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2023.10.9
ヤン・ファン・エイクの人生って?初期フランドル派画家の作品を解説!
ヤン・ファン・エイクは、15世紀に活躍したフランドルの画家です。北方ルネッサンス期を支えるフランドル派の初期を担った存在で、外交官としても活躍しました。
『ファン・デル・パーレの聖母子』,ヤン・ファン・エイク, Public domain, via Wikimedia Commons
ヤン・ファン・エイクの作品は、フランドル派の繊細で緻密な特徴を最大限に表しています。この記事では、ヤン・ファン・エイクの人生、作品の特徴や見どころについてわかりやすく解説します!
ヤン・ファン・エイクの人生
『ターバンを巻いた男性(自画像の可能性?)』,ヤン・ファン・エイク, Public domain, via Wikimedia Commons
ヤン・ファン・エイク(1395年頃-1441年)は、生まれた年や場所が正確にわかっていません。確実なことは、彼の兄フーベルト・ファン・エイクも画家だったことです。
ヤン・ファン・エイクが残した代表作『ヘントの祭壇画』は、兄フーベルトとともに手掛けた作品でした。画家として活躍していたヤン・ファン・エイクは1425年頃から、ブルゴーニュ公フィリップ3世の宮廷画家として活躍します。
ヘントの祭壇画,ヤン・ファン・エイク、フーベルト・ファン・エイク, Public domain, via Wikimedia Commons
同時にフィリップ3世はヤン・ファン・エイクに外交官としての任務を任せることもあり、画家の枠を超えて信頼を獲得していたようです。絵画制作そのものが、外交の重要な任務になることもありました。
画家が外交官を兼任することは珍しいものの、まったくほかに例がないわけではありません。同じくフランドル出身の後世の画家ルーベンス(17世紀)も、画家と外交官の業務を両立していたことで知られます。
当時一般的な画家が業務ごとに報酬を得て仕事をしていたのに対し、ヤン・ファン・エイクはフィリップ3世からの報酬によりかなり裕福な生活をしていました。
ヤン・ファン・エイクの名は国外にもとどろき、イタリアの芸術家記録のなかには15世紀最高の画家の1人とファン・エイクを評価するものもあります。ラテン文学を中心とした古典に精通し、芸術家としての才覚だけでなく、教育を受けた知識人としても尊敬を集めていました。
一部の記録では「油絵具」を発明したのはヤン・ファン・エイクだったとも言われます。ヤン・ファン・エイクは15世紀のフランドル芸術界におけるスーパースターでした。フィリップ3世は、そんなファン・エイクを宮殿に留まらせるために、必死で特別対応をしていたそうです。
ヤン・ファン・エイク作品の特徴:緻密さ
『ルッカの聖母』,ヤン・ファン・エイク, Public domain, via Wikimedia Commons
ヤン・ファン・エイク作品の最大の特徴は、緻密で繊細な作風です。フランドルでは伝統的に細部にこだわる傾向があり、細かい絵画表現に決して妥協せず、可能な限りどこまででも追及する特徴があります。
ヤン・ファン・エイクが生きた15世紀前半は、初期ルネッサンスにあたる時代です。いわゆる「北方ルネッサンス」に該当するファン・エイクの作風は、現実を見たままに正確に描き切ることを目指しました。
北方ルネッサンスの哲学は、自然をそのまま表現することにあり、当然、存在する状態と同じように細部が描かれました。
精密さへのこだわりは、細部の表現だけに留まりません。構図においても、ヤン・ファン・エイクは完全に計算されたバランスを愛しました。ヤン・ファン・エイクの作品が心地よく映るのは、配置される人物の体勢、背景の装飾、左右・上下のバランスが完璧に定められているためです。
ヤン・ファン・エイク作品の見どころ:背景
『アルノルフィーニ夫妻像』,ヤン・ファン・エイク, Public domain, via Wikimedia Commons
ヤン・ファン・エイクの作品を鑑賞する際は、ぜひ背景に注目してみてください。細部へのあくなきこだわりは、人物だけではなく、背景にも適用されているためです。
ヤン・ファン・エイクの絵がここまで華やかにきらびやかに見えるのは、簡単には目につかない部分にまで時間をかけ、丁寧に筆を動かしているからでしょう。
代表作にあたる『アルノルフィーニ夫妻像』(1434年)では、とくに背景への強いこだわりが見られます。上部に配置されたシャンデリアは、窓から差し込む光の反射で金属の質感が表現されています。ろうそくが差し込まれているのは、前方左の1本のみです。
背景の鏡には、反転した情景が緻密に描き出されています。円形の鏡の反射が伝わるよう、少し歪んだ景色の表現は、ヤン・ファン・エイクの忠実な自然主義を物語っています。
ヤン・ファン・エイクの作品を鑑賞する際は、背景の細部にぜひ目を凝らしてみてください。きっと面白い発見がありますよ!以上、ヤン・ファン・エイクの人生、作品の特徴、見どころについてでした。
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イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
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