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2022.6.22
幻の作品が再発見!?松尾芭蕉が自筆した《野ざらし紀行図巻》一般公開へ
存在していることは確かなのに、数十年も行方不明になっている。どこかの誰かが持っているはずなんだけど……。美術の世界には、そうした「幻の作品」がたくさんあります。
一方で、ひょんなことから幻の作品が発見され、突然、人々の前に現れることも。松尾芭蕉による《野ざらし紀行図巻》も、そんな作品のひとつです。長らく行方不明になっていましたが、2021年12月、京都の福田美術館が収蔵しました。一般公開は同館にて2022年10月22日から。
本作は、芭蕉自らの手で俳句や文章が書かれているだけでなく、絵まで芭蕉が描いていることから、とても貴重な作品です。《野ざらし紀行図巻》とはどんな作品なのか、詳しく紹介していきます。
数少ない芭蕉直筆の作品
松尾芭蕉(1644-1694)といえば、「旅の俳人」とも呼ばれる江戸時代の俳諧師です。東北・北陸への旅を文章と俳句で記した『奥の細道』や、「古池や蛙飛びこむ水の音」などの名句で知られています。
《野ざらし紀行図巻》は、芭蕉が40代の頃の旅を素材にした紀行文です。江戸を出発して故郷の伊賀に帰省し、京都や名古屋を経由しつつ、江戸に戻るまでの旅路を記しました。『奥の細道』よりも前に書かれた作品です。
芭蕉自筆の「野ざらし紀行」で存在が確認されているのは、たった2点のみ。1つは天理大学附属天理図書館が所蔵する作品(通称、天理本)です。もう1つが、今回見つかって福田美術館に収蔵された作品(通称、福田本)です。
福田本のおもしろいところが、芭蕉自ら挿絵を描いていること。天理本に書かれているのは俳句と文章ですが、そのあとに書かれたとされる福田本には、絵も加わっているのです。
芭蕉はのちに絵を習うのですが、このときはズブの素人。親近感の湧くぎこちない筆運びや、美的センスが光る色づかいなど、芭蕉の素朴な絵心が見て取れます。筆者としては、俳句のプロなら俳句ですべて表現すれば良いのでは、と思うのですが、絵でなければ表現できない想いが芭蕉にあったのでしょうか。
芭蕉が描いた絵であることはほとんど確かなものの、なぜ絵を描いたのかは分かっていません。芭蕉が自発的に描いたのか、誰かから絵も描くように頼まれたのか。今後の研究にも注目です。
研究者すら見たことがない!?
どこの誰が持っているのか、いつどこで展示されたのかはよく分からなかったのですが、芭蕉の残した作品を450点あまり収録した『芭蕉全図譜』(岩波書店)などには、《野ざらし紀行図巻》の図版が掲載されてきました。「存在する」ということだけは広く知られていた作品です。
とにかく世に出る機会が極端に少ない作品であったことは確か。存命の芭蕉研究者ですら、ほとんどの人が目にしたことがないのです。
何十年ぶり?久々の一般公開へ
少なくとも約半世紀ぶりの公開となる松尾芭蕉の《野ざらし紀行図巻》。とにかく「久々」の一般公開なので、この機会を逃さず観に行きたいところ。貴重な機会であることだけ、どうか伝わってください〜!
《野ざらし紀行図巻》は、企画展『芭蕉と蕪村 蕪村と若冲』にて一般公開される予定です。
展覧会情報
芭蕉と蕪村 蕪村と若冲
会期:2022年10月22日(土)~ 2023年1月9日(月・祝)
○前期:2022年10月22日(土)~11月28日(月)
○後期:2022年11月30日(水)~2023年1月9日(月・祝)
会場:
○第一会場:嵯峨嵐山文華館
(https://www.samac.jp/ )
○第二会場:福田美術館
(https://fukuda-art-museum.jp/ )
※松尾芭蕉《野ざらし紀行図巻》は福田美術館にて、会期中は全期間展示される予定
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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