STUDY
2023.7.27
フランス・ポスト印象派画家ゴーギャンの人生は?特徴と見どころ解説
ゴーギャンは、フランスのポスト印象派を代表する画家の1人です。優しく温かみのある作風が特徴で、自然のなかの人々の生活をテーマに多くの作品を残しました。
ゴーギャン『タヒチの女』, Public domain, via Wikimedia Commons
ゴーギャンは仏領ポリネシアのタヒチに滞在したことでも知られ、この経験が画家の作風に大きな影響を与えました。この記事では、フランスのポスト印象派画家ゴーギャンの人生、作品の特徴と見どころについてわかりやすく紹介します。
ポスト印象派画家ゴーギャンの人生とは?
ゴーギャン自画像, Public domain, via Wikimedia Commons
ウジェーヌ・アンリ・ポール・ゴーギャン(1848-1903年)は、クーデターをきっかけに母方の祖父の故郷であるペルーに渡り、幼少期を過ごしました。7歳のときにフランスに戻り、10代のうちに商船で働きながら世界中の海をまわるなど、若くして国際的な経験を積んでいました。
ゴーギャンは1873年頃から趣味として絵を描き始め、印象派画家が集まるパリのカフェに出入りするようになります。そこで出会ったピサロを通じ、ゴーギャンは印象派展に出品するきっかけをつかみました。
1882年の不況により絵画市場が縮小し、それまで行っていた絵画取引の仕事よりも自らの制作活動を本業に据えるようになります。経済的な不安定さから家族が離れ離れになるなど、ゴーギャンにとって苦しい時期が続きました。
1886年頃、生活費が安いという理由で移住したポン=タヴァンでは、「ポン=タヴァン派」と呼ばれる大胆な色遣いと象徴的な主題を重視する芸術家たちと交流しました。ポン=タヴァン派の画家との旅行で、ゴーギャンはパナマやマルティニーク島を訪れています。
ゴーギャンは1891年からタヒチに滞在し、一度はフランスに帰国したもののヨーロッパ美術界での孤立などを理由に1895年から再びタヒチに戻りました。ゴーギャンは梅毒に感染しており、喧嘩によるケガの治療でヒ素が用いられたことが重なり次第に体調を崩します。1902年頃までは制作活動を続けたものの、1903年にはタヒチで死去しました。
ゴーギャンの作品の特徴は「他文化芸術からの影響」
ゴーギャン『黄色いキリスト』, Public domain, via Wikimedia Commons
ゴーギャンの作品は、西欧の伝統だけでなく、多文化から影響を受けた芸術という特徴があります。これは、世界各地を旅行した経験や、当時の流行であったジャポニズムによるものでした。
印象派展で目にしたピサロやドガの作品に影響を受けたものの、素朴なゴーギャンの作風は初期印象派とは異なる路線に進んでいました。ゴーギャンは、写実にのみ焦点を当て象徴的要素を欠いている印象派の芸術に、疑問を呈していたためです。
ゴーギャンが絵画の「象徴性」を重視したのは、神話的な意味を大切にするアフリカやアジアの芸術の影響もあったと考えられます。当時のヨーロッパでは日本の芸術を取り入れるジャポニズムの風潮があり、ヨーロッパ以外の文化圏の芸術への関心が高まっていました。世界を旅してきたゴーギャンにとって、当時の西欧芸術は表面的な表現に過ぎず、作品に込められた意味が欠落しているように感じたのでしょう。
最初のタヒチ訪問以降は、とくに現地の人々の様子を描くことが多く、色彩の豊かさや筆致の大胆さはますます顕著になりました。強い色彩は生き生きとしたタヒチの太陽を感じさせ、ゴーギャンが追求した対象物の存在感の強さが示されています。
ゴーギャンの作品の見どころは「伝統的遠近法とグラデーションからの離反」
ゴーギャン『聖なる春、甘い夢』, Public domain, via Wikimedia Commons
ゴーギャン作品の見どころは、はっきりと描かれた輪郭線から生まれる力強い存在感です。パリで交流した印象派画家たちの影響を受けつつも、ゴーギャンの芸術思想は「象徴性」を重視するものでした。初期印象派が輪郭線を排除し感覚的な情景把握に努めたのに対し、ゴーギャンは真逆のアプローチに進むことになります。
ゴーギャンは日本芸術、とくに浮世絵の影響を受け、平面的な色彩と明確な輪郭線を重視する作品を多く残しました。この技法は「クロワゾニスム」と呼ばれ、遠近法や色のグラデーションといった西欧美術の原則から逸脱した作風を確立しました。
明確に規定された輪郭線とグラデーションのない色彩は、ぱっと見るだけでは“シンプルな”絵にうつるかもしれません。しかしゴーギャンは意図的に、伝統的な西欧芸術のルールから離れることで、象徴的な意味を持つ芸術を追い求めたのです。
ゴーギャンの人生を知ると、彼の作品がより面白く刺激的に見えるのではないでしょうか。作品鑑賞の際は、ゴーギャンの芸術理論を作品から感じてみてくださいね。
以上、ゴーギャンの人生と作品の特徴、見どころについてでした!
画像ギャラリー
あわせて読みたい
-
STUDY
2024.10.13
【前編】画家フランシス・ベーコン 激動の生涯と独創的な表現世界
加藤 瞳
-
STUDY
2024.08.12
オノ・ヨーコとは?|現代アートのパイオニアの代表作を解説
emma
-
STUDY
2024.07.05
知れば欲しくなる!海のアートを描くアーティスト、ローラ ブラウニングを深掘り
イロハニアート編集部
-
STUDY
2023.11.22
【XSpaceArtTalk】Marina Rheingantz(マリーナ・ラインガンツ, 1983-)2023年11月08日放送分
Masaki Hagino
-
STUDY
2023.09.19
長谷川等伯72年の軌跡!狩野永徳がもっとも恐れた男
ヴェルデ
-
STUDY
2023.09.14
ビカミング・クロード・モネ~風景画家への道
ヴェルデ
このライターの書いた記事
-
STUDY
2024.10.31
オルセー美術館の印象派コレクションとは?歴史背景や重要性を解説!
はな
-
STUDY
2024.10.17
【ギリシャ神話とアート】女神アテナの物語・作品例を解説
はな
-
STUDY
2024.10.09
【ギリシャ神話とアート】英雄ヘラクレスの物語・作品例を解説
はな
-
STUDY
2024.10.07
【ギリシャ神話とアート】海の神ポセイドンの物語・作品例を解説
はな
-
STUDY
2024.10.01
【ギリシャ神話とアート】嫉妬深いヘラの物語・作品例を解説
はな
-
STUDY
2024.09.17
【ギリシャ神話とアート】ゼウス(ジュピター)の物語・作品例を解説
はな
はな
イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
はなさんの記事一覧はこちら