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2025.1.15
有名作品が登場するアート映画のおすすめ3選!映画でアートに触れてみよう
「アートに興味はあるけれど、美術館に行ったり、専門書を買ったりするのはハードルが高い...」そう思ったことはありませんか?そこで今回は、有名作品が登場するアート映画を3本ご紹介します。どれも配信サービスで気軽に観られる作品なので、ぜひおうちじかんの参考にしてみてくださいね。
目次
有名作品が登場するアート映画①『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)
レオナルド・ダ・ヴィンチ『モナ・リザ』, Mona Lisa, by Leonardo da Vinci, from C2RMF retouched, Public domain, via Wikimedia Commons.
「美術館といえばルーヴル美術館、芸術家といえばレオナルド・ダ・ヴィンチ」そんな方は多いのではないでしょうか?『ダ・ヴィンチ・コード』は、そのどちらも楽しめる作品となっています。
ルーヴル美術館で撮影された世界初の作品
2006年公開の映画『ダ・ヴィンチ・コード』は、2003年に出版されたダン・ブラウンの同名小説が原作になっています。ルーヴル美術館で映画の撮影が許可された世界初の作品としても有名です。
映画は、ルーヴル美術館にて館長のジャック・ソニエールが銃殺されるシーンから始まります。パリで講演会をおこなっていた主人公、ロバート・ラングドン教授は、宗教象徴学の専門家として捜査に協力するよう求められます。しかし、警察はロバートを犯人だと考えていました。
ロバートに容疑者になっていることを知らせるのは、暗号解読官のソフィー・ヌヴー。亡くなったソニエールと深い関係にある彼女は、この映画最大の要です。
そしてロバートは、ソニエールが残したダイイングメッセージから、レオナルド・ダ・ヴィンチの名前と、絵の裏に隠された鍵を発見します。その鍵こそが、事件の真相に迫る唯一の手がかりであり、ロバートの冤罪を晴らす手段。彼はソフィーとの協力を決め、逃亡の旅を始めるのでした。
逃げる主人公・追う警察・暗躍する秘密組織が交わる、「何を守るか、何か信じるのか」を問う闘い。芸術、歴史、ミステリーと要素が詰まっていて豪華ですが、かなりグロテスクなシーンも出てくるため、苦手な人は注意してくださいね。
ダ・ヴィンチ作品と闇が活かされた映像
レオナルド・ダ・ヴィンチ《最後の晩餐》, Public domain, via Wikimedia Commons.
この映画では、数々のダ・ヴィンチ作品が登場します。銃殺されたソニエールが《ウィトルウィウス的人体図》を模した形に横たわっていたり、ダイイングメッセージを辿ると《モナ・リザ》《岩窟の聖母》にメッセージが残されていたり...。そして、物語最大の秘密が隠されている、ダ・ヴィンチの代表作《最後の晩餐》が登場するシーンでは、歴史好きならきっと知的好奇心を刺激されるはず!
さらにわたしは『ダ・ヴィンチ・コード』を鑑賞して、闇が印象的だと感じました。冒頭でソニエールが犯人から逃げ惑う際は、美術館の闇に浮かび上がる名作たちと、その中を逃げ惑う人という「静と動」が、これから待ち受けている重たい世界観へ、一気に観客を引き込むんです。
それに対し、事件が解決した後、ロバートとソフィーが語らうシーンには、これまでの暗さとは異なり、雨上がりのような明るさがありました。
映画ポスターには《モナ・リザ》が大きく掲載されていますが、どちらかというと《最後の晩餐》の方が登場シーンは多いため、《モナ・リザ》を楽しみたい方には合わない作品かもしれません。ただ、普段は見ることのできない、夜の美しいルーヴル美術館を鑑賞できる点はおすすめです。
有名作品が登場するアート映画②『太陽の塔』(2018)
月の世界 太陽の塔 大屋根 , Public domain, via Wikimedia Commons.
映画『太陽の塔』は、作品の魅力と謎に迫るドキュメンタリーです。1980年代、「芸術は爆発だ!」という言葉で注目を集めた岡本ですが、実は画家や写真家、思想家などの活動にも取り組んでいました。映画では、そんな岡本に影響を受けた専門家やクリエイター、計29名へのインタビューが収録され、そこから《太陽の塔》に込められたメッセージを解き明かしていきます。
4つの顔を持つ70メートルの塔
《太陽の塔》は、日本万国博覧会(1970年)のため、芸術家・岡本太郎によってデザインされました。塔の頂点にあり未来を象徴する「黄金の顔」、正面にあり現在を象徴する「太陽の顔」、背面にあり過去を象徴する「黒い太陽」、人間の精神世界を象徴する「地底の太陽」という4つの顔を持っています。
当時、博覧会のスローガン「人類の進歩と調和」を表現するために建設されたテーマ館において、大屋根を貫いてそびえ立つ70メートルの塔は、見る者に大きなインパクトを与えました。
岡本の言葉や他の作品について知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
《太陽の塔》初心者も没入できる世界観
正直なところ、わたしは《太陽の塔》に関する知識がほとんどなく、「映画を観ても楽しめないかも」と思っていました。しかし、難しい用語は丁寧に解説されている上、人々の語りによってストーリが構成されているため、飽きることなく世界観に没入できました。
29名のインタビューで浮かび上がるメッセージ
岡本太郎『明日の神話』, Public domain, via Wikimedia Commons.
