STUDY
2023.1.19
「ルーヴル美術館展 愛を描く」が待ちきれない!【第1回】注目作品『アモルの標的』の楽しみ方とは?
2023年3月1日から国立新美術館で開催される『ルーヴル美術館展 愛を描く』では、ルーヴル美術館に所蔵されている「愛」をテーマにした作品が数多く来日します。
どんな作品が日本に来るのか今から知っておきたい! という人に向けて、ローマの大学院で美術史を専攻している筆者が特に注目の作品を4点ピックアップ。第1回目となる今回の記事では、フランソワ・ブーシェの『アモルの標的』についてご紹介します。
Gustaf Lundberg, Public domain, via Wikimedia Commons
フランソワ・ブーシェはパリ生まれの画家で、当時のパリのアート界を牽引していた有力パトロンのポンパドゥール夫人から仕事を受けていたことでも知られています。
フランソワ・ブーシェはルーベンスなどの芸術家から影響を受け、初期の作品では牧歌的な自然や風景の描写を好んでいました。しかし、彼の作品は徐々に伝統的な田舎風な純真さを失い、情熱的で親密なスタイルに傾倒していきます。
とくに神話を題材にした作品を描くときは、エロティシズムを含む親密な情景が特徴的です。今回の『アモルの標的』は、神話の場面がフランソワ・ブーシェによって情熱的に表現されており、まさに「愛」をテーマにしています。
『アモルの標的』のストーリー
フランソワ・ブーシェ 《アモルの標的》 1758年 油彩/カンヴァス 268 x 167 cm パリ、ルーヴル美術館 Photo © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Gérard Blot / distributed by AMF-DNPartcom
作品の中には、4人のアモル(キューピッド)が登場します。ギリシャ神話では、アモルは美の女神アフロディーテの息子として描かれますが、場合によってはこの作品のように複数人で表現されることもあります。
アモルのシンボルと言えば、弓矢ですね。実はアモルは金と鉛の2種類の矢を持っていて、それぞれの異なる性質があります。
金の矢で傷つけられた人は、最初に目にした人に制御不能の恋心を抱きます。一方、鉛の矢で傷つけられた人は相手からとにかく逃げたいという真逆の感情を抱きます。
フランソワ・ブーシェの『アモルの標的』では、アモルたちが矢の刺さった的を掲げて愛の誕生を讃えています。地上にいるアモルたちは、矢を燃やし、真実の愛は一度しか与えられないことを示しています。
作品の楽しみ方
フランソワ・ブーシェの描く『アモルの標的』は、ロココ様式を代表するような優しく繊細な色遣いが特徴です。天使のそばには色とりどりの花が咲き、甘く優美な「愛」の様相を見る人に伝えています。
神話という古典的な題材をエロティシズムの中に精巧に落とし込む表現は、フランソワ・ブーシェの真骨頂です。描かれたアモルたちはそれぞれ自由で、本物の赤子のような表情をしていますね。
よく見てみると的にはたくさんの外れた弓矢跡が見えます。本物の愛は穏やかで美しいけれど、見つけるのは簡単ではないということの暗喩でしょうか…。
つい「真実の愛」について考え込んでしまうような作品です。
関連記事
「ルーヴル美術館展 愛を描く」が待ちきれない!
【第2回】『アモルとプシュケ』の楽しみ方とは?
https://irohani.art/study/11370/
展覧会情報
「ルーヴル美術館展 愛を描く」国立新美術館
会期:2023年3月1日(水)-6月12日(月)
休館日:毎週火曜(ただし3/21(火・祝)・5/2(火)は開館)、3/22(水)
開館時間:10:00-18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
画像ギャラリー
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イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
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