時代のロシア・アヴァンギャルド、写真史を網羅する質・量ともに優れた写真コレクション、そして世界各地の現代美術の収集により、国際的にも高く評価されています。
美術を通じて歴史が分かり、歴史のなかに美術が見えてくる!
ルートヴィヒ美術館展 東京会場 会場風景 手前:エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー《ロシアの女》1912年
本展覧会では、文化・芸術を愛し守り、未来へと継承した、館名に名を冠するルートヴィヒ夫妻をはじめとする市民コレクターたちにより寄贈された、絵画、彫刻、写真、映像を含む144点の出品作品を紹介しています。
20世紀前半のふたつの世界大戦と戦後の復興、東西の分断と統一という激動の時代を経て、現在ではヨーロッパを牽引する国のひとつとなったドイツ。
会場では、ルートヴィヒ美術館の礎を築いた2名のコレクターを紹介する序章にはじまり、1970年代から2000年代の現代アートを紹介する7章までの全8章で構成されており、美術を通じて歴史が分かり、歴史のなかに美術が見える内容となっています。
「こんな作品があるんだ?!」という新たな発見が楽しめる作品や、「どこかで見たことあるかも!」という作品など、人間と社会、そして歴史に迫る珠玉の名作をお楽しみいただけます。
ネットで生き続けるハシビロコウ?!
特に筆者が驚いたのは、第7章『拡張する美術―1970年代から今日まで』で紹介されている、ポスト・インターネット・アートの先駆者のひとりであるカーチャ・ノヴィツコヴァの作品《近似(ハシビロコウ》(2014)です。
なんの変哲も無いハシビロコウの写真をプリントした本作品は、インターネットにアップされている画像を使用した「ネットの拾い絵」。
作家はネットから拾った動物の画像を立体作品にし、来場者が携帯カメラで撮影したものを、その後SNSにアップする行動を通して、作品=ハシビロコウはネットに還るという、一連のサイクルが続くことをコンセプトにしています。
ネットのなかで永遠に生き続けるハシビロコウ…なんだが奇妙であり、なんだか可哀想? デジタルタトゥーなどの語源が生まれる昨今、いろんなことを考えさせられる作品でもありました。
最後に…
20世紀前半のふたつの世界大戦と戦後の復興、東西の分断と統一という激動の時代を生き、未来を買ったコレクターたち。
困難な状況に翻弄されても負けずに立ち上がり、社会の新しい息吹に鼓舞された芸術家たちに目を向け、文化・芸術を愛し伝えていくその姿勢は、当時の人々にとって希望を与えたことでしょう。
そして、そんな彼らが守り抜いてくれた優れたコレクション144点が、一堂に会する大変貴重な機会となっています。
ぜひ会期中に本展覧会に足を運んでみてくださいね。
取材・撮影・文:新麻記子
『ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション』
会期:2022年6月29日(水)~9月26日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室2E(東京都港区六本木7-22-2)
開館時間:10:00~18:00 金・土は20:00まで*入場は閉館の30分前まで
休館日:毎週火曜日
ホームページ:https://ludwig.exhn.jp
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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。
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