STUDY
2023.6.21
フランドルの巨匠ピーテル・ブリューゲルの人生って?作品と見どころを紹介
フランドルの巨匠ピーテル・ブリューゲルは『バベルの塔』や『農民の婚宴』などを残した北方絵画の代表的な画家の1人です。それまで宗教や神話の題材が中心的だったヨーロッパ芸術界で、農民の宴や私生活の様子にも目を向けた革新性がありました。
ピーテル・ブリューゲル『バベルの塔』, Public domain, via Wikimedia Commons
この記事では、ピーテル・ブリューゲルがどのような人生を歩み、どんな作品を残したかを詳しく紹介します。作品の見どころも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
【フランドルの巨匠】ピーテル・ブリューゲルの人生
『鳥罠のある冬景色(Winter Landscape with a Bird Trap)』, Public domain, via Wikimedia Commons
ピーテル・ブリューゲルの正確な生年月日や出生地は、明らかになっていません。文書として残る最初の記録は、アントワープの聖ルカアカデミーに入門した際のものです。ここから逆算すると、ピーテル・ブリューゲルは1525~1530年に生まれたと推測されます。
ピーテル・ブリューゲルはアントワープでヒエロニムス・ボスに出会い、大きく影響を受けます。ヒエロニムス・ボスは当時の芸術界において革新的な(現代のおいても革新的と言えるほど革新的な)作品を残しており、文化人や人文主義者との交流もありました。
ピーテル・ブリューゲルはアントワープでボスの手助けをしながら、リヨンやイタリアを訪れる機会を得ます。旅行の詳細は残されていないものの、ブリューゲルはローマにまつわる作品を多く残していることから、おそらくローマに長く滞在したと推測されます。
ローマでは古代の芸術や遺跡だけでなく、ラファエロ、ミケランジェロなどのイタリアルネッサンスの巨匠の作品を目にしたと考えられます。実際、バベルの塔はローマのコロッセオをモデルに作成されたと考えられており、ブリューゲルが旅から得た影響の大きさが伝わります。
ピーテル・ブリューゲル『バベルの塔』, Public domain, via Wikimedia Commons
参考:ローマのコロッセオ(Photo by Clay Banks) on Unsplash
ピーテル・ブリューゲルの作品の特徴は?
ピーテル・ブリューゲル『ネーデルラントの諺』, Public domain, via Wikimedia Commons
ピーテル・ブリューゲルの作品の特徴は、熟練した技術のうえに成り立つ繊細な筆致です。ブリューゲルは製図家として訓練を受けた経歴があり、うつくしい線とバランスのいい配置が得意でした。
大きな作品にはたくさんの登場人物が含まれるため、一見構図はカオスに感じられます。しかし、よく見ると緻密な計算のもとにそれぞれの人物が配置されており、画家の繊細さが垣間見えます。
ブリューゲルのもつディテールへの強烈な愛着は北方画家の特色であり、背景の風景ですら細心の注意が払われているとわかります。混沌とする作品の中でも、ブリューゲルの描く人間は1人1人命が吹き込まれているのです。
どう楽しむ?ピーテル・ブリューゲル作品の見どころ
ピーテル・ブリューゲル『農民の婚宴』 , Public domain, via Wikimedia Commons
ブリューゲルの作品の見どころは、日常の一場面を切り取る題材の選び方です。16世紀のヨーロッパではまだ絵画といえば宗教画や神話に関するものが一般的で、生活を描く概念は浸透していませんでした。
ブリューゲルはただ生活を描くだけでなく、とくにこれまで全く注目されずにきた農民の人間性に焦点を当てた点に特徴があります。農民の表情や行動は1人1人緻密で、息吹を感じられる瑞々しさが感じられます。
美化された農民像ではなく、ブリューゲルは人々をリアルに描くことに徹しました。これは彼の、人間はそもそも不器用で乱暴な生き物であるという考えに基づいています。牧歌的な世界ではなく、恐怖や悪徳を余すことなく表現です。
これは、イタリアルネッサンスのような力強い人間賛美とは大きく離れ、人間の無力さを自然と受け入れる北方ならではの感覚です。ブリューゲルには、『死の勝利』にみられるようなコミカルな視点もありますが、それは決して嘲笑的ではありません。
ピーテル・ブリューゲル『死の勝利』, Public domain, via Wikimedia Commons
ブリューゲルの作品を鑑賞する際は、北方らしい繊細な筆致と、斬新でコミカルなテーマに注目してくださいね。以上、ブリューゲルの人生と作品、見どころについてでした。
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イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
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