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2023.7.25
同館9年ぶりのミレー展『ミレーと4人の現代作家たち -種にはじまる世界のかたち-』が山梨県立美術館で開催中!
ジャン=フランソワ・ミレー《種をまく人》1850年 山梨県立美術館
山梨県立美術館で『ミレーと4人の現代作家たち -種にはじまる世界のかたち-』が開幕しました。会期は8月27日(日)までです。
ミレーの美術館として知られる同館がミレー展を開催するのは9年ぶり。開館45周年という節目に、開館当初からのコレクションである《種まく人》をはじめ、ジャン=フランソワ・ミレー(1814-75)の作品を収蔵品中心に展示します。
今回は4人の現代作家の作品も展示。淺井裕介さん、志村信裕さん、丸山純子さん、山縣良和さんの作品とミレーの作品が響き合い、現代に生きる私たちに問いを投げかけます。
見どころ①山縣良和さんのインスタレーションとミレー
山縣さんはwrittenafterwards(リトゥンアフターワーズ)を手掛けるファッションデザイナーであるとともに、ファッション表現の実験と学びの場としてcoconogacco(ここのがっこう)を主宰する教育者としての顔も持つ作家です。2020年頃からのパンデミックをきっかけに思索の旅に出た自身を、バルビゾン村に移住したミレーに重ねているそうです。
バルビゾン派の画家として知られるミレーが、その名の由来となったバルビゾン村に移住するのは、1849年のこと。コレラがパリを襲ったパンデミックがきっかけでした。農民の暮らしを描いた画家として広く知られていますが、自身の状況に応じて場所を移りながら、肖像画、神話画、宗教画、風景画など、さまざまなジャンルや画題に取り組んでいます。
本展ではミレーの各期の作品と山縣さんの作品がインスタレーションとして展示され、パッチワークのように両者が響き合って新たな一つの作品となる様子が鑑賞できそうです。
見どころ②淺井裕介さんとミレーの「大地」
淺井さんの迫力ある「泥絵」シリーズは、土と水で描かれていますが、土や水を採取する過程で出会った人々やボランティアの人々との交流など、その土地での体験が原動力となっています。
ミレーの《種まく人》は、発表当時、「まるで土で描かれているようだ」と評されたことも。ミレーの作品を象徴するモチーフである「大地」を共通項に、2人の作品が展示されます。
今回展示される淺井さんの作品には、山梨県内の神社、農地、美術館の敷地内で採取された土を用いるそうです。ミレーの作品とも交感しながら、空間全体をインスタレーションとして新たに作品を制作したとのこと。
見どころ③丸山純子さんのミレーの眼差し
丸山さんは身の回りのものを素材として用い、制作する作家です。本展では、かつて家屋であった木材や、レジ袋、廃油など、暮らしの中で使用され、役目を終えたものを用い、これらに再び命を吹き込むかのように新たな風景を現出させます。
ミレーも農村の家庭で見られる生活に関心を寄せていました。作品に見られる家事に従事する人々の姿からは、日常生活の尊さや、その生活が自然のサイクルの一部であることが伝わってくるようです。
本展は19世紀の農村の暮らしを描いたミレーと、現代の暮らしを見つめる丸山さんの眼差しが交差する展示となっています。時空を超えた交わりに、私たちは新たな気づきを得られるのではないでしょうか。
見どころ④志村信裕さん
映像を主な表現媒体として用いる志村さんの展示作品《 Nostalgia, Amenesia》では、フランス領バスクで営まれる羊とともにある生活の様子と、かつて御料牧場が営まれ、成田空港の建設とともに閉場した千葉県成田市三里塚で、立ち退きに抵抗し農業を営む男性の様子などが交互に映し出されます。
ミレーが描いてきた農村の人々にとっても、家畜の存在は欠かせないものでした。《羊の毛を刈る女》をはじめミレーが見つめてきた古くより変わらない労働と、志村さんが切り取る現代社会のイメージは交錯し、本展で新たなメッセージとなって私たちに迫る機会となりそうです。
展覧会情報
ミレーと4人の現代作家たち -種にはじまる世界のかたち-
会場:山梨県立美術館 特別展示室
会期:2023年7月1日(土)~8月27日(日)
休館日:月曜日(7月17日、8月14日は開館)、7月18日(火)
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
観覧料:一般1000円など
公式サイト:ミレーと4人の現代作家たち -種にはじまる世界のかたち-
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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