わたしにとって印象的だった点が2つあります。1つ目は、29名それぞれが岡本や《太陽の塔》について豊かに表現する様子です。例えば、「岡本太郎記念館」2代目館長の平野暁臣さんは、「(作品を見て)日本人はぶったまげた」「楽観的な未来思考、技術礼賛、そういう価値観と真逆を向いているのが、たった1回万博史に刻まれていて、それが太陽の塔」と語ります。
他にも、ダンサーの菅原小春さんであれば、岡本が原子爆弾の炸裂した瞬間をイメージして描いた《明日の神話》の前でダンスを披露します。見る者に問いかける激しさと、現実を嘆く悲しさが混在したようなダンスは、まさに作品の背景にある思いを具現化していると感じました。
2つ目は、パリ留学時代に岡本が興味を抱いた「日本のオリジン(起源)」という考え方です。パリの博物館で民俗資料を見た彼は、衝撃を受けました。芸術家が作ったものではなく、その土地で生きている者が自ら作り上げたものに惹かれたのです。そして、岡本は「日本という泥にまみれるしかないんだ」と感じ、本当の日本のオリジンはどこにあるのか追い求めるようになりました。
「生き方そのものが表現」とすらいえる岡本と、彼を代表する芸術作品《太陽の塔》。どんな思いを込め、何と戦って作り上げたのか。映画を通じて、みなさんの中にその輪郭が浮かび上がるかもしれません。
有名作品が登場するアート映画③『ゴヤの名画と優しい泥棒』(2020)
ゴヤ『ウェリントン公爵の肖像』, Francisco Goya - Portrait of the Duke of Wellington , Public domain, via Wikimedia Commons.
『ゴヤの名画と優しい泥棒』は、ロンドンにあるナショナル・ギャラリーで起きた、フランシスコ・デ・ゴヤ《ウェリントン公爵の肖像》の盗難事件にまつわる、ウソのような実話を描いた映画です。ジム・ブロードベントとヘレン・ミレン、イギリスを代表するオスカー俳優が共演したことでも話題になりました。
名画にまつわるウソのような実話
1961年、イギリスのニューカッスル・アポン・タイン。60歳のタクシー運転手、ケンプトン・バントンは、妻ドロシー、次男ジャッキーと暮らす一方、社会的つながりを失った孤独な高齢者のために、公共放送BBCの受信料無償化を求めて熱心に活動しています。そんな中、受信料の支払いを拒んだ彼は、未払いの罪で13日間、収監されるのでした。
その後、ケンプトンはタクシー運転手の仕事を解雇されてしまいます。空いた時間を埋めるように取り組むのは、受信料無償化のための署名活動。しかし、署名は集まらず、穏やかな生活を望む妻にも激怒され、スクリーンの中には何もかも上手くいかないムードが漂っていきます。
同時期、イギリスでは、ゴヤの《ウェリントン公爵の肖像》が世間の話題で持ちきりでした。ニューヨークの実業家によって14万ポンドで落札されたこの作品を、ナショナル・ギャラリーのために政府が購入したのです。初めて展示されたのは1961年8月2日でしたが、19日後、作品は盗難されてしまいます。
ロンドン ナショナル・ギャラリー, The National Gallery, London, Undated, Public domain, via Wikimedia Commons.
このイギリス政府を震撼させる盗難事件の犯人として描かれるのがケンプトンです。彼は、盗んだ絵画の身代金14万ポンドで、高齢者のためにBBCの受信料を肩代わりしようと企てたのでした。しかし、事件にはもうひとつの真相が隠されています。これは映画を観るときの楽しみにとっておいてくださいね。
名画の「目」と心動かす陳述シーン
この映画では、《ウェリントン公爵の肖像》の「目」が効果的に用いられていると感じました。例えば、長男の恋人・パメラが、盗難された作品の所在を知ってしまうシーン。絵画が隠されたクローゼットは闇に包まれていますが、その中から濃い緑色の目が浮かび上がることで、観客の緊張感を一気に高めるのです。何度観てもこのシーンはハラハラするので、ぜひ体感してほしいと思います。
また終盤の法廷シーンも重要です。彼を取り巻く人々が見守る中、検察官や弁護士の質問に対し、ケンプトンがユーモアも交えながら陳述していきます。そこで登場するのが「あなたはわたし」という言葉。きっとケンプトンは、陪審員や傍聴人だけでなく、みなさんの心をも動かすことでしょう。
映画で感じるアートの世界!
今回は、有名作品が登場するアート映画3本をご紹介してきました。この記事がアートを楽しむ入口になったらうれしいです。早速、次のお休みは映画でアートに触れてみませんか?
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ライター。若手社会人応援メディアや演劇紹介メディアを中心に活動中。ぬいぐるみと本をこよなく愛しています。アート作品では特に、クロード・モネ《桃の入った瓶》がお気に入りです